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【全年齢版】死んだ妻をまだ愛しているので、後妻に「君を愛するつもりはない」とこれから伝えてくる  作者:


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13/15

13(本編完結)


 冬が終わり、春がきた。あっという間に季節は巡って、また夏がやってくる。


 私とステラは、2人揃ってセレーネの墓へ訪れていた。


 週に一度とまではいかなかったが、セレーネの墓参りは欠かさず行っていた。けれど2人揃ってセレーネの墓参りをするのは、これが初めてのことだった。


 花を供えて、その場にしゃがんで墓石を撫でる。陽の光を浴びた墓石はほんのり暖かかった。


「……セレーネ、今日は報告があってここにきたんだ」


 ステラは、私の一歩後ろで立っている。

 私は墓石に刻まれたセレーネの名前をなぞる。これから話すことは、セレーネを傷付けるかもしれない。でも、言わなければならなかった。一度大きく深呼吸をして、セレーネにそっと囁きかける。


「——ステラとの間に子どもができたんだ」


 あの夜をきっかけに、私とステラは婚姻関係を継続していた。

 夫婦として睦み合うことも次第に増え、とうとうステラは私の子を身籠った。その報告のために、2人で墓に足を運んだのだ。


「まだ誰にも話していない。知っているのは、私と、妊娠の診断を下した医師だけだ。……まずは君に報告しなければと思ったんだ」


 生温い風が頬を撫でる。じりじり肌を焼くような暑い夏。セレーネが死んだのも、こんな季節だった。


「……、……セレーネ、君は私を憎んでいるか?」


 墓石はなにも言わない。


「君を差し置いて、新しい妻と子を成した私を恨めしく思うか?」


 墓石は、セレーネは、なにも言わない。

 ただ静かに、そこに佇んでいるだけだ。


「……セレーネ。君は、私を憎んでいるかもしれない。恨んでいるかもしれない。けれど私は今、確かに幸せなんだよ」


 ざぁ、と強く風が吹いた。その拍子に木々から葉が舞い散り、あたりに降らしていく。


「……セレーネ。忙しくなるだろうから、しばらくここには来れないかもしれない。でも次に来るときは、花をたくさん持ってくる。だからどうか、許してはくれないか」


 墓石はなにも言わない。突然墓石が喋り出すとか、死人の声が聞こえるようになるとか、セレーネの意思を確認できるようになるとか、そんな都合の良いことは起こらない。だから最後にもう一度だけ墓石を撫でて、立ち上がった。

 

「また来るよ、セレーネ」


 挨拶を交わして振り向けば、ステラと目が合った。身重の体を労わりたくて、ステラの腰を抱き、ゆっくりと歩き出す。


「両家の親にも報告しなければいけませんね」

「……あぁ。セレーネが亡くなって、長いこと心配をかけてしまったからな」

「きっとお喜びになられます」

「そうだと良いんだが」



 季節は夏。また今年も月下美人の花が咲きそうですよ、とラルフが報告しに来てくれた。ふとステラの方を見ると、ステラも私の方を見つめていた。2人で笑い合って、ゆっくりと、歩いていく。


 あぁ、幸せだな、と、確かにそう思った。

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