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New Space Scrolls Ⅱ-名もなき者達の詩  作者: 乃木了一
第三章 まだ見ぬ世界へ
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6.モートン沖会戦-初陣

ドライグ級空母群の艦側のハッチが翼を広げるように一斉に開き、中から宇宙攻撃機SA-61を乗せたカタパルトがせり出してくる。と同時に、右舷側のカタパルト10基が先端を上方に、左舷側のカタパルトは下方に45度まで回転した。

「全機、発進!」

リーマンの声とともに全機の双発スラスターが点火、次の瞬間400機が一斉に飛び出した。リーマン率いるAエンジェル中隊200機は天頂方向に、ソラレス率いるGグローリー中隊は天底方向に真っすぐ向かっていく。

各中隊は有人攻撃機(SA-61)40機に無人攻撃機(SA-61U)160機で構成されている。有人機は複座式で、前部座席にパイロット、後部座席には戦術航法士が搭乗している。戦術航法士の役割はパイロットに移動ルートを指示するだけでなく、各機に割り当てられた4機の無人僚機を操作することである。無人機のAIにはあらかじめ何十種類もの機動パターンがインストールされており、航法士がそれを選択することで自動的に有人機や他の無人機との編隊行動を行うことができる。無人機の機動は有人機に比べて細かな融通は利かないとはいえ、戦闘に耐えられるパイロットが圧倒的に足りない現状では仕方のない選択でもあった。



ウォラフソン分艦隊は方陣を組んだ空母部隊を中心に、左右では各10隻の軽巡が扇を開くように艦首を外側に向け全体として半円形の陣を敷いている。これに対して帝国軍の左翼分艦隊はフリゲート部隊を頂点に全体としてゆるやかな山形の隊形をとっている。帝国軍はフリゲートの主砲射程(約2光秒)外ぎりぎりのところまで接近すると一旦停止した。帝国軍からみれば「非戦闘艦」にすぎない“輸送艦”が前面に出てきたことにやや躊躇する様子であったが、次の瞬間。

「敵艦隊、ミサイルを一斉発射。総数1,600」

旗艦ヒリュウの艦橋に戦術AIの声が無機質に響く。帝国軍の “アドミラル・キースリング”級大型フリゲートは20門の対艦ミサイル(ASSM)発射口を装備している。ファルケ級コルベットは4門だ。ミサイル1,600発ということは、全艦が各発射口につき2発を連続発射したということだ。

「対空射撃開始。撃ち漏らすなよ」

約40秒後、ウォラフソン分艦隊に殺到したミサイルは全て対空レーザー砲に撃ち落されていた。ドライグ級軽空母は主砲を積まない分防御力に重点を置いており、各艦30基の対空レーザー砲を搭載している。同じく防御力重視のナイル級軽巡洋艦は20基だ。合計1,000基の対空砲にとって、数の上では1,600発のミサイル迎撃はそれほど難しいことではないようにみえるが、それも高度にネットワーク化されたC&Cシステムがあってこそだ。艦隊全体で各ミサイルの軌道を追跡し最適の位置にある対空レーザー砲を迎撃に割り当てたことで、1,000基の対空砲を無駄な重複もなく使用できている。

「よしよし」

期待通りの成果にウォラフソンは思わずにんまりと笑い、続けて命令を発する。

「今後はこちらの番だ。ブラッド、前進しろ」

「アイ、サー」

ホフマン率いる軽巡隊は両翼で横一列に隊形を組みなおし、速度を上げて前進し始めた。狙いは敵両翼のコルベット部隊だ。

「ASSM発射。全門撃ち尽くせ」

左右両翼にそれぞれ25隻ずつ配置された敵コルベットに対し、軽巡部隊は各艦10門のミサイル発射口からそれぞれ5発のASSMを連続発射、片翼につき計500発のミサイルが飛んでいく。帝国軍のコルベットは各艦4基計100基の対空レーザー砲で応戦するが、こちらは対空防御を個艦毎の判断で行っており、1発のミサイルに対し複数の艦の対空砲が対応するなどの無駄が多く落としきれない。その結果、対空防御網を潜り抜けたミサイルが次々とコルベットに直撃する。

追いうちをかけるように距離2光秒以内に接近した軽巡群から満を持した主砲が放たれる。ナイル級軽巡や帝国軍フリゲートに搭載されている主砲は“荷電粒子砲200”と呼ばれる規格のもので、その名のとおり1基の長さが約200mの荷電粒子砲である。荷電粒子砲は荷電した重金属の粒子を直線状の加速器内で加速してビーム状に打ち出す兵器である。最後部の荷電粒子発生装置から砲口までの距離が長いほど、つまりその粒子を引っ張る磁場(加速器)の長さが長くなるほど荷電粒子は高速化し減衰(射程限界)までの距離が長くなり、同距離であれば1基あたりの威力が増す。帝国軍のフリゲートやナイル級軽巡が主砲として装備している“荷電粒子砲200”は射程が2光秒(約60万km)である。他方、帝国軍戦列艦が持つ主砲“荷電粒子砲300”は1基の長さが約300m、射程も3光秒(約90万km)まで届く。こうした主砲の構造から、巡洋艦以上の軍艦は全長の約半分を主砲のために使用している。

一方、帝国軍のコルベット以下の小型艦艇には荷電粒子砲を積むだけの長さがないため、砲塔式のレーザー砲を主砲として積んでいる。この主砲用レーザー砲はこの時代の技術をもっても射程が最大で1光秒(約30万km)程度しかない。対空用のレーザー砲はさらに射程が短く0.5光秒程度である。こうした小型艦艇にはビーム砲を防ぐシールド発生装置も装備されていないため、ホフマン率いる軽巡部隊は帝国コルベット部隊を容易にアウトレンジすることができた。

両翼で被害が拡大していくのに対し、帝国側には中央の大型フリゲート部隊でホフマンの軽巡隊に対応する選択肢もあっただろうが、テラフォード艦隊中央の大型艦部隊の存在が気になっているのか、代わりにコルベット部隊を突撃させることに決めたようだ。数で押し切る心積もりだろう。

帝国艦隊の両翼が急速前進し、山形だった陣形がV形になる。そのまま双方の両翼が1光秒の距離で激しい混戦状態へと移行したその時。帝国艦隊中央のフリゲート部隊の更に後方に無数の光点が現れた。


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