小春日真守(こはるびまもり)
真夜さんと一緒にタクシーに乗り15分程走った所にその屋敷はあった。
凄く昔からあるような古風な作りの大豪邸。
門の前には階段がありその前で召使いさんらしき着物の女性が2人立っていた。
「みっちゃん、さっちゃんお久ーっ」
「真夜様お久しゅうございます。御荷物をお預かり致しますね。」
「ありがとう。ばあちゃんいる?」
「居ますが、そちらのぼっちゃんは屋敷に入れるなとの申し付けです。」
「やっぱりばあちゃんはお見通しかーっ」
「門前払いですね」
悔しいがホッとしてる自分がいた。
「じゃあ私が先に入って話つけてくるから悠河くんはちょっと待ってて」
「は、はいっ」
そう言うと真夜さんは走って階段を登り屋敷へと入って行った。
30分程待っただろうか、門から真夜さんが姿を現して両手で大きな丸を作る。
どうやらOKらしい。
僕は屋敷へと入った。
「いやあ、相変わらずばあちゃん頑固だからすごく待たせちゃったねーっ」
「いえ、大丈夫です。」
僕はしんぞうがバクバクで今にも飛び出してしまうのではと思うほどに緊張していた。
屋敷の奥の部屋で襖の前に先ほどの召使いの方達が待っていた。
襖を開けてもらうと広い座敷にこちらを向いて老婆が座っていた。
目つきが鋭く今にも殺されてしまいそうなそんな感じを思わせる雰囲気を漂わせている。
「アンタが真昼の選んだ男かい?どこの馬の骨とも知らないやつに真昼はやれません。今すぐお帰り!」
強い口調の老婆と僕の間に真夜さんが割って入る。
「まあまあばあちゃん、とりあえず話は聞く約束でしょ?さあ悠河くんもコッチにきて座って。」
真夜さんに誘われるまま、座敷に用意された座布団に座る。
「あの…真昼さんには許嫁がいると聞きました。でも真昼さんは僕を選んでくれた。僕もその気持ちに応えたいんです。」
「いっちょまえに…アンタの血じゃ小春日家に未来はない!断言できるねっ!アンタには何があるってんだい?」
「僕は何も持ってないかもしれない。でも…でも、真昼さんを愛してます。」
僕は何を言っているんだ?
「言ったね?言質貰ったよ!あんたのその言葉が聞きたかったのさ。許嫁の件はこのばばあがなんとかしとくさね」
そう言うとおばあさんは今までの厳しい顔からニッコリとした笑顔に変わった。
「あんたならあのじゃじゃ馬娘を任せられるかもねぇ。頼んだよ?」
「はいっ!」
屋敷を出て階段を降りながら、
「ばあちゃん怖かったろ?まさか認められるとは思わなかったけど、よくやったねっ」
そう言うとまた真夜さんは僕を強く抱きしめた。
「く…苦しいです」
「さあタクシーは呼んでおいたから、今日はもうお帰り」
「はい。今日はありがとうございました。」
「いいってことよ」
僕はタクシーに乗ると真っ直ぐ家に向かった。