22 社名は勿論○○○?
ドルネの商会に立ち寄った日向子はその後細かい打ち合わせなどがある為ドルネ宅に泊まる事になった
ニル達は一旦ピレネー村に戻ってゴメリさんに面倒を見て貰う算段にしておいたので先に帰しておいた
「いやぁ、日向子様は珍しい神獣を使役なされた‼あれらを輸送に使うだけでも相当の話題になりますよ‼」
日向子はたまたま捕まえただけなのでいまいちピンと来ない感じで首を傾げる
「ニルちゃんもハク達も高原に行ったら偶然いたんですけどそんなに希少なんですか?」
「希少も何も…私は文献でしか見た事がありませんよ」
「そうなんだ、じゃあラッキーだったのかな?」
「勿論ですよ。捕まえるどころか遭遇するだけでも一生自慢出来る位の代物です
それに文献では両方とも人に懐く事はなく無理をすれば自害する程誇り高き神獣だとありましたよ」
「あ、そうなんですか?そう言えばゴメリさんが蹴られてたなぁ…何で私は平気だったんだろ?
特にユニコーン達は最初から懐いてくれて可愛かったんですよ」
「…もしかしてご存知ない?」
「え?何をですか?」
「ユニコーンは「純血の乙女」にしか懐かない、と文献にはありますよ」
「…えっ?」
「言い伝えではユニコーンを捕まえる時は処女の乙女を餌として罠を仕掛け寄ってきた所を捕まえるそうです」
「…ヤダナァ、ワタシダッテイロコイノヒトツクライハ…」
「日向子様、棒読みになってま…ゲフッ⁉」
ドルネのツッコミは日向子のビンタに遮られ体は宙を舞った
「やだ、恥ずかしい(///」
顔を真っ赤にして身を捩る日向子の姿は意識を刈り取られたドルネにはもう見えなかった
ー翌日ー
「じゃあドルネさん、今後も宜しくお願いしますね」
「あはは、こちらこそ宜しくお願い致します。
今日より『神獣運輸』のアピールを各方面にしますので準備の方をお願いします」
「了解でーす‼じゃあまた‼」
日向子が手を上げると上空で待機していたスレイプニルが舞い降りてきて背に乗せる
「じゃニルちゃん帰ろう」
「ヒヒン♪」
こうして日向子の運送会社『神獣運輸』は開業の運びとなったのだった
ーピレネー村ー
「ゴメリさんただいまー」
「おぉ、ヒナちゃんか」
「シロ達は大人しくしてた?」
「昨日は討伐の依頼があっただけんどオラぁの言う事も良く聞いて賢い子達だったべ」
「良かったぁ、ちゃんと言う事聞いてくれてて」
「ところでニル達の仕事は上手くいきそうだか?」
「うん♪ドルネさんが上手くやってくれるって‼」
「そうだか、それは良かっただな」
日向子はスレイプニルの首を優しく撫でた
「ゲンガさんに頼んでおいた馬車とかが出来てるか確認しなくちゃね。ニルちゃんはハク達の所に戻ってご飯食べて来てね」
スレイプニルは日向子に頬擦りするとバカパカと厩舎に歩いて行った
「本当にヒナちゃんは扱いが上手だなぁ、オラぁはこんな賢い魔物や神獣は見た事ないべ」
「…あっ!ゴメリさん!」
「ん?」
「この間変な事言ってたけど…知ってて言ってたでしょ?ハク達が懐いてる理由の事‼」
「あ、あはは…え?カント婆さんが呼んでたって言ってたなー、何だべ?」
ーガシッー
下手な嘘で立ち去ろうとしたゴメリの襟首を日向子ががっちり掴んでいた
「…ゴ・メ・リ・さ・ん?」
「ひぃぃぃ~っ⁉」
その後通りかかったウシャ爺がボロ雑巾の様に打ち捨てられていた瀕死のゴメリを発見する
ー数日後ー
「じゃあ行ってきまーす‼」
「ヒンッ‼」
ーパカラッパカラッー
ドルネから初仕事の依頼を受け日向子はニルを連れて街に出発した
噂を聞きつけた貴族が登城の足としてドルネに依頼したそうだ
「お城かぁ~…楽しみだなぁ♪」
映像では見た事はあるが実際には行った事もない城に日向子はウキウキしていた
ードルネ商会前ー
「ドルネさぁん、お待たせ致しましたぁ」
「日向子様、時間通りですな」
「時間厳守が神獣運輸のモットーですからね」
「ははっ、成る程。では依頼主にお引き合わせ致します」
ドルネと日向子は商会の戸を潜った
ーコンコン「失礼します」ー
「おぉ、貴方が神獣使いか?」
「初めまして、神獣運輸の日向子と申します」
応接室のソファーから立ち上がった人物は立ち上がって挨拶をしてきた
「私はセントエレモス貴族院次席ピールだ。早速その神獣を見せてくれんか?」
「あ、どうぞどうぞ」
日向子はピールを連れてニルが待機している玄関前に案内する
「ほぉ…これが神獣スレイプニルか。確かに神々しいな…」
ピールはニルの姿を見てつい触ろうと手を伸ばす
「‼ーブルルッ‼」
「こらっ‼ニルちゃん‼」
「…ヒーン…」
ニルはピールに触られるのを嫌がり威嚇したが日向子にたしなめられた
「おっと‼言い伝え通り気性が荒い様だな。これは失礼した」
「いえ、お客様に失礼したのは此方です。申し訳ありませんでした」
「アハハ、神獣は飼うのも手懐けるのも不可能だと言われておる。日向子殿はよくこの様に手懐けたモノだな」
「慣れれば結構可愛いんですよ♪」
日向子がニルを撫でると気持ち良さげに頭を押し付けてきた
「ほぅ…これほど懐いているとはな。お?本来の目的を忘れていたわ、では城までの送り迎えを頼む」
「はい、畏まりました」
日向子はニルに繋がれた馬車のドアを開ける
この馬車は大工のゲンガが精根込めて作り上げたモノで貴族が乗っても恥ずかしくない出来だった
「では行きますね、ニルちゃんお願い」
「ヒヒーン」
ニルはゆっくりと馬車をスタートさせた




