プロローグ
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない」
聞き飽きた台詞が耳に入る。
目を開くと、見慣れた大層なひげを蓄えた男が視界に映った。
「 仕方のない奴だな。 お前にもう一度機会を与えよう。再びこのようなことが起こらぬよう儂は祈っておる」
既にこのようなことが四桁を超える回数は起こっている為、祈りの効果は薄いようである。いや、本当に祈りを捧げているのかすら疑わしい━━。
まあそんなことはもうどうでもいいことだ。
伝説の勇者「ログマ」の血を引く勇者として生を受け、精霊の加護かはたまた悪魔の呪いか定かではないが死なない身体を持って生まれた私は王の命令で魔王討伐を任された。
しかしモンスターは凶悪にして強大。それに加えて魔王への忠義にも厚く、勝てぬと判断するや否や「魔王様万歳!」と自爆魔法で特攻を仕掛けてくる奴らも少なくない。
対象に抱き着き相手の魔力ともども魔力暴発を起こさせる禁断魔法。爆発の間際、目が点になることからこれを「メガテン」と私は呼んでいる。
そんな奴らが相手では討伐に名乗り出てくれる仲間も集まらない。故に私は単身で魔王討伐に乗り出す他無かった。
王から渡されたのは300ゴールド。やくそうですら5個しか買えない程のはした金を握りしめ、始まりの町を出てスライムに「メガテン」を喰らい、有り金が尽きた最初の死から私の冒険は始まった。
あれから十余年。数多の死を繰り返し、遂にここまでやってきた。
そう、この魔王城まで!!