始まり終わり
事の始まりは梅雨が明け、初夏の頃。
僕は今走っている。授業でなければ遊びでもない、僕は今追われているのだ。
誰に追われていると言えばソレは誰と例えるのは難しい、かと言ってソレは物でもない。
相手は“怪物”だ。
ただ怪物と言えど人型で身長はおおよそ180cm前後の汚れた服で詳しくわからないが中肉中背、顔の特徴は能面を付けている。
イメージするなら大柄の能面を付けた不審者に僕は今追われているのである。
困った事に走り続けて大凡5分、持久走であれば序の口なのだが相手が相手だ、全力で走り続けて5分だ。
それでも相手はペースを落とさない。向こうがなぜここまで追ってくるのか訳も理由もわからないが為に恐怖心が高まるばかり。
しかしながら僕もなぜ逃げているのか訳も理由も定かではない、事の発端を思い返せばただ帰り道に後ろから“人の喉と肺では到底出せない程の発狂”をしながらこっちへ走ってきたのだ。ただそれだけ、されどもその事があって今に至る。
『話せばわかるのかな』
身体の限界か、ただ落ち着いたのか。
脳裏にそんなことを思い考え、足を止め一呼吸。この一置きで相手との距離が5mから0距離寸前にまで達した。
『さぁまず一声』
僕は後ろに振り返る、そして『どうも』と言う。
はずだった。
視界がフラッシュが焚いたかのように一瞬真っ白になる。後ろを振り向くにも身体に軸があるかの如く回りもしなければ声も出ない。
ただ違和感を感じるんだ、走った時とは違う肺からの痛み。チカチカとボヤける視野を下に向ける。
『あぁ、死ぬのか』
薄々わかっていたが予想外、僕の右胸から黒染みた腕が生えているかのようだ。
見て考えればわかる。生えてなんかない、突き抜けているのだ。
勿論これは相手の腕だ。
やはり相手は怪物だったか、もう終わり。
荒れた一呼吸をして、横須賀水蓮十八の誕生日を迎えられずにして僕は“一度の人生”を終えた。
23時40分前後、横須賀水蓮は友人の家で遊んだ帰り道で出血多量が原因で死んだのである。
ここは江戸川区某所の住宅街
パチンコ屋遊んだ後の散歩道、23時40分前後。俺の矢先には血塗れで倒れた少年と口辺りが血塗れの部下がいる。
「やぁ、久しぶりに会ってみれば凄い事になってんじゃないか」
「…」
「一月ぶりの再会なんだから歓喜の一言くらい欲しいもんだよ“青龍さん”よ」
部下の名は青龍、由来は四神の青龍からだ。
「あーあー、聞こえてますかー?」
「ゔぅ…」
『こりゃもうダメだな』
言葉が通じない。
さようならと私は呟いた。
次の瞬間、瞬きをしてみれば青龍は全身切り刻まれ声も無くして血を噴き死んだ。
まぁ殺したんだけどね。
深夜の住宅街に血塗れに倒れた2人の死体。片手に1人で両手2人を掴んで私は仕事場に向かう事にした。
「果たして、今回は成功するのでしょうかな」
後にこの出来事は横須賀水蓮失踪事件として取り扱われ、事件の真相は今では少年と私しかわからないのである
続




