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ひとまず茂みから向こうの様子を観察しようと身を潜めたら、そこにギュスくんとミズホくんが居た。何故居る。
二人も驚いていたようだったけど、すぐに口元に指を立てて静かにするよう合図を送ってきた。二人同時に。仲良し通り越して同調してますけど。
目と表情で何してんだと問えば、チラリと目線をランディアルへと向ける。
ああはい、護衛という名のデバガメですか。いや、パパーン男子といじめられっ娘以外にも数名の男子生徒がいるから、コイツらただの潜伏要員だわ。なんであいつらのランチ見るのに潜伏が必要なんだよ。え、なにしてんのコイツら。
「アカネ、今日は鶏肉のクリーム煮だぞ。白パンもある」
「え、あ……ありが、とう……ございます……」
「僕のうちからはこちらの菓子を」
「うちからは領内で取れたカボチャを使ったパイです」
「お飲み物をどうぞ」
中庭に建っているガゼボにて優雅なお茶会である。というか食べ合わせ悪くないかそれ。腹に重いものしかないんですがそれは。
どこからか取り出したのか、白い深皿に盛り付けられた鶏肉メインのシチューっぽいもの、青いアラベスクに黄金色のパイ、ドットの縁取りの皿にフィナンシェ。真ん中の籐籠にパンが置いてある。小さいテーブルにいっぱいに広げられた食事は、全てアカネちゃんのためのもののようだ。
うーん、見るだに彼女はそこまで美少女でもないし、偉そうな態度でもない。むしろ恐縮して、勧められる料理の一つも口にできないでいる。
あれこれ逆にイジメじゃね?
なんだこれと思っていたら肩を叩かれた。
ギュスくんか。親指で向こうに行くぞと合図を送ってくる。ミズホくんに目配せで意図を伝えているところ、ツーカーのようだ。もう結婚すれば良いんじゃないかな。
そろりと抜け出す彼についていく。少しも音を立てないどころか、目の前に居るはずなのに見逃しそうになるんですが。何でこいつ気配どころか存在感まで消せるんだよ。
しばし歩いて中庭から距離を取った渡り廊下内、木立で姿が隠れる場所で、ギュスくんがこちらを向いた。後ろにつけていたんだけど、驚いたのか少し片眉が持ち上がっていた。
「嬢ちゃん、多少はできるんだな。そりゃ気配はあったけどよ、もうちっと距離があると思ってた」
生命感がないからかなー、などといっているが、それはつまり特別な訓練の成果ではないということですね。
ただ、死人でも気配は隠せないらしい。
「それで、どうしてこちらまで?」
わざわざ人目を忍ぶとか、どういう用件だ。
「嬢ちゃんは、あいつらを見てどう思った?」
いや、よく分からんなぁとしか。
君達が潜んでいる意味もわからんかった。
「特に、魅了系の魔術を使っているようには見えませんでした。それに、言ってはなんですが、アカネさんに魅力があるとはとても」
「そうだな、その通りだ」
はい。
感想はそれだけかよ会話進まねぇな。
「彼らの目的が見えない、と思いました」
「そうだな。ということは、目的が絞れるって事だ」
は? ちゃんと話聞いて。ニヤニヤ笑ってないでちゃんと言葉を理解してくれませんかね。目的なんか分からんっていってるでしょうが!
それともなに、トンチ合戦でもしたいの? 禅問答はよそでやれ。
「いえ、どういう事でしょうか」
「つまり、あの女自身が目的って事だ」
うん、わからん。
解説! ちゃんと解説をして! 頭良い問題集は解答の解説を見ても意味が分からないんだけど、それ準ずるわかりにくさだよ! その解釈は常識じゃねぇ!
こっちが憮然としているからか、ギュスくん舌打ちをした。
「だから、あの女を手に入れるのが目的だからちやほやしてるってんだ」
察しろ馬鹿女、と罵倒が続く。そういうのはミニスカスーツの女教師に言って貰いたい。少し照れながら。
いやそういう話じゃなくて。
「だとして、手に入れてどうするんですか。彼女自身に何か──」
何か。そうだな、彼女が特殊でなければ、そもそもあんなことにはなっていないんだろう。
もしかして天然でチャームしてたりフェロモン漏れてたりすんのか? こちとら性欲ないからわからんぞ。
「そこでお前さんだ。あれだろ、イズイナートのとこのに気に入られたんだろ。しかも、ランディアルにも接点がある」
あるっていうか作られたっていうか。
「アカネと仲良くなって情報を引き出す、これお前さんが適任だと思うが、どうだね。それによ、嬢ちゃんは金に困ってんだろ。多少は用意できるぜ」
おう、口調安定させろや。
しかしそうか、その為にここまで引っ張ってきたのか。
一つはこちらの出方をうかがうため、一つは自分たちの作戦に引き込んで利用価値があるかみるため、一つは単純に能力をはかるため。
そして、勝手に採用面接されて知らないうちに合格してて、その上で脅されて飴まで用意されている。
こういうのを用意周到とでもいうのだろう。
「わかりました」
「へえ、案外あっさり受けるんだな?」
そりゃまあ。こっちにはこっちの事情がありますし。
そのくらいのことは読んでるんだろうなぁ。それに、お互いに利用し合う関係になったと思っていることだろう。
「利害の一致です。まあ、お互いに敵にならないように祈りましょう」
「それが必要なのはお前さんだけだろう? 後ろ盾がないんだからな」
おいおい、正直な牽制やめてくれよ。
ニッコリと笑い返せば、ニヤニヤされる。そうか、ギュスくんってば自分の容姿を武器にしてるのね。美男美女なら手練手管、醜女醜男なら生理的嫌悪ってか。よくやるわ。
「あの女の情報次第で払う金額は変わる。まあ、せいぜい頑張れよ」
「ええ」
金を用意たって精々が小金だろうし、張り切る理由なんて……あったわ。大金より小金が必要なんだったわ。
実家からの支援は望めない、となったら自分で稼ぐしかない。そこにやってきたおあつらえ向きなバイト、どう考えてもスキル様々ですありがとうございます。
色々問題あるけど、っていうか問題だらけだけど、一つ目処が立ったから良しとするか。
ここまで読み続けたあなたなら分かってくれるはず。
物足りなさがある。そう、完全に足りない。
全裸が!
でもこの章で全裸したら四方八方のロリコンからすごい目で見られそうなんでやめておきます。
主人公は若くなったけど中身は成人してるんで年齢的に賞味期限切れやし…
いつもお読みいただきありがとうございます。




