第014話「大きくなった弊害」
新しい寝床は、前の岩の割れ目より浅かった。
体を丸める広さはある。
ただ、頭を奥へ入れても尾が少し外へ出る。
試しに前の岩の割れ目にも入ってみたが、胴が途中で詰まった。
無理に押し込むと、尾が入口の外に残る。
尾の先を虫にかじられ、俺は慌てて割れ目から体を引き抜いた。
昨日まで使っていた割れ目は狭すぎて入れない。今の体で休むなら、この岩陰をもう少し使いやすくする必要がある。
進化して強くなった。
……その代わり、今まで使っていた場所が合わなくなった。
体が大きくなると、寝床から作り直しらしい。
俺は池の虫を数匹食べ、まずステータスを確認した。
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【ステータス】
種族:若蛇
レベル:1
HP:20/20 MP:10/10
攻撃力:12 防御力:10 素早さ:15 知力:10
魔力適性:なし
【スキル】
熱感知 Lv1、毒牙 Lv3、振動感知 Lv2、締め付け Lv1
次の進化まで:0%
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Lv1に戻ったのは、少し嫌だ。
だが、仔蛇Lv1の時とは全然違う。
HPは20ある。
胴も前より長い。
毒牙と振動感知も残っている。
さらに締め付けLv1がある。
数字だけで落ち込むより、実際に動かした方が早い。
◇ ◇ ◇
最初に、東の裂け目を確認した。
昨日までは、大型百足から逃げるための切り札だった場所だ。
頭を入れる。
首も入る。
胴が途中で岩に当たった。
進めないわけではない。
ただ、前よりずっと詰まりやすい。
体を斜めにして、腹で床を押す。少しずつ前へ進むが、急いで飛び込むには危ない。
これでは、大型百足に追われている最中の逃げ道としては信用しにくい。
昨日までは「俺だけが通れる場所」だった。
今は「通れるが、時間がかかる場所」だ。
成長すると、逃げ道まで変わる。
今の体で、逃げ道の使い方も覚え直す必要がある。
◇ ◇ ◇
次は、北東の小型百足を狩った。
相手は20センチほど。
今の俺は60センチ近い。
体の長さが3倍あると、距離の取り方がまるで違う。
百足が頭を上げる前に、俺の牙が首の横へ届いた。
毒牙Lv3を入れる。
百足はすぐ鈍った。
続けて、岩トカゲも1匹狩る。
池の周りで苦戦していた相手だが、今は後脚の蹴りを避けやすい。こちらの体が長いぶん、首の後ろへ回り込む角度を取りやすかった。
小型相手の狩りは楽になった。
北東の小さい百足や岩トカゲを相手にしても、前みたいに毎回死にかける感じはない。
ただ、小型相手ばかりでは進化率の伸びが鈍そうだ。
進化率は0%に戻っている。
次へ進むには、新しい体で少し強い相手を狩る必要がある。
◇ ◇ ◇
小型相手で体格差を確認したあと、締め付けLv1を試すことにした。
相手は、北東の奥にいた岩トカゲだ。
噛んで毒を入れれば倒せる。
今日は毒牙ではなく、進化で得た締め付けを試す。
岩トカゲがこちらに気づき、低く構える。
俺は正面から噛みに行かず、横へ回った。
首を狙うふりをして、岩トカゲの前脚を動かす。
岩トカゲが向きを変えた瞬間、俺は体の前半を岩トカゲの胴へ回した。
巻きつく。
最初はぎこちない。
どこから体を回せばいいのか、頭ではまだ分からない。
それでも、締め付けを意識した瞬間、体が勝手に相手の胴へ沿った。
蛇の体が、やり方を少し知っている。
俺は胴を岩トカゲの腹へ回し、輪を狭めるように力を入れた。
岩トカゲが暴れる。
後脚が俺の鱗を蹴る。
痛みはあるが、前ほど大きく削られない。
体が長くなった分、岩トカゲの脚を外側から押さえやすい。
俺は首へ噛まず、体で締め続けた。
岩トカゲの足がばたつく。
空気を吸おうとして、胴が膨らむ。
膨らんだ岩トカゲの胴を、俺はさらに締める。
やがて、岩トカゲの動きが弱くなった。
毒を使っていない。
締め付けだけで止めた。
◇ ◇ ◇
締め付けは、近づける相手には使える。
毒と違って、噛んで離れて待つ必要がない。相手をその場で押さえ込みながら倒せる。
ただ、消耗は大きい。
締めている間、ずっと体全体に力を入れ続ける必要がある。暴れる相手に蹴られるし、触れ続けるので危険も近い。
相手を選ぶ武器だ。
岩トカゲには合う。
湿ったイモリには合わない。
皮膚毒のある相手に腹まで触れ続けたら、俺の体までしびれそうだ。
毒牙は、安全に入れて待てる。
締め付けは、近づける相手を早く止められる。
倒し方が増えた。
毒以外の倒し方が増えた。
これはうれしい。何でも毒を入れて待つだけ、という戦い方から少し抜けられる。
俺は岩トカゲを食べた。
『レベルが3に上がりました』
進化直後のLv1がすぐ終わった。
若蛇の体なら、レベルの取り返しも早い。
レベルが戻る仕様にはまだ納得しきっていないが、これなら次の進化率も動かせる。
◇ ◇ ◇
その後、ネズミの部屋と湿った小部屋も回った。
ネズミは、体で進路をふさぎやすくなった。
小さい穴へ逃げ込まれる前に、長い体で壁際を塞いで噛める。
湿ったイモリには、締め付けを使わない。
頭の横へ短く噛み、すぐ離れる。体が大きくなった分、顔の位置を安定させやすいので、皮膚毒を受ける量は減った。
同じ相手でも、体が変わるだけで戦い方が変わる。
夕方くらいの体感で、俺は池へ戻り、ステータスを開いた。
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【ステータス】
種族:若蛇
レベル:3
HP:22/22 MP:11/11
攻撃力:13 防御力:11 素早さ:16 知力:11
魔力適性:なし
【スキル】
熱感知 Lv1、毒牙 Lv3、振動感知 Lv2、締め付け Lv1
次の進化まで:10%
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進化まで10%。
0%からの再出発でも、ちゃんと進んでいる。
若蛇の体は強い。
その分、狭い逃げ道は使いづらくなった。
逃げ道が減ったなら、新しい道を探す。
右ルートの奥は、まだちゃんと調べていない。
大きくなった体で進める場所もあるはずだ。
明日は、右の奥を見る。




