2-30.オリヴィア、爆発っ!
クネクネ鉱石のカギで、お部屋のドアを開け、台車を調理実習室の中に運ぶ。 ルナは、問題なく 30個分のマフィンの材料を 準備していた。
「ちょっと、ケイシー。 今回のは、ひどすぎるわよ。」
ルナの用意してくれていた、『BLTサンドイッチ』に かぶりつきながら、私は、ケイシーに向かって 文句を言った。
なんと、ケイシーは、調理実習室の使用許可の申請から、カギの借り出し、朝のサンドイッチの準備、マフィンの材料の用意、ぜーんぶのお仕事を ルナに押し付けていた。
「えー、だって、やってくれるって 言ったんだもん! ほら、オリヴィアだって、今、ルナのサンドイッチ 食べてるじゃんっ。」
私たちの間に入るように、ルナが言う。
「うん。私が、やるって言ったの。ほら、オリヴィアたち、専門誌の取材とかで、忙しいでしょ?」
えーと・・・オリヴィア「たち」が取材を受けている? ケイシーって、1回でも 取材、受けたかしら? っていうか、私だって、そうそう 何回も 取材なんか受けないわよっ。 もぐもぐ・・・。
「ケイシーっ、今後、ルナに 押し付けるんじゃなくて、3人で分担するって 約束してっ。 今回のは、度を 越してるわ。」
「えー。 ルナのノートが無いと、私、死んじゃうっ。 オリヴィアだって、それ、困るでしょ?」
う・・・ 確かに・・・ 恐ろしいことに、気づいたときには、いつの間にか 私たちは、ルナのノートが無いと、授業についていけない体質になっていた。
依存症って、恐ろしい。 うん。 ノートは、違う。 そういう話では ないっ!
「いや・・・ だから、得意不得意の分担は、いいの。 そうじゃなくて、こういう 早起きして用意するとか、面倒なことや、難しいことを、1人に押し付けちゃって、楽をするは、ダメッ。 分かるでしょっ?」
「えっ? 私、平気だよ。」
おーい。 ルナっ。 そこは、黙っていよう・・・。
しかし、ケイシーは、お調子者だけど、悪人ではない。 たぶん、いまだって、ちょっと、後ろめいた気持ちは、最初から、あったんだろう。 ルナに「ごめん」と謝ると、サンドイッチをパクっと口に運んだ。
「まぁ、今回のは、ちょっと アレだったね。 ごめんね、ルナ。 次から、私たちも、ちゃんとやるからっ。 今日は、ありがとうね。」
[風と水の魔法使い] 【 2-30.さくっとふんわりプレーンマフィン 】
サンドイッチを食べ終わり、片付けを終えたら、マフィン作りの始まりだ。
オーブンの準備は、ルナが行う。
いや、これは、適材適所。 決して、こき使っているわけではない。 なぜなら、ルナが、火と水の魔女だから。 左手には、火属性。 右手には、水属性。 水属性の魔法は、ちょっぴり 苦手らしいんだけれども、属性魔法のおかげで、火の加減も出来るし、危ない事態になっても、水魔法で 消火が出来る。
ルナが、オーブンを温めている間に、私たちは、カーボンスチール製の型に 耐熱性の紙を次々に置いていき、生地を作るための準備を始める。
「ルナっ、そっちで、バターを溶かしておいてっ。」
ケイシーが、バターの入った 熱に強い陶器のお皿をルナに渡す。 オーブンの前に置いて、塊を溶かすのだ。 その間に、私は、深皿に ヘニペニ トリの卵を割り、木の棒を使って、軽く溶きほぐす。 これに、お砂糖を入れたら、風魔法でグルグル撹拌。 もったりした感じに なるまで、我慢強く 泡立てる。
そうして、私が卵を 泡立てている間に、ケイシーが、ワシュパン製粉所の 小麦粉(タンパク質少な目タイプ)と、カボネイ・トソデゥムハイドロ食料品店の特製 ふくらし粉 を用意。 ふるいを使って、サラサラにしながら、私が 泡立てた 深皿の中へ放り込んだら、もう1回、風魔法を発動。 ずざざざざっと、混ぜてしまう。 ダマが出来てOK。 粉が残ってる感じの所で、ルナが持っている スキタイ製のバター を持って来てもらい、放り込んだら、次は、生クリームをポイッ。
これで、マフィン生地のもとは、完成。
セットした型・・・ 料理用耐熱 紙の上に、ドロドロの生地を 流し込む。 中の空気を抜くために、テーブルの端で、型を トントンと叩きながら、やるのが ポイント。
後は、焼くだけなんだけれども、ケイシーが、どうしてもって言うから、いくつかの生地の中には、チョコレートの破片を グサッと刺しておく。 普通のプレーンマフィンじゃなくて、チョコレートの入った マフィンにしたいらしい。 あっ、ルナが、自分用の生地に 砕いたアーモンドを入れている・・・。
私も、何か用意しておいたら 良かったな・・・。
そうして、ルナが、ちょうどよい 温度に 温めてくれていたオーブンに、生地を放り込む。 これで、20分間焼いたら出来上がりっ。 うん。とっても、手際よくできた。 完璧だね♪
出来たマフィンは、型から取り出してシートの上に置く。 そのまま粗熱を取ったら ルナ特製!『さくっとふんわりプレーンマフィン』のできあがり。
ふぅ。疲れたっ。
「案外、簡単に 出来るモノね。」
うん。 ルナが、全部、用意してくれていたから だけどね。 調子に乗りそうな ケイシーにクギを刺しておく。
粗熱が、適当に取れたら、可愛らしい紙で、包んでいくんだけれども、それは、ルナとケイシーにお任せする。 この二人は、抜群に センスが いいっ。 適材適所なのだ!
そうして、私は、残った粉や、バターなどの片づけをする。
牛乳や、クリーム、バターなどが、こびりついたため、小麦粉の袋の周りに、こなこなちゃんが、イッパイ くっ付いている。 次に使うことを考えると、これは、キレイに しておいた方が良い。 私は、きれい好きなのだ。 あっ、オーブンの火も、先に 消しておいた方が 良いだろう。
小麦粉の袋を ポンポン叩きながら、オーブンへと向かう。
歩きながら、ゴシゴシしても、ラベル部分・・・ ワシュパン製粉所の小麦粉(タンパク質少な目タイプ)と書いてある・・・ に、こびりついている粉が、なかなか取れない。 うん、やっぱり ラベル部分が見えるほうが、いいよね。
オーブンの前にある 小さな台の上に、小麦粉の袋を置く。 うーん。取れないな。 左手の人差し指で、水を出して 落とそうとしても、へばりついた こなこなに、バターが 混ざっているためか、ラベルから 粉の塊が 落ちないのだ。
仕方がない。 風魔法で、一気に落としてしまおう。 右手の人差し指に魔力を込めて、風を起こす。 おぉ、完璧っ。 こびりついていた粉が、ぽろりんっ! と 音が聞こえそうなくらい あっさり落ちた ・・・って、ふたが、開いてるぅぅぅ。
小麦粉の袋の 頭 部分。 しっかりと クリップで 止めていたはずなんだけれども、私の風と水の魔法で 緩んだみたい。 袋のフタが開いて、小麦粉が、空中を 舞いはじめた。
慌てて、指の魔力を止めて送風を中止する。
ボンッ!
その瞬間であった。 ふわりとまった小麦粉が、オーブンの中で、爆発っ。 目の前が、真っ白になる。
「え? 何が起こったの? 大丈夫?」
「オリヴィアっ。なにしてるの・・・ って、きゃははははは。」
ルナと ケイシーが、駆け寄って来た。 ルナは、心配そうな顔。 でも、ケイシーは、大爆笑だ。 ・・・ それもそのはず、私の顔は、破けた袋から、飛び出した粉で、真っ白になっていた。
くぅぅ。 やられた。マフィンづくりっ。 恐るべし・・・。
私は、片付けをふたりに任せ、顔を洗い、お着替えしに、寮の お部屋へと ひとりトボトボと 戻ることになったのであった。
§ ★レシピ★ 材料 と 手順 §
ルナ特製!!!【さくっとふんわりプレーンマフィン】
『材料』
ヘニペニトリの卵
6個
カタリー・ヨライタッマ食料品店のお砂糖
350g
ワシュパン製粉所の小麦粉(タンパク質少な目タイプ)
600g
カボネイ・トソデゥムハイドロ食料品店の特製ふくらし粉
25g
ミスターダウト生乳店の40%生クリーム
50g
スキタイ製のバター
150g
『手順』
1.卵+砂糖 まぜまぜ
2.①に、小麦粉+ふくらし粉 まぜまぜ
3.②に、バター+生クリーム まぜまぜ
4.お好みで、チョコや、アーモンドをどうぞ!
5.焼くっ!
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23時頃までのWEBでの集まりが、2日ほど続きました。更新するのが、すごく難しかったです。ごめんなさい。
あと、話し合いをしながら、並行してこの話を書いているのは、絶対内緒です。うん。2つ以上の事柄を同時に思考するというのは、とっても難しいことが良く分かりました。




