55.君臨すれど統治せず、なんてね。
昨晩はベルナベルに搾り取られた。
〈代理人〉をふたり増やしての4Pである。
……ベッドが狭いんだよなあ。
お金が余っているので〈個人輸入〉でキングサイズのベッドを購入した。
これでベルナベルがさらにテンション上げてきても対応できると信じたい。
〈牢獄〉で奴隷プレイに興じているローレアの相手をさせている〈代理人〉と記憶の統合をしたが、……これは酷い。
何が酷いってもうなんというかローレアもローレアだが、俺も俺でノリノリである。
なんか知らない自分を見つけたみたいで凹む。
さてカーシャの元に送っていた〈代理人〉も戻ってきて記憶の統合を行った。
相変わらず新婚さんみたいな甘々イチャラブである。
カーシャだけが癒しだな。
〈新聞閲覧〉を開くと、トップニュースは案の定、俺がリョウマを殺して聖痕を奪ったことが書かれていた。
逆にこれを超えるニュースがあったらそちらの方が驚きである。
ともあれこれで死んだ地球人は三人になった。
聖痕についてやリョウマの名前は書かずに、〈匿名掲示板〉のニュース速報スレに地球人に三人目の死者が出たことを書き込む。
反応はまちまちだ。
そもそも詳しい死因を書いていないので、書き込みの信ぴょう性を疑うレスもついた。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈領土〉のクラススキルを習得しました》
遂に領土を得たぞ。
っていうかどんなスキルだこれは。
スキルを起動したりしてみた結果、だいたい分かった。
〈領土〉は自宅と認識される領域にひとつだけ法律を設定することができるらしい。
まさしく領主の所業だな。
ただの自宅警備員も出世したものだ。
問題はどのような法律を策定するかだ。
例えば領土内では俺を害することができない、などという法則も作れるが、そもそも〈隠れ家〉に本体が引きこもっている以上、無敵状態なのでこの手の法律は必要ないことになる。
また領土内での買い物に消費税をつけて徴収することもできるが、〈闇市〉の手数料が莫大なので、金には困っていない。
なかなか難しいな、法律。
今すぐに決める必要もないので、保留にしておこう。
君臨すれど統治せず、なんてね。
〈代理人〉とベルナベルは聖痕を探す冒険に出た。
今回、スタート地点は宿のある最初の街、ガエルドルフからだ。
うっかりエミコやタクミが聖痕を手にすることのないように、近場の聖痕をまず入手することにした。
大通りを歩いていると、久々にエミコに会った。
エミコもこれから冒険に出るところらしく、仲間を五人連れていた。
「あ、コウセイさん! おはようございます、しばらくぶりですね」
「ああ、おはよう。基本的にインドア派なんだよ、だから顔を合わせる機会が少ないみたいだ」
「そうなんですか? ああ、ところでありがとうございました」
「ん? 何がだ?」
「ガイアタイマイのときに『魔法の基礎』を売ってもらったじゃないですか。無事に魔術を習得できましたよ」
「へえ。おめでとう。ちなみにどんな魔術を習得したのか、聞いてもいい?」
「はい。〈火:攻撃〉〈火:筋力〉〈火:付与〉のみっつです」
「へえ、随分とアグレッシブだな」
「冒険では大活躍ですよ。あ、そろそろ行かないと……仲間を待たせているので。すみませんが失礼しますね」
「ああ。行ってらっしゃい」
エミコは仲間のところへ戻り、そのまま門の方へ歩いていった。
ベルナベルは「随分と愛想が良いではないか。手籠めにしたいのか?」などとからかってきた。
「いやいや、同郷のよしみだよ」
「そうかのう。まあよい。ではわしらも出発するとしよう」
「そうだな」
俺たちも門の方へ向かった。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 53
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈多重人格〉〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンウォーロード召喚〉
〈別荘〉〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈防犯カメラ〉
〈ホットライン〉〈代理人Ⅱ〉〈帰還〉〈領土〉〈アイテムボックス〉
〈経験値30倍〉〈契約:ベルナベル〉〈隷属:青葉族〉
〈従魔:マーダーホーネット〉》
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