6話 スカウト
先日の体験入部で俺は無事、アーチェリー部に内定した。後は本入部の書類を渡すだけ。入部は時間の問題。ひとまず俺はアーチェリー部員として活動するんだけど、先輩からミッションを任された。
それは、部員集め。
こうして下校時間を過ぎても校門で人を待っているのもそのため。ターゲットを待ってる。
芝田先輩は「いいかあおのっち、アーチェリー部が直面している一番の問題が部員数だ」と、言っていた。明日地球に隕石が落ちてきてもポジティブそうなあの人にしては、わりと深刻そうな感じだった。
でも、本当か? だってこないだの体験入部を見た感じ、黙っていても人が来そうじゃん。
うちの野球部とかに比べれば大分余裕そうなんだけどな。ただ、俺も言われたらからには・・・来た、ターゲットだ。
「お疲れ白花」
「・・・」
「おい無視かよ~! 弦士ってば!」
あれ、俺今ナンパしてる? スカウトってこんな感じ? だとしたら俺、向いてるかもな。
「あのね青野君、僕は運動部には入らないよ?」
「でも帰るってことは、茶道部にも行かないんだろ?」
「僕が行ってたのは生け花部だけどね」
「そ、それも結局入らないのか?」
「お父さんに反対された。運動部に入れって」
「じゃあもうアーチェリー部に入るしかなくね?」
「・・・僕、帰ったらダメかい?」
「良いけど、明日も誘うぜ?」
「・・・1回体験したら、朝も! 昼も! 帰りも! 僕を勧誘しないって約束する?」
「お、おう。もちろん」
白花のやつ、やっぱり怒ってたんだな。でも、来てくれるんだ。
「っておい、なんで学校戻るんだよ」
「なんでって? アーチェリー部の体験に連れて行くんでしょ?」
「アーチェリー部の練習場──射場はさ、学校にないんだ」
「・・・もしかして歩くの?」
「歩くつってもあそこまでだぜ?」
参音高校から見える廃校を指さした。不安だった白花の顔はほっとしたものの、目を細めている。
「歩いて3分。坂道だけど近いだろ?」
「ダメだよそんな不動産屋みたいなこと言っても」
「あ~。ほんとは7分くらいかかる」
「僕の足なら15分かも」
もしかして白花は運動が苦手?
「・・・がんばるよ。どうせ今日だけだし」
そう言っていた白花だが俺よりも早歩きで、射場を目指した。
青野くんみたいな友人、リアルでいたらどうなんでしょうね笑