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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
目覚め

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第012話「一噛みだけ」


 12日目の朝、俺は一つ決めた。


 今日、大型百足を噛む。


 倒すつもりはない。勝てるとも思っていない。ただ、一度だけ噛んで、毒を流して、逃げる。それだけだ。


 目的は情報収集だ。


 毒牙がLv3になった。以前より毒が速く、強くなっている。その毒が大型百足にどこまで効くのか——効くのかすら分からない。外骨格があるから皮膚毒の話とはまた別だが、俺の毒は「噛みついて体液に直接流し込む」タイプだ。外骨格を貫通できる箇所を選べば入れられるはず。


 問題は「貫通できる箇所がどこか」を知らないことだ。


 知るために、一度実際に試す。


 ボスへの「ダメージチェック」だ。安全圏から最大火力を叩き込んで、ダメージが入るかどうかを確認する。入らなければ別の手を考える、入ったなら本番に向けて戦術を組む。当然、入らなかった場合のリスクは考慮しないといけないが——そこは速さで解決する。


 逃げ場所はある。


 東の隙間だ。体長1メートルを超える大型百足が通れる幅ではない。万が一追いかけられても、あそこに飛び込めば安全だ。


 理屈は通っている。


 池で水生甲虫を1匹食べて、HPを確認した。HP32。満タンだ。MP16、スキル全部使用可能。これ以上の準備のしようがない。


 北の通路を進んだ。


   ◇ ◇ ◇


 三叉路の広間に着いた。北西の通路の入口で止まった。


 顎を地面に押し当て、振動感知を最大限に広げた。


 大型百足の振動がある。重い、規則的なリズム——脚が多い分、振動が連続的に伝わってくる。位置を確認した。通路の奥、入口から40メートル以上先だ。今は奥に向かって移動している。


 パトロールの周期は10〜15分。入口から奥まで行って戻ってくる往復だ。今の状態から考えると、もし俺が入口を入れば、数分のうちに戻りの行程に切り替わる。


 入口付近に15メートル入って、壁際で待つ。帰ってくる時に後脚の付け根を噛んで、即退避。


 計画した。


   ◇ ◇ ◇


 通路に入った。


 大型百足の振動が、遠くで規則的に動き続けている。こちらに向かってはいない。まだ時間がある。


 15メートル進んだ。壁際の岩の陰に身を寄せた。通路幅が体長30センチの俺には十分な余裕があるが、大型百足が通る時にどれだけ空間が占有されるかを考えると、壁際以外に安全な場所はない。


 待った。


 振動感知が変化を拾った。奥で方向転換した。戻ってきている。


 重い振動が、少しずつ近づいてくる。


 俺は壁に張り付いて、最小限の面積で地面に接した。動かない。体を岩に押し付けて、存在感を消す。変温動物の俺の体温は岩と変わらない——熱感知では見えないはずだ。


 振動が大きくなった。


 見えた。


 熱感知で輪郭を捉えた——体長1メートル超、幅20センチ以上。体全体が通路を塞ぐように進んでくる。多脚の一本一本が地面を叩く振動が、もう直接身体に伝わってくる。


 でかい。


 間近で見ると、熱感知の映像だけでも迫力が違う。複眼、触角、硬そうな外骨格——外骨格は胴体全体を覆っているが、脚の付け根付近、胴体との接合部は——薄い。関節だ。外骨格は硬い面と柔らかい面がある。柔らかい面が関節部分だ。


 通路幅の半分を大型百足が通過した。壁際の俺のすぐ脇を、一節目、二節目、三節目と通り過ぎていく。


 後ろから数えて三節目の関節部。


 噛んだ。


 毒牙が柔らかい外皮に刺さった。Lv3の毒を全量流し込んだ。


 大型百足の動きが一瞬止まった。


 次の瞬間、反転した。


 速い——!


   ◇ ◇ ◇


 走った。


 正確には、蛇に「走る」という概念はない。腹筋の連動で地面を押して前進するだけだ。ただ今の俺のSPDで出せる最大速度で、通路の入口に向かって一直線に突き進んだ。


 背後の振動が追いかけてくる。


 重い。速い。多脚で地面を叩く振動が連続して迫ってくる。追いつかれるか——と考える余裕はない。ただ進む。


 10メートル。5メートル。入口の光——三叉路の広間の方向が見えた。


 広間に飛び出した。


 迷わず東の通路に向かった。10メートル走って、東の隙間——体に角度をつけて、鱗の向きを意識して、斜めに突っ込んだ。


 体が隙間に入った。


 背後で、大型百足が広間に出てきた振動が伝わった。止まった。


 入ってこない。


 10秒待った。20秒。振動感知で確認した——大型百足は広間の入口付近で停止している。東の隙間の前で動いていない。


 30秒後、北西の通路の方向に戻り始めた。


 完全に引いた。


 俺は隙間の中で、体が震えているのに気づいた。恐怖というより——アドレナリンが出た感覚だ。生存本能と興奮が混じった、あの感じ。ゲームで初めてソウル系のボスを即死回避した直後に似ている。


 やった。噛んだ。逃げた。生きている。


   ◇ ◇ ◇


 隙間の中でしばらく待ってから、三叉路に戻った。


 北西通路の入口から振動感知を最大限に使って大型百足の動きを追った。パトロールを再開していた。ただ——微妙に違う。


 噛まれた節の脚の振動が、他の脚と少しズレている。わずかな差だが、振動感知Lv2で拾える。毒が入った脚の動きが、やや不規則になっている。


 効いている。


 完全に仕留める毒量ではないが、効いている。Lv3の毒牙は大型百足の外皮を通過できて、体液に到達できる。これが分かった。


 そして分かったことがもう一つある。


 胴体の後ろ側の脚の付け根は確かに柔らかかった。でも体を反転させた速度が想定以上だった。後方から近づいて関節を狙う戦術は有効だが、噛んで逃げるまでの時間的余裕がほとんどない。今日は一節分の毒量しか入れられなかった——本格的に仕留めるには、もっと多くの量が必要だ。


 では、もっと効率のいい部位はどこか。


 頭に近い節。体を貫く急所——中枢に近い部位を直接狙えれば、一回の注毒で大きなダメージを与えられるかもしれない。頭部付近の関節は、そういう意味では最高の攻撃点だ。


 ただし、頭部は相手の攻撃の射程内だ。複眼と触角の近くに近づくのは最高難度のリスクがある。今の俺の速さと体の大きさでは——まだ早い。


 進化してから考える。


 大型百足との勝負は、もう少し先だ。


   ◇ ◇ ◇


 その後、北東エリアで通常の狩りをした。


 百足の小型個体が2匹、岩トカゲが1匹。Lv3の毒牙で百足は30秒、岩トカゲは1分半で止まった。以前は3分以上かかっていた岩トカゲが1分半だ。毒の進化が全体的に狩りを高速化している。


 さらに東の隙間を抜けてネズミを4匹、イモリを2匹仕留めた。


 通知が来た。


『Lv16になりました』


 HPとMPが全回復した。


――――――――――――――――――――

【ステータス】

種族:仔蛇

レベル:16

HP:34/34 MP:17/17

攻撃力:17 防御力:15 素早さ:19 知力:14

魔力適性:なし


【スキル】

熱感知 Lv1、毒牙 Lv3、振動感知 Lv2


認識範囲:2m

次の進化まで:93%

――――――――――――――――――――


 93%。


 あと7%で進化だ。


 池に戻って、今日の成果を振り返った。大型百足への試し噛みという、自分でも無謀だと思っていた行動が、一応成功した。逃げ切れた。そして有用な情報を得た。


 ・毒牙Lv3は大型百足の外骨格関節部に通る

 ・後方からの奇襲は時間的余裕がほとんどない

 ・頭部付近が最も効果的な攻撃部位だが、現状ではリスクが高すぎる


 整理すると——今のままでは勝てない。でも「負けた」わけでもない。今日はダメージを調べに行って、調べて、帰ってきた。計画通りだ。


 進化したら体が大きくなる。大きくなれば攻撃の選択肢が広がる。


 今日は7%分、それに近づいた。


 水生甲虫が水底を泳ぐのを眺めながら、じっと待った。



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