56.十二歳は完全にアウトである。
「世界の運行を司る精霊たちよ。我が命に従え。聖痕を探して、その在り処を俺に教えてくれ」
〈精霊:使役〉を行使すると、周囲の精霊たちが四方八方に散っていく。
普段は見えない精霊だが、このときだけは視認できるのは不思議だ。
しばし待つと、方角を伝えてきたので、そちらへ向けて進むことにした。
街道を外れるのは仕方のないことだ。
平原を突っ切り森に入る。
ひとまず最短距離を行くのが俺とベルナベルの冒険だった。
先行するベルナベルが茂みや邪魔な枝を〈空間:攻撃〉で薙ぎ払う。
黙々と進むが、どうやら時間切れのようだ。
日が大きく傾き、帰還する時間であることを知らせてきていた。
〈精霊:使役〉で方角を調べてから、〈隠れ家Ⅱ〉で宿に戻る。
〈帰還〉は使用した場所からリスタートできないから、冒険の最中の帰還には〈隠れ家Ⅱ〉を使うのだ。
そして記憶の統合を行った。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈写し技Ⅵ〉のクラススキルを習得しました》
お、久々にコピースキルだ。
ついにむっつ目だな、今回はどんなスキルをコピーできるやら。
ベルナベルと夕食に向かう。
今日も宿の料理は美味であった。
この宿、何気に料理のレベルが高いので毎食、楽しみにしているのだ。
食後、階段を登っているところで、宿の娘クロエとすれ違った。
クロエはハッとした表情になり、俺に道を譲った。
いつもなら構わずすれ違っていた。
わざわざ歩みを止めて道を譲られたことはなかった。
心なしか顔が赤い気がする。
「どうしたクロエ? 調子でも悪いのか?」
「い、いえ。コウセイさん。お気になさらず。どうぞ、お部屋にお戻りください」
「しかし――」
そのとき、ベルナベルに背後から肩を叩かれた。
「主よ、構わぬ。その娘に大事はない。部屋に戻ってやるのが主にしてやれる最大の心遣いじゃ」
「そうなのか。分かった、仕事お疲れ様、クロエ」
「は、はい」
俺たちは部屋に戻った。
「で? ベルナベルはクロエの様子がなんなのか分かっていたみたいだけど……」
「うむ。クロエも年頃じゃからな。主はこの世界の世情に疎いから知らんじゃろうが、獣人族には発情期があるのじゃ」
「……クロエが、発情期?」
「うむ。まだ慣れておらなんだな。初々しい感じじゃった。男に接触したら我慢できなくなるじゃろうな」
「そ、そうか。女性は大変だな」
「なにを言っておる。獣人族の男にも発情期はあるぞ」
「そうか。獣人族って大変だな」
「年中、発情しておる主が言ってものう……」
「誰が年中発情しているって?」
「牢獄でしておることを鑑みれば、間違っておらぬと思うが」
チクショウ、反論できねえ。
だがそもそもローレアをあんな風にしたのは、ベルナベルがけしかけたからだ。
「のう主よ。もしもクロエが欲しいなら、今がチャンスじゃぞ」
「いやいや。クロエはまだ十二歳だぞ。さすがに子どもに手を出すのはマズい」
「おかしなことを言うのう。もう子どもを孕めるから発情しておるのじゃぞ?」
どうもこの世界では十二歳で結婚して子どもを生むのは普通にアリらしい。
地球では児童婚とか問題になっているが、それは時代が進んできたからであって、数百年も遡ればこの世界と似たりよったりだったはずだ。
とはいえ時代の進んだ現代人の倫理観からすると、十二歳は完全にアウトである。
「まあよい。わしは今晩は〈淫夢〉で精を集めてくる」
「そうか。いってらっしゃい」
悪魔モードになったベルナベルを見送る。
あの格好にならないと精を集められないのだろうか?
謎であるが、特に聞くほどのことでもないので気にせず〈匿名掲示板〉の管理を始めた。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 55
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈多重人格〉〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンウォーロード召喚〉
〈別荘〉〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈防犯カメラ〉
〈ホットライン〉〈代理人Ⅱ〉〈帰還〉〈領土〉〈写し技Ⅵ〉
〈アイテムボックス〉〈経験値30倍〉〈契約:ベルナベル〉
〈隷属:青葉族〉〈従魔:マーダーホーネット〉》
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