第一話 放逐された陰気な公爵令嬢のハズが……
「──あ、テステス? こちらはラスティ・ス…… んんっ、ラスティ・『ポルコロート』が記録します」
高い位置にある窓に暗幕を張り巡らした、石造りの部屋は暗い。
しかし中央に据え付けられた大きなテーブルだけは四隅のランプに照らされていた。
この空間は学校の教室ほどの広さがあり、研究室としての機能を保つため気密性も充分だ。
これから、彼女は学びの集大成をカタチにする。
そのための『実験記録』を付けている時だった。
「スキルに由来する『純粋な毒』の生成実験、第…… ええと何回目だったっけ…… まあいいや、今回はわたしが作り出せる最凶毒『ベロ毒素』の生成を試み……」
《ドンドンドンドン!》
《ガチャ、バンッ》
「ラスティ・スコラァ・ヘルトナートはいらっしゃいますかッ!?」
「……チッ」
貴重な記録媒体を起動させたというのに、忌々しくも闖入者が現れたのだ。
彼女は思わず舌打ちし、姿も見ていない相手を『キノコの苗床』にしたくなったが、捨てたハズの名前を出されては言葉を選ばなくてはいけない。
彼女は記録装置を止め扉から出て、この『塔』の玄関ホールへと駆け上がった。
空気孔を改良し、伝声管のようにしてあるため声を届けるのも可能だったが、貴族の『名前』を出している相手に礼儀を尽くさないワケにはいかない。
(貴族の失敗作に何の用があると言うのだろうか)
そんな悪態を噛み殺し、彼女は来客と対面した。
「はいはい、ええ、わたしですけれど。そちらは?」
「突然の失礼をお許しください。こちらは王陛下からの文、わたくし告知の使者でございます」
「ひえっ? こっ…… 国王様のッ!?」
この『魔法国 モコード』において王といえば、国の中でも有数の魔力量と二属性の大魔法使いである。
血族として二属性が使えるとしても、国の頂点として長年の平和を保つ知性とカリスマは間違いない。
「わ、わたしなにかしちゃいましたかっ? しけいですかっ!? まだ猛毒と呼べるようなモノは数えるほどしか作っていませんし、ちゃんと管理下に…… あれ、鍵は掛けてあるけど箱自体は固定してなかったっけ……?」
「そうではありません。では、陛下からのお言葉を伝えるッ!」
そして、語られたのは。
一度は身分を剥奪し追放した彼女を『聖女』として城へと迎え入れる、という…… 耳を疑うような『命令』だった。
「……は?」
先触れとして駆け込んだ騎士が返事を待っている真面目な顔を、ただ無表情に見つめる。
彼女……ラスティ・スコラァ・ヘルトナートには、そうするコトしかできなかった。
「えっ、と? わたし、放逐された陰気な元公爵令嬢のハズなんですが……」
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作者がハリキリます☆




