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New Space Scrolls Ⅱ-名もなき者達の詩  作者: 乃木了一
第一章 帝国領侵攻
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4.開戦

「テラフォードからの貨客船“オールドニュー”号、総重量300トン、着陸針路に入ります。貨物用3番ゲートに誘導します」

管制AIが告げる声に、管制長はよろしい、と応答し管制塔の窓から空を見上げた。しばらくすると9月のうららかな秋晴れの空に小さな点が現れ、徐々に大きくなってくる。(ちくしょう、いい天気だなぁ。こんな日はヨメとガキ連れてピクニックにでも行きてぇところだがなあ・・・・)

ここはアブロリモーゼの中央宇宙港内にある管制塔である。宇宙港は2つあり、一つは惑星アブロリモーゼの静止軌道上に設置され大型の宇宙船を受け入れている。もう一つがこの地上宇宙港で、軌道上の宇宙港との連絡船や大気圏突入可能な500トンまでの小型貨客船が離着陸している。

アブロリモーゼはこの星系内で唯一人が居住する惑星で人口は21億、銀河系全体の中では中規模星系といったところだが、ブランデンブルグ辺境伯領及びラセンナとのハイパー・ワープ航路が設置され、テラフォードとの中継貿易地点として栄えている。先の銀河大戦終了にあたって共和国連合から帝国へと譲渡され帝国直轄領となったため首都に総督府が置かれているが、一般市民の生活は共和国時代と変わらずアブロリモーゼ各地の地方自治体の手に委ねられている。

大戦終結を定めたサン・リミノの和約によってアブロリモーゼは非武装地帯となることが定められたことから、和約の履行を担保するため帝国、テラフォード双方の連絡事務所も設置されている・・・・ところだが、昨年の10月には突如帝国軍戦列艦1,000隻が宙域に侵入し、首都が大混乱に陥ったことはまだ記憶に新しい。幸いテラフォードの速やかな“降伏”によって事件は数日で終息したものの、その間アブロリモーゼのメディアは連日この話でもちきりとなり、人々に遠い戦争の記憶を蘇らせたものだった。

(あんときは大変だったなぁ)管制長は大きく背伸びをし、欠伸をしながら思い出している。ちょうどその日彼は非番だったにもかかわらず急遽呼び出され、民間船の誘導等の対応に追われたのだった。(もう二度と、あんなことが起きなきゃいいが・・・・)


そんな彼のささやかな願いは管制オペレーターの切迫した声とけたたましい警告音であっという間に崩れ去った。

「管制長っ! 上空宙域に武装船が多数出現!」

「なに!? また帝国か!?」

「いや・・・・、ああっ、警備艦隊が攻撃を受けています! テラフォードの艦隊です!」

「なんだって・・・・」愕然とする管制長に別のオペレーターの叫び声が追い打ちをかける。

「なんだ、あいつは!? こっちに向かってくるぞ!」

管制長が振り返ると、少し前に着陸してランウェイを滑走していたはずの小型客船が向きを変え、誘導ラインを外れて管制塔に突進してくる。その車輪に荷役用ロボットが踏み潰され、地上作業員達が逃げ惑うのがみえる。

「うわぁぁ! ぶつかるぞ!」

管制室内のオペレーター達が立ち上がり、我先に出口に向かって殺到する。

みるまに客船の船首が窓一杯に広がり、古代の魔物のような影が管制室内を覆った。ドスン、鈍い衝撃音がして尻もちをついた管制長は大きく目を見開いて喘ぐ。

「なんだ・・・・? 何が起きているんだ?」



「突入! 管制室を制圧しろ!」

マイアー少佐がきびきびと命令を下すと、管制塔に頭から衝突した客船“フルハウス”号の船首が小型爆弾で爆破され、全身黒づくめの男たちが銃を構えて飛び出していく。第442遠征連隊戦闘団第一大隊A中隊の隊員達である。少佐の背後のモニターではラムズフェルト大統領がまだ絶叫している。

「自由のために、民主主義のために立ち上がろうではないか!」


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