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漫然と  作者: 藻雲
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遠雷、縫い目、春隣、潮騒

_____________________________


遠雷


          遠く 遠く


            憧れが走った


        遠く 遠く


            雨に紛れた


         遠くの 遠くの


            雷を見た


           遠くへ 遠くへ


         届きたくて


              叫んだ


         遠雷よ 私の衝動よ

_____________________________


縫い目


思い出す縫い目

貴方と貴方の背中を糸で縫う

誰の頬もない 誰の目もない


思い出す縫い目の歪さ

不恰好で悲惨だ

震う指で背中と背中を縫う

そこに私の証明はない。


ただそこに悲惨な縫い跡だけ


私の足跡にもならない 私が一人

_____________________________


春隣《はるとなり》


冬の隅っこに捨てた春

春が凍って早一年

この頃雪と北風ばかり

しかも息も白く凍る


隅っこに捨てた春

僕の帰りを待っている春

暖かい日溜りと

小鳥の囀りと

柔らかい花弁を用意して


今はずっと眠ってる

すーと寝息を立てながら


僕の帰りを待っている

_____________________________


潮騒


寄せては返す波の隨に立った音を

心の機微は聴いた

まるで波と心が一つになったような音

胸の詰まりが泡を立てて溶けるような音

無機質な情を慰めるような音

鼓膜を軽やかにくすぐるような音


その音は歌をくれた

都会の喧騒に歌はない

歌がない私に歌をくれた


潮の騒めきよ


この体に宿る一拍の響きを

忘れることはないだろう


波の隨に立つ音

潮の騒めきよ

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