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初期クラスが自宅警備員であるため一歩でも宿から出ると経験値が全く得られなくなるらしいので、自室に引きこもります!  作者: イ尹口欠
聖痕収集編

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24.つくづく万能だな。

 森を歩くこと小一時間。

 ベルナベルはサンダーバードの居場所が分かるのか、迷いなく森を歩いていく。


 道中では見かけたゴブリンをパチン、と指を弾くだけで首をはねた。

 俺が「何をした?」と問うたところ、ベルナベルはつまらなそうにこう言ったのだ。


「空間属性の初歩的な攻撃魔術じゃ」


「空間属性? 聞いたことないぞ。属性は地水火風光闇の六属性じゃなかったのか?」


「人類の魔術論は遅れておるのう。属性は他にも氷や雷、空間や時間などもっと多くあるぞ」


「そうなのか……」


「ちなみに主の属性と特性は、〈闇:召喚〉と〈空間:防御〉と〈時間:治癒〉、そして〈創造:槍〉じゃな」


「…………は? そんなに属性と特性が、俺にあるのか!?」


「うむ。そうじゃな」


「そうだったのか。なあベルナベル、帰ったら魔術、教えてくれないか?」


「良いぞ。主が立派になるとわしも誇らしい」


 ちなみにベルナベルの属性と特性は多すぎていちいち口に出して読み上げるのが面倒、ということで謎のままだ。



「あれがサンダーバードじゃな」


「いや待て。一羽だけじゃないのか?」


 そこには六羽のサンダーバードが枝からこちらを伺っていた。

 だが恐れる素振りもなく、ベルナベルは告げる。


「楽勝じゃ。一羽じゃろうが、六羽じゃろうが、わしにとってはただの鳥じゃからな」


「そうか。ならよろしく頼む」


「うむ。主よ、そこから動くでないぞ」


 何かが付与された気配がしたので〈魔力眼〉を使うと、俺に何か防御魔術が掛けられているようだった。

 こんな小さな魔術でサンダーバードから俺を守れるのか? と思っていると、ベルナベルは一歩、無造作に進み出た。

 警戒心の高まっていたサンダーバードたちは、それが交戦の合図となったようで、一斉に飛び立つ。


 雷撃を纏ったサンダーバードが六羽。

 素早い動きでベルナベルと俺の方に突っ込んでくる。


 しかしベルナベルが「遅い」と呟きながら腕を振るうと、赤い五本の線が舞うようにサンダーバードたちを斬り刻んだ。

 余波で雷撃がこちらに飛んできたが、不思議と痛みも感じず俺の表面を滑るように電流は地面に流れていった。


 地面に転がる六羽のサンダーバードの死体。

 あっけなく、依頼を達成したベルナベルには返り血の一滴もついていない。


「どうじゃ、楽勝じゃったろう?」


「ああ。ちなみに俺にかけた魔術はどんなものだったんだ?」


「単純に〈雷:無効〉じゃな」


 なるほど、サンダーバードを俺の手前で殺し尽くすのなら届くのは雷撃くらいのものだ。

 それを完全に無効化するのだから、ベルナベルからすれば完璧に俺を守ってくれたのだろう。


「しかしロクな運動にならんかったのう。サンダーバード程度じゃ当然なのじゃが……」


 思えばガエルドルフの街は地球人のスタート地点のひとつだ。

 そこにいきなり勝てないような強い魔物がいるわけない。

 確か一番最初に死んだ奴だってパーティを組んでいれば勝てたか逃げられたかしたという話だったし。


「よし、主よ。もっと遠くへ行くぞ」


「いや、帰りはどうするんだよ」


「そんなもの、主の新しいスキルでなんとかなるじゃろ」


 う、〈隠れ家Ⅱ〉のことがバレている。

 どうもベルナベルは他人のステータスが見えてかつスキルの効果まで把握できるらしい。


「ほれ主よ、サンダーバードの死体を〈アイテムボックス〉に仕舞ってくれ」


「あれ、ベルナベルは〈アイテムボックス〉を持っていないのか?」


「希少なスキルじゃからな。わしも〈空間:収納〉は持っておるが、時間停止の効果のある〈アイテムボックス〉には及ばぬ」


 ちゃんと収納魔術はあるらしい。

 つくづく万能だな。

 俺は言われた通りにサンダーバードの死体を〈アイテムボックス〉に入れた。


「よし、もっと強い魔物を探しに進むのじゃ!」


「やれやれ……」


 その日の夕刻まで森を歩き通すことになった。


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