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第5話:SSS

お久しぶりです。

迷走して、どうして良いかわからなくなってしまいましたが、続けることに決めました。

勝手ながらよろしくお願いします。

第5話:SSS(ショートストーリー集)




第4.25話:井戸端会議いどばたかいぎ



 その日もご近所のママ友が集まって井戸端会議いどばたかいぎが開かれていた。

 議題は夫の愚痴ぐちからご近所の噂話、最近の首都ジュモーン内の様子、どこそこで珍しい宝飾品が売っている、どこの野菜が一番新鮮だったか、お肉が安い行商人がいた、新しい香辛料を試した、などといったまとまりのない内容だった。

 その中でも最もみんなが熱心に情報交換していたのは、子供のあれこれであった。

 流石さすがママ友である。


「それで、うちの子ったらなんでも口に入れようとして、この間なんか旦那の指輪を呑み込みかけてたんだから」

「まぁ、危ないですね。旦那さんには言ったんですか?」

「そりゃあ、文句の1つも言ったわよ!子供にもしものことがあったらどうするのって!!そしたら……」

「「『そしたら?』」」

「『んっ?ああ』だって!」

「それはぁ旦那さーん、反省してないわねぇ」

「……また繰り返すかも、再犯注意……」

「男の人は、子供に怪我とかの実害が出てからじゃないと本当に変えようとしないって聞きますよ?」

「本当、男ってダメね!いつまでも子供で!!」

「……うちも。……子供が二人居るみたい……」

「じゃあ、うちは子供が四人になっちまうよ!はっはっは!」

「そういえばぁー、うちもぉ子供が夫に似て来ちゃったんだぁ。ちょっとしんぱーい」

「そういえば、魔力アォーラを感じると笑うんだっけ?」

「偶然って話じゃなかったんですか?」

「いーえぇ、ほんとぉよ♪魔力感知はできてるみたいなのぉ」

「……すごい赤ちゃんです。……まさしく魔道士の息子、魔法好きなところがウオタさんそっくり……」

「えぇ、そーなのぉ♥二人ともとっても可愛い笑顔でねぇ~」

「のろけ話ですね。困るようなことがあるとは思えませんが……、むしろ自慢ですか?」

「う~ん、それがねぇ。ナリィ~ちゃん今度はアォーラ、使えるようになったのよねぇ~。それでねぇ~、こ「「「ちょっと待って!」ください」……」え?」

「は?アォーラを使えるようになったって。え?そんなことあるんですか?え?もしかして、魔法まで使うとか?え?」

「……落ち着いてください。……きっと魔力アォーラが強すぎてれたアォーラがさも使まとったように見えただけです。……上級貴族にはたまにそんな子が生まれるとか……」

「それは、末恐ろしい子供だね!」

「違うのよぉー。ナリィーちゃん、魔力アォーラをまとったんじゃーなくってぇ。人にアォーラを流したのよねぇ」

「「「……」」」

「なんだかー、楽しくなっちゃったみたいでぇ。誰にでもアォーラを使っちゃうみたいなのぉ。お客様とかにぃ、そそーしないかぁ心配なのよぉ」


 今日も井戸端会議は静かに終わりを迎える。





第4.50話:ウオタ・T・キューケンの研究



 キューケン家の資料室ではウオタが乱雑に収められた研究資料をひっくり返して調べ物をしていた。


「どこでしたっけ?たしかこの棚に集めてあったような……」


 なかなか見つからないらしく、取り出しては仕舞っていく。


「これはえ~と、『楽しく学ぼう魔力アォーラ学習帳』……違う。『アォーラあなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの』……違う。『あぉーら』……違う。『基礎から学ぶ魔力アォーラ学』……これは暗号強度が高すぎますね……後で確認しますか、保留。『てめぇらのアォーラは何色だー』……これ、見たことないですね。パラパラ。あ、面白そう……。……『アォーラ×アォーラ』……。『アォーラ別性格判断術』……。『マホルテシア・アォーラ噂話』……と、これですね」


 一冊を手に取ると読みふけるウオタ。


「ふふふ、やはりですか。……ふふふふふふ」


 どうやら、目的の物は手に入ったようだ。





第4.75話:赤ん坊とメイド



「坊っちゃん、後生ですから~!後生ですからお止めください~~っ!!」


 ノリノリでクネクネとお芝居をしているメイド(リルフ)の手をお団子みたいなプクプクとした小さなおててが掴んでいる。

 所詮は赤ん坊(ナリカミ)の握力なのでリルフが手を引けば止めてくれるのだが、この辺りはリルフの完全な悪ノリである。


「はぁ~、それにしても魔力アォーラを流されるのが、こ~んなに気持ちいいとは思いませんでした~♪」

「あう、う?」

「はー、極楽極楽。ひゃ、ひゃはは、ちょっとくすぐったいです!」

「きゃう、わぁう♪」


 相手がくすぐったがると、とても喜ぶナリカミちゃんであった。





第4.99話:使用人たちの集い



 リルフから坊っちゃんの魔力流しについて聞いたクシルは、胡散臭うさんくさい者を見る目でリルフを観察していた。


「な、何ですか?その目はー。信頼が感じられません~、し・ん・ら・い・が!」

「そうね。リルフだからね」

「むき~!!クシルつめたいです!!もっと甘やかしてくれてもいいんですよ!!」

「はいはい。そうですね。りるふカワイイヨ(棒)」

「くそ~!おざなりだ~!心がこもってないのです。心が!クシルちゃんの心はどこに行ったー。……あっそうだ!賭けをしましょう!!」

「どうしたんですか?いきなり」

「『坊ちゃんが魔力を使えるかどうか?』賭けましょう!私が勝ったら一ヵ月私のことを甘やかしてくだすぁい~♡」

「なんですか、その条件は?」

「もちろん、クシルが勝ったら私がクシルを全力で甘やかしてああげますからぁ~♪」

「……うぜぇ」

「へ?」

「おっと、変わった咳が出てしまいましたね。ごほごほ(棒)。リルフの寒い冗談に付き合いすぎましたか」

「あれあれぇ。逃げるんですか~。それともぉ焼きもちですかぁ~、一人だけ仲間外れだからってすねないでくださいよぉ」

「はいはいそうねー。一人だけだからねー。……一人だけ?……!!(チラッ)」


サッ


 ここにきて、おどおどと成り行きを見守っていた三人目のメイドに視線が刺さった。

 咄嗟とっさに目をそらしたものの気まずさに冷や汗が止まらない様子だ。


 ここで止めがきた。


「トッコン?」


 説明して。


 言外ごんがいに聞こえてきた同僚ゆうじんの言葉に彼女は観念かんねんした。


 はぁ


 ため息を1つついた彼女は、まず自分に鋭い視線を向けるクシルへ……。……と思ったけど、やっぱり止めて、余計なことを言い出したもう一人の同僚ゆうじんに耳打ちした。


「だから、坊っちゃんがクシルさんにも『マッサージ』してくださる前は話題に出さないようにしましょう、という話だったじゃないですか!なんで話しちゃうんですか!」


 トッコンはこの話が始まった当初から嫌な予感を覚えて、苦い顔をしていたが話がナリカミのことに移ったとたん、やっぱかというあきらめの感情と、なんで話すかなというあきれの感情がごっちゃになった表情をしていた。


 普段の彼女はおどおどして自信なさげな印象の少女だ。

 だが、仲間内では意外とハキハキ、しっかりしているという評価だと自負している。

 要するに内弁慶うちべんけいなのだ。


 そんなトッコンでも、いやここは、だからこそというできかもしれないが、クシルの目を見ると話しだしにくかった。

 

 トッコンは、坊ちゃんLOVE(ラブ)のクシルに『クシルさん一人だけ坊ちゃんからマッサージを受けてないです』なんて言ったら、きっと悲しむんじゃないかと思ったのだった。


 だが、忘れてはならない。ここにはもう一人がいた。空気を読み、気を使って、話題を反らすような繊細さとは無縁の女が……。


「だから、クシル以外、私もトッコンもクミルさんも奥様も旦那様も、坊ちゃまに近しい人間はみんなマッサージ(魔力流し)を受けてますよ?」


じろり


こくこく


 クシルの一睨みを受けて、観念したトッコンが内容を肯定する。


「……トッコンがそういうなら信じるわ……」

「むきー!!何ですかぁその言いぐさはー!私のいう……ってどーしたんですか?元気がないよーですけどぉ」

「……なんでも……ないわよぉ……」


(うわ~、クシルさんちょっと涙声だ~。どどど、ど、どうしよ~)


「そ、そういうリルフさんはこの頃なんだか元気じゃないですか?」

「ふっふっふっ!わかっちゃいますかー♪この頃調子がぁよくってですねー。ヨーレンさんにもお仕事で褒められたんですよー!魔法訓練でぇもぉ『最近、魔法の感知がうまくできていてだいぶ安定してきてますな』なーんていわれちゃったんですぅ」

「……へぇ、めずらしいこともあるものね」


(あ、ちょっと復活してきたのです)


「確かに、最近私も魔法の感知が前よりうまくできてる時があるのです。……あれ?そういえば、坊ちゃんにマッサージしてもらった後のような(ぼそっ)……!!」


 はっとした。まさか。と思ったが、ここ最近を思い出してみる。

 

「……クシルさん、最近クシルさんがみてるときの坊ちゃんの様子はどうですか?」

「え?最近は私、夜の番ばかりだから坊ちゃんはよくお眠りになってらっしゃるわ」

「……そうですか、ではリルフさん、私、この間リルフさんが坊ちゃんに魔力を流されたとき、あまり坊ちゃんに魔力を使わせるとお疲れになるからって注意しましたよね。そのあと、リルフさんと私の順番が入れ替わったので、あとのことはよく把握していないですが……」

「え?はい?ソデスネー。ソンナコトモアッタデショー」


 とても白々しい返事を聞いたことでトッコンの疑念は確信に変わった。


「はぁ、その様子だと私の言ったことは守られていないようですね」

「そこまで聞けば私にもわかったわ。……リルフ、なにか弁解べんかいの言葉はあるかしら?」


 どうやらクシルがマッサージ(アォーラ流し)を受けていない理由が明らかになったようだ。

 友人(リルフ)赤ん坊(ナリカミ)をアォーラの操作で疲れさせた結果、自分(クシル)の時にはおねむだった、と言うのが事の真相らしい。


「え?え?なんのことです?」


 犯人リルフは白を切ることに決めた。


「これは、あれですね」

「この様子じゃあね。あれよね」

「「私刑リンチ」です」よね」

「え?ちょ?まっ?え?……ぎゃあ~!」


あーあーぁーぁー……


ピィーヒョロロロー



 ……今日も平和なメイドたちの昼下がりでした。



◆◇◆◇◆◇



 その夜。


「う~、酷いですぅ~。おしりが、おしりがぁ……。もぉ!お嫁に行けなかったらどうするんですか~」

「大丈夫よ、なるようになるわ」

「もー!またぞんざい~!!」

「あなたたち、いい加減にしなさい」

「「……」」

「よろしい」


 クシル、リルフの二人がメイドがしらアーサーに注意を受け、ようやく今夜のキューケン家使用人ミーティングが始まった。


 この一室には今、キューケン家につかえるほとんどの使用人が集まっていた。


「それでは今夜の議題をヨーレン執事長よりお話しいただきます」


ガタッ


 キューケン家執事長ヨーレンが椅子から立ち上がり、みんなの視線を集めた。


「定例集会を開始します。皆さん、今日もお仕事ご苦労様です。いつのころからかこうして夜に集まって情報交換を行うのが恒例になりましたね。思えば最初は……。ゴホンッ。いえいえこれ以上は長くなりますね。それでは本題に入りましょう。今日は坊ちゃまに関する議題です」


ザワザワ


「坊っちゃんのこと?」

「あれじゃないか?前のトトカルチョに不備があったとか」

「あー、そうだったらいいな。おれ結構負けてるんだよ」

「おめぇーら、そんな事いままでなかっただろ?おれは新しいトトカルチョのお題発表と読んだぜ」

「成る程な。だったらおれは『坊っちゃんがいつ魔力を使えるようになるか』だと思うな」

「馬鹿かお前は!魔力アォーラ感知できるからってそんな魔力操作なんて何年後になると思ってるんだよ」

「そうだぜ、基本トトカルチョはお題から答えまでが近いのしかやらないだろ?」

「何でだ?」

「そりゃ、いくつもお題があるとけ金の計算だとかややこしくなるってんで、お題は1度に1つって決まってんだよ」

「ふーん、じゃ『いつ魔力使えるようになるか』ってのは無いわな」

「そだな」

「じゃあ、『リルフの嬢ちゃんが……』ってのはどうだ……」


ザワザワ


「静かに!!」


ビクッ


「実は坊ちゃまが先日とうとう魔力アォーラをお使いになられたと報告がありました」


ドッガヤガヤ


「う、嘘だろ!!」

「マジかよ!!」

「さすがは天才児!」


「報告者はリルフ……


「なんだよ。リルフの嬢ちゃんかよ。脅かすなよ」

「驚き過ぎて、寿命が縮まった気がするぜ」

「まぁ、リルフちゃんなら、まぁそうゆうことも、なぁ」

「ちょっとー!!みんなしてどーゆー意味ですかー!」

「いやー見間違いな可能性がだな……」

「むっきー!!クシルだけでなく、みんなもなんなんですかー!!愛がっ!愛が感じられ無いですー!!」


……とトッコンですね」


「そうか、ってーことは間違いないのか……」

「さすが坊っちゃんだ。末は賢者か魔導師か……」

「こんな奇跡があるなんて、おれ夢でも見てるのか?そうだといってくれ!」

「……なーんでみなさん、さっきと態度がこーんなに違うですか~(冷ややかな声で)」

「「「「……そりゃ、なぁ……」」」」

「グスン(T^T)」


「ぅおっほん。盛り上がっているところ悪いのですが、話を続けても?」


 そう言って、ヨーレンが微笑ほほえんだ。

 その目は力強い光を宿し、まったく笑っていない。

 使用人たちは怯んで「ど、どうぞ」と異口同音に返事を返した。


「それでは改めて話を続けますが、坊ちゃまの成長は私どもの考えているより早うございます!」


ザワザワ


 そこかしこで納得するような、肯定するような声が聞こえる。


「そこでここは1つ、提案がございます!!」


 しんと静まりかえる、次の言葉をみんなが待っている。


「これより行うのはトトカルチョ!

しかし、これまでにない大規模かつ長期のトトカルチョを提案させていただきたい!」


 一呼吸いれると、気合いの入った声で続ける。


「その名も『ボッチャマー・ジャンボ・トトカルチョ』!!」


ザワザワ


「内容はもちろん坊ちゃまの成長に関連したものとなります。また、原則として他のトトカルチョは禁止です」


ザワザワ

「そりゃないぜー……」

「俺たちの唯一の楽しみを奪うのかー!」

「おれはこれから毎日何を楽しみに生きていけというのか……」


「みんなの気持ちは理解しているつもりです。もちろん、『ボッチャマー・ジャンボ・トトカルチョ』の間にも小規模のトトカルチョは行いましょう。残念ながら規模も小さくなり、回数も少なくなりましょうが……」


ザワザワ


「心配召されるな。無論!皆の不安は心得ています。トトカルチョは私ども使用人の日々の楽しみの一つであるのですから。

 しかし!それでもこのトトカルチョにはそれだけかける(・・・)価値があるのです!!」


 ここにきてヨーレンの声のテンションは最高潮を迎える。


「6億!!!」


 ?

 ?

 ?

 急に数字を叫んだ執事長の言葉にそこかしこで疑問符が浮かぶ。


「『ボッチャマ―・ジャンボ・トトカルチョ』の最高賞金額は6億円です!!」


「おぉ!」「おいおい凄いじゃないか!」「なんてこった、一生遊んで暮らせるぞ!」

 驚きが徐々(じょじょ)に喜びに変わって重なりあう声は雄叫びへと変わっていく。


オオオオオ!!


「どうやら反対意見は出ないようですね」


「イヤ、ちょっと待ってください。そんな大金どこから出るんですか?」


「それは……」


ガチャ


「賞金は僕が出す」


 ヨーレンの言葉をさえぎって答えたのは、当主ウオタ・キューケンだった。


「正確には6億相当の願いをきく。というのが正しいんだが……。ルールに関しては後日、正式に張り出す。

皆、楽しんでくれ!」


オオオオオォォォ……


 夜のお屋敷に使用人たちの歓喜の叫びが響いた。


◆◇◆◇◆◇



「みんな元気よねぇ。もぉ夜も遅いんだからぁ、ちゅーいしないといけないかしらぁ?ねぇ、ナリィちゃん」


 赤ん坊ーーナリカミーーの部屋では母親のそんな呟きが聞こえていた。


 そんな周囲の、期待を込めた喧騒けんそうを知ってか知らずか、母の愛に包まれて眠る赤ん坊。

 ナリカミ・キューケンの明日は神のみぞ知る。



































第5話:手紙



「ふむ、やはりそうなのだな。……これは早急にことを進めるべきか?」


 薄暗い書斎しょさいの執務机の上には封を切られた手紙が、魔術灯まじゅつとうに照らされていた。



お分かりいただけたのだろうか?

この迷走ぶり。

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