表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
New Space Scrolls Ⅱ-名もなき者達の詩  作者: 乃木了一
第三章 まだ見ぬ世界へ
PR
22/67

7.モートン沖会戦-Tally-Ho!

帝国艦隊の上方と下方を二手に分かれて大きく迂回した攻撃機隊A中隊とG中隊、計400機は敵艦隊中央部隊の後方で再び合流していた。A中隊隊長機の後部座席で、攻撃機隊の戦術指揮官アキノ大尉は200機の無人攻撃機SA-61Uを自らの指揮下に移す。はるか前方に敵フリゲート30隻のメインエンジンの光がみえる。その両側を固めていたコルベット部隊は前進し、ホフマンの軽巡部隊と交戦中だ。

「ホフマンのおっさん、頑張ってんな」

前部座席のリーマンの声にアキノも頷いた。

「ああ、予定通りだ」

戦術パネルを操作しながらアキノは通信を攻撃機隊の全隊員向けに切り替える。今、彼らの戦術パネルにもアキノのものと同じく敵フリゲート部隊の拡大図が映っているはずだ。アキノがパネルの1点を指で叩くと、敵部隊の1艦が赤く点滅する。

「みんな、敵通信の傍受結果からみて、通信線が集中しているこいつがおそらく敵の旗艦だ。帝国軍のC&Cシステム上、こいつがいなくなれば敵は烏合の衆と化す。まずはこいつに集中してくれ」

「コピー」「アイ・サー」隊員たちから異口同音に返事が返ってくる。

「まあ、全部沈めちまってもいいんだろ?」

リーマンののんびりした声にアキノはふふ、と笑った。

「幕僚長は、できればなるべく多く敵艦を降伏させ、鹵獲艦として再利用したいそうだ」

「・・・・貧乏人はつらいねぇ」



「さて、みんな。始めるぞ」

アキノが戦術パネルを操作すると、200機の無人機が縦10×横20の長方形の陣形を組み、急加速を始めた。敵はこちらがどういう部隊かとまどっているようで、殆ど動きがない。

「敵艦隊までの距離3光秒、・・・・2・・・・1・・・・ミサイル発射!」

SA-61U無人機達は敵の対空レーザー砲の射程ぎりぎりまで接近すると、一斉に対レーダーミサイル(ARM)を発射した。ARMは敵対空砲のレーダー波を探知してその発信源に向かっていくよう設計されている。敵の対空砲を潰すのが目的だ。攻撃機は全て翼下に6発のミサイルを装備しているため、1,200発のARMが敵艦隊を襲う。

1、2、3、アキノは敵フリゲート部隊のともすメインエンジンの灯を睨みながら心の中で無意識に数を数えている。・・・・ん? 外れたか? 一瞬アキノの頭に悪い想像がよぎったその直後、警告音が鳴り響き戦術パネルの上で多数の赤点が明滅し始めた。

「敵艦隊にARM命中! ・・・・敵対空砲70%以上の破壊を確認」予想していた結果にもかかわらず、思わずアキノの声が裏返った。



今や敵分艦隊旗艦をテラフォードの攻撃機隊から守る盾は存在しない。全パイロットのヘルメットから攻撃機隊総隊長リーマンの声が響く。

「ようし、十分だ。A中隊、行くぞ」

間髪を入れず、副隊長ソラレスの声が続く。

「G中隊、アタシについてこい! A中隊の連中に後れをとるなよ」

攻撃機隊は2つに分かれ、各隊有人機と無人機併せて100機の攻撃機からなる光の筋が敵艦隊に突入していく。


アキノは激しいGに耐えながら必死に戦術パネルに目を凝らしている。敵フリゲート部隊を映したパネルの中央、赤く明滅する点が見る間に画面の中で大きくなっていく。その赤点を囲んだ四角がオレンジ色から赤に変わり、警告音が鳴り響く。

「敵旗艦、ロックオン。ダグ、今だ!」

「タリィィィィィホゥ!!」

リーマンが奇声をあげながら操縦桿のボタンを押すと、A中隊1番機翼下の短距離ASSM“ピルム”が次々と両翼から飛び立っていった。



全長500m、高さ最大50mの巨大な壁を縫うように、長さ20mあまりの小さな攻撃機が飛び回っている。まるで虫のようなそれらの攻撃機が飛び去るたびに、壁から爆発が起きる。わずかに残った対空砲があてもなくぐるぐる旋回している、とみる間にミサイルがそれを直撃し爆散する。旗艦を失った敵中央部隊はなすすべもなく叩かれるままになっていた。

わずか30分あまりで帝国艦隊からは抵抗らしい抵抗もみられなくなり、全機のパイロット宛てにアキノの声で通信が入る。

「TACOM-1から全機へ。敵旗艦を含むフリゲート14隻の撃破を確認。他の艦は全て降伏ないし逃亡中。攻撃停止。帰投するぞ」

そういうと、リーマン機は敵艦隊上空でマリオ・バッジョ顔負けの華麗なループターンをきめた。



その頃、ウォラフソンは旗艦キリュウの艦橋から明滅する多数の明かりを眺めていた。敵のコルベット艦達がそれぞれの艦橋から降伏の合図を送っているのである。オペレーターが報告する。

「敵フリゲート14隻、コルベット21隻撃沈。フリゲート5隻が逃走しましたが、残りは降伏の意思を示しています」

「こちらの損害は?」

「軽巡2隻沈没。2隻小破。攻撃機隊は無人機15機が未帰還、有人機は全機無事帰還しました。以上です」

「そうか。生存者の救出と降伏した敵艦の掌握を急げ。みんなよくやった」

(後は本隊か)スクリーンに映し出された戦域図を見上げる。不意に思いがけずホアンの顔が浮かんだ。ウォラフソンはスクリーンに映った戦域図を凝視したまま指示を出す。

「偵察中隊に連絡。障害はなくなった。予定通り、敵後方に進出せよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ