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異世界出張でアフターケアとかなんですか?  作者: 概念ならまだしも実在するわけねーじゃん
3.スライム

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次の依頼は砂漠で人捜しらしい。

ふざけんな、と思うんだが、依頼主は至って真面目だってんだから救いようがない。

なんでも探し人は高名な踊り子だとかで、その舞を見たものは身体能力が倍近く向上するそうだ。現役が四十年前というから現在時点での効果は望み薄であるが、その技術をうまく継承することができれば戦力増強になる。

ということで、ここまで連れてこいっていうのが今回の使命を要約した内容だ。


砂漠地帯は隣の王国との国境に跨がって広がっている場所らしい。その広大さは言うに及ばず、正確な領土は不明なんだそうだ。ただ、向こうからやってくる民族がいるので国があることだけは確認されている。

明確に境界を決めていないのは資源が枯渇しており確保する必要がない事もある。使いようのない土地であるため、所有を主張しても旨味がないってことだ。そこ以外に肥沃な土地はまだまだ残っている。わざわざメリットのないものを所持する事はない。


っつーことで自国領かも不明な枯れた土地で砂漠の民を見付けるんだドンしなきゃならん。

非常にかったるいことこの上ないが、仕事は仕事だ。

それに神託の類とか言うから、この世界の神様が関わってんだろう。名前も知らんけど、この神様はラブコメを求めているんだぜ? 過酷な環境でコメディしろとかどういうことだ。一般人にそんなもの求めるんじゃない。


「じゃあ、出発は早くて明後日だな。水と塩をできるだけ大量に仕入れておこう」


現在は拠点にて作戦会議中。

こういった無謀そうな注文は頻繁にあるらしく、初回の冒険で痛い目にあってから自身の能力に過信せず必要な準備は整えるようにしたらしい。人は誰しも実戦経験を通して成長するものよ。


「食事もな。砂漠地帯の横断は命がけらしいが、脱水と餓死に気を付けろと忠告された」


「あとは移動手段だな。ラクダでもいりゃいいんだが」


「昼は暑く夜は寒いと聞く。マントや防寒具を用意しておくべきだろう」


「ほんっと無限アイテムボックスあって良かったよな。無かったら詰んでるわ」


まずもってそれがある時点で食糧に関して杞憂が無くなるのはありがたいよね。

水魔法って言っても砂漠地帯で上手く機能するか分からないし、地中から水を呼び起こしたとして周辺のオアシスやら井戸やらに悪影響を与えないとも限らない。やたら天候を変えたり地形を変えたりしたら世界全体の天気図が変わってしまう。それはつまり生態系に影響を及ぼすということだ。山一つ吹っ飛ばしたら向こうの国で家畜が全滅しました、という事にもなりかねない。


「ラスはどうだ、何か思い付くか?」


ミハル君に相談される。事情を知らない人から見たらスライムに話し掛ける変人だぞコイツ。

ともあれ、思い付くことといえば。


「ああ、砂砂漠なら風が強敵か。砂が目に入らないようにしないとな。直射日光がきついからフードとマスクか。んで、ナイフね。砂漠の民に詳しい案内人か、商人の伝手なら見付かる可能性が高い、ね」


「ほう、さすがラスだな」


「それから……食糧と水を必要量の十倍を見込んで用意? なんで……砂漠の民と交渉? 食糧の代わりに情報を貰うのか。確かにいろんな物不足してそうだもんな」


食糧が一番分かり易いけど、他にも砂漠には無くて役に立ちそうなものなら何でも良いと思う。

装飾品やら煌びやかな布地やら家畜やら。

そこにないものを売るのは商売の基本じゃないかな。


「でも、そんなものをどうやって用意するんだ。いくら王城の支援があるといっても……」


「ん、なにラス……商人を巻き込む? おお、商人の代わりに砂漠の民と商売するってことか」


リスク多すぎて乗ってくる数奇なヤツなんかいるか分からんけどな。

こっちに商品を預けるのが不安だというなら、交渉の場をセッティングするという方向にすればいい。現時点での交流の程度がどんなもんかしらんけど、情報が出て来ないなら取引はしていないはずだ。


「ふむ……それは商人連中の商業範囲になるかが問題だな。情報収集の程度によって判明するだろう。交渉時の札にはなるだろう」


「あー、なるほどなぁ。ま、思い付くことはなんでもやってかないとな。今度の土地ばかりは俺も不安があるし」


そりゃ砂漠だもんね。写真を見たことはあるけど、実際に訪れたことは無い。鳥取砂丘もいったことない。知識はあるけど知恵はないのよ、考えつくだけのことをするしかないわ。


「とりあえずの方針は決まったな。じゃあ、食糧の買い付けは俺がするから、リタはアミとミナに指示を出して情報収集を中心に頼む」


「わかった。途中で食糧が手に入りそうならキープしておこう。そこうなったらカーシーとアミフェルナにも協力要請できないか頼んでみるか。特にイェルミナの実家は商家だしな」


え、そうなの?

あの娘、吸血鬼か呪術師かって思ってたけど商人の娘かよ。とんでもない才能もってんな。


「え、ミナってそうだったのか?」


「知らないのか? 今は三代目が取り仕切っているが、彼の代で儲けが百倍になったと聞いているぞ。その功績で貴族の娘を貰ったとかな」


おいイェルミナさんのお父さんって商才ありまくりじゃねぇか。

百倍って。十万の売り上げが一千万になるんだぞ。どういう手を

使ったらそんな事になるんだよ。

そしてそんなミナさんに求婚されているミハル君……逆玉おめでとう。


あ、ちなみにミナさんとアミちゃんはまだ実家から戻ってきていません。やっぱり旅に出た我が子が心配だとかで、一度帰ると二日は離してもらえないらしい。だから準備もあるけど出発も遅れるらしいよ。

リタさんは家は無いらしく、拠点がそのまま住処らしい。これも最初は詰め所の仮眠室で良いと言い張っていたらしいんだが、全員で説得したそうだ。仮にも女性、妙なところで寝ていたら襲われる可能性もある。この家ならミハル君がいるとはいえ、ヘタレだから問題ない。それに何かあったらミナさんがすっ飛んでくるっていうから安心だ。どうやって察知するかは聞かないことにしたから知らない。


「そんで、ラス」


はいはい?

呼ばれたので振り返れば、真剣な顔をしたミハル君がいた。

なんだね、頼み事でもあるのかね。


「お前……カレー作れる?」


言いながら香辛料をででんと出してくる日本人。

ジャパニーズルーカレーは難しいかもしれんけど、インドカレーならできそうよ。

無言で見返したら、キラキラした目を向けられた。異世界に行って一番悲しいのは日本食が食えないことなんだってさ。もっと悲しいことあるだろ、とツッコミたかったけどやめておいた。

どんなにしっかりしたとしても、やっぱり人の本質って変わらないんだろうな。



お読み頂きありがとうございます。


小説の基本は竜頭蛇尾だと聞きました。

知ってても適用しない不思議。

なお、砂漠の死因は溺死が多いということですが、ラスちゃんも知らなかったって事で

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