混浴イベント発生中……?
「「「キャ――――――――――――――!!!」」」
風呂場から響く叫び声。
……もう予想はついていた。
「がはっ……グフッ……げほっげほっ……」
案の条、リビングのドアを開けて飛び込んできたのは、変態こと筋肉男、ティール。
やっぱりこうなると思ってた。だから俺は行きたくなかったのだ。
ゼエゼエと息を切らしながら、ティールは一言。
「ふっ……しっかりこの目に刻んできたぜ」
「バカ野郎! ほんっと、バカ!」
バカとしか言いようが無い。変態ということがバレてしまったのだろうか。
「お前が目撃されたんなら、俺も変態扱いされる気が……」
「ああ? 姿なら見られてねえって。ちゃんと変装して行ったんだぜ? 俺?」
そう言ってティールは、ズボンのポケットからニット帽とマスクを取り出した。
……なるほど、確かにコレは別の意味での変態だな。
「って、変態しか言ってねえじゃん、なんか変態以外の話題ないか?」
「んなこと言われてもな。てかもう9時半じゃん。お前、混浴してきたら?」
「アホか。死ぬぞ? マジで」
ティールみたいに俺はバカじゃないのだ。冷静な男と言っていいハズだね。
混浴……かあ。ニートだった俺には到底縁のないイベントだな。
俺がちょっとだけ虚しさを覚えながらも、テーブルの上にあったコーヒーを啜っていると―――――――
「京夜さーん! 一緒にお風呂入りませんか――――――?」
俺は飲んでいたコーヒーを吹き出した。
「ごはっ……!? かはっ、ゴフッ……!?」
マズイ。器官に入った。
くっ……やるじゃねえかライア。風呂場からのドッキリとはな。
「京夜さーん! 聞こえてますー?」
「ホラ、あの子達もそう言ってるんだから、早く行けよ」
ティールが朗らかにと笑いながら、俺の背中をバンと叩いてきた。それのせいでまたもや飲んでいたコーヒーを吹き出す。
……いや、ちょっと待て。待て待て待て待て。
「なあ! 意味分かんねえよ! なんでお前らと一緒に風呂入んなきゃいけねえんだよ!」
「ちょっとしたワケがあるんですよ! 時間もないですし、早く来てください!」
ごめんなさい、思考停止。
まずアイツらが何をしたいのかが分からん。そこをまず知る必要がある。
いや、でも、ついさっき変態はやめると言ったハズだ。男として、二言は……
「行かないのか? じゃあ俺が代わりに……」
「行きます!」
俺は早足で風呂場へと向かった。
オイオイオイ。
来ちゃいました、来ちゃいましたよ。
いや、落ち着け? 俺。ここは少し呆れつつも大人の対応を取るべきだ。
「あー! 来ましたね? 京夜さん!」
声のした方向を見……いや、見てません。
俺はサッと素早く反対方向を向くと、垂れてきた汗を手で拭う。
幸い、風呂が広くて良かった。シャワーなどもたくさんあるんだが、今のこの状況だと水を浴びたくてたまらない。
だって、既に汗びっちょりだもん。
「きょーや、コハクが大変なの! 来て!」
突如視界に迫って来たロリ体形……おっといけない。見ちゃだめだ。
俺は慌てて目を瞑ると、アークに手を引かれながら歩き続ける。
「な、なんだ? どうしたんだ?」
「コハクが倒れちゃった」
その場に座り、そっと目を開……けないから困る。なので、取りあえずライアとアークに状況確認させてもらうことにした。
すると、ライアは。
「先ほど現れた謎の不審者のせいで、コハクさん驚いて倒れちゃったんです。お酒も飲んでましたし、相当ヤバい状況ですねコレは」
……ティールの奴、本当にバレずに済んだんだな。
お前の行動力と勇気は凄いと思うよ。ホントに、これマジで。
……ただ、俺の仕事を増やすのはやめてほしい。
「……京夜さん、目は開かないんですね。流石にそこまでの変態じゃないか。……ちなみに今、私も目を瞑っています」
「いや、俺は隠してるから別にいいんだけど……」
俺には、脱衣所から持ってきたバスタオルがある。やっぱり冷静だよね、俺って。
……はあっ。
めんどくせえ。
俺は頭を悩ませながら、酒に酔いながらぶっ倒れてるコハクの姿を想像するのだった。
(´・ω・)(´・ω・)(ちょっとした出来心です。)(*´ω`*)




