表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/102

第70話 削られる命

 監査開始から三週間。


 中央危機統括局の統計室に、新しい集計が出た。


 直近一年間の小規模被害総数――前年比一・六倍。


 死者数――+十一。


 大規模崩壊――ゼロ。


 室内が静まる。


---


「十一か」


 セルディオが低く呟く。


 数字としては小さい。


 だが、積み重ねだ。


---


 カルドは、資料をめくる。


「この十一のうち、七件は“余力十分”案件です」


 画面に、個別事例が並ぶ。


 倉庫崩落。

 市場火災。

 結界亀裂放置。


 いずれも、即応介入で防げた可能性が高い。


---


 ユリスが口を開く。


「十一は許容範囲だ」


 冷たい声。


「大規模崩壊を防いだ効果は計り知れない」


「それは仮定です」


 カルドは即答する。


「発生していない危機を理由に、発生した死を軽く扱うべきではない」


---


 北方自治領。


 ノアは、監査資料の写しを読み、顔色を変える。


 十一のうち、三件は自分の管轄だ。


「……削れている」


 自分が削ったのか。


 制度が削ったのか。


 それとも恐怖が削ったのか。


---


 フォルン。


 エマは、一覧表を見て言葉を失う。


「小さいけど、確実に増えてる」


「はい」


 アレインは静かに答える。


「壊れてはいない」


「でも、削られてる」


「そうです」


---


 南方山岳自治領。


 小規模揺れ発生。


 ライナは即座に限定介入。


 被害ゼロ。


 報告書には、こう記される。


> 将来危機確率:七パーセント

> 現在被害確率:六十パーセント

> よって介入


 数値で、恐怖を押し返す。


---


 中央会議室。


 カルドは、十一名の名前を読み上げる。


 静かな声で。


 一人ずつ。


 室内の空気が変わる。


「許容範囲と言えますか」


 ユリスは沈黙する。


---


 セルディオは、深く息を吐く。


「……削られている」


 自分が作った制度の上で。


 大崩壊は起きていない。


 だが、小さな死が増えている。


---


 フォルン。


 エマが言う。


「先生、これってザマァですか」


「いいえ」


 アレインは首を振る。


「これは、結果です」


「誰の?」


「恐怖の」


---


 中央。


 セルディオは宣言する。


「余力使用率を監査対象に追加する」


 室内がざわつく。


「余力を使わなかった場合も、理由を提出させる」


 逃げ道が、さらに減る。


---


 その夜、西部で中規模変動。


 余力十分。


 現場は迷う。


 だが、監査を思い出す。


「限定介入」


 被害軽微。


 死者ゼロ。


---


 削られる命は、目立たない。


 大崩壊よりも、静かだ。


 だが、確実に重い。


 第6部は、

 制度の“成果”と“犠牲”を、

 真正面から並べる段階に入った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ