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New Space Scrolls Ⅱ-名もなき者達の詩  作者: 乃木了一
第四章 コルレンツ
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8.覚悟

1時間後、シューマン男爵とクリーガー、ディートマー、エルフリーデ、ハンスの4人は首都フルラッハ市街地の郊外にあるコルレンツ防衛司令部にいた。ファロン大佐が現状を説明する。

「1時間半ほど前、フォンテイン星系と我が星系をつなぐワープ・ポイント付近を遊弋中の我が方哨戒艦が不審な小型船を発見いたしました。同船はこちらの呼びかけに応えることなく、再びワープによって消えたそうにございます。状況からみて、オクシタンの偵察艦に間違いはないかと」

シューマンは頷いた。「防衛艦隊の態勢はどうか?」

「既にワープ・ポイント付近にはパッシブレーダーを30基ほど配置してあります。敵の艦隊が出現すればすぐに察知できます。防衛艦隊本隊は軌道上の宇宙港にあり、先程要員の休暇許可を全て取り消し、第二警戒態勢を発令しました。敵が現れ次第、迎撃態勢に移ります」

「いつ、敵は攻めてくるであろうな?」

「はっ、フォンテイン、クローゼの例では、敵は偵察艦をまず先行させ、その後一両日中に本隊が星系に侵入を開始しております。そうした例からいきますと、早ければ明日、明後日にも敵艦隊が侵入してくるかと」

「フォンテインの状況はどうか?」

その問いにファロンはうなだれた。

「2時間ほど前、フォンテイン防衛部隊との連絡が途絶えました。おそらく降伏、あるいは壊滅したかと」

「そうか・・・・」そこでシューマンはちらっと横目でクリーガーを見たあと、言葉を継いだ。

「ファロン司令官、もう一度、防衛計画を確認しておきたい。こちらの客人にも説明してくれるか」

「はっ。敵はフォンテイン攻略に降下猟兵2個師団を投入しております。おそらくクローゼ攻略にも同等、つまり2個師団を投入するつもりだと考えております。フォンテインの攻略が完了した以上、ここフルラッハにも最大2個師団、約2万人の兵力を投入が可能と思われます」そしてファロンは部下に指示して惑星フルラッハの地図をスクリーンに映し出す。地図上のあるポイントが赤く点滅している。首都から約50km北に広がっている平野だ。

「フォンテインの例からみましても、敵はなるべく短時間で星系を攻略するため、まっすぐにこの首都フルラッハを狙ってくるものと思われます。首都攻略のため敵がまず拠点を置く場所として候補はいくつかございますが、降下猟兵部隊及び支援部隊の展開に最も利便性があり、なおかつ降下直後に奇襲を受けにくい地理的条件、また攻略にかける時間的制約を考えますと、おそらくここが最も可能性の高い降下地点と思われます」ここから、と言ってファロンが手を振ると画面上に矢印が現れる。

「おそらく敵はこのルートをとってここフルラッハに進軍してくるでしょう」

「どう迎え撃つ?」

男爵の問いにファロンは頭を振る。

「彼我の兵力差と制空権を敵に奪われることを前提にいたしますと、開豁地で敵を迎え撃つことは得策ではありません。従ってまずは敵をここフルラッハの市街地に誘い込みます。市街戦で敵の消耗を誘います」

「それから?」

「敵が市街戦に兵力を投入している間に、ここ」ファロンは郊外の一点を示す。

「市外のこの丘陵地に第二防衛戦線を構築しておきます。ここに第一大隊、つまりエルフリーデ少佐の部隊を中心とした約1,000名をあらかじめ配置しておきます。市街戦である程度敵を削った後、第一大隊の援護を受けながら本隊は最終防衛拠点、ここに撤退します」

ファロン大佐が示したのはメルキューネ山脈の麓だ。

「この山脈の地下に最終防衛拠点として大型シェルターを設置しております。山脈の地下ですから軌道上の敵艦隊からの艦砲射撃を無力化でき、さらに中には食料や燃料、武器・弾薬を備蓄しておりますので、2、3ヶ月、いや半年は籠城が可能です」

そこでシューマンはクリーガーの方を向き直った。

「以上が、我々の防衛計画だが、准将、君の意見を聞かせてもらえるかな?」

クリーガーは腕組みをし、顎をつまみながら考え込んでいる。

「先程市街戦にて敵兵力を削るとおっしゃいましたが、一般の、首都の住民はどうされるのですか?」

シューマンが目を遣るとファロンが頷いた。

「既にフルラッハの住民には疎開命令を出しております。現時点で約50%、明日中には70%の住民がいくつかの地方都市に向け出発するよう手はずを整えております。敵の狙いはあくまでこの首都フルラッハと防衛部隊、そして」ファロンはちらりとシューマンに目をやる。

「最大の狙いはシューマン閣下でしょうから、我々がここで抵抗を続けている限り、疎開地の領民に被害が及ぶことはありますまい」

「君の家族はどうだ、ファロン大佐?」シューマンの問いにファロンは頭を下げる。

「お気遣いいただき、ありがとうございます。家内と子供たちは明後日、最終便でここを発ち、ボアロンに向かうことにしております。妻の実家がそこにありますので」

「ちょっと待ってください」ディートマーが口を挟んだ。

「これではエルは・・・・第一大隊はどうやって撤退するのですか!? 敵2個師団相手の殿しんがりなんて・・・・これでは全滅しろと言っているようなものです!」

「いいのよ、ディート」エルフリーデが静かに言った。

「私が志願したの。そして第一大隊のみんなも。我が第一大隊はコルレンツ防衛部隊の中でも最古参の兵士達、精鋭部隊よ。私達以外にこの難しい任務を成し遂げられる部隊はいないわ」

「そんな・・・・」ディートマーは絶句した。


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