ドントロール
赤黒く染まる空には暗雲が広がり雷鳴を轟かせる。
風は痛いほどに強く吹き荒れ、木々は剥かれ大地すらも枯れている。
生物の生存を許さない環境。そんな場所「魔界」に私は足を踏み入れていた。
勇者として魔王討伐に乗り出して十余年。当時15歳であった私も三十路にまで手が届こうかという齢にまで達している。数多の死を繰り返し、それでもなお歩みを止めなかったのは私が勇者であるがゆえ。
世界を渡り歩き、遂にこの魔王城まで辿り着いた。あとはもう魔王を倒すだけ!
年甲斐もなく意気揚々と私は単身魔王城に向けて駆け出した。
終わりの見えなかった冒険に終着地が見えた私の足取りは軽かった。
しかし、そんな私の歩みを止めさせてしまう程の脅威が城門に立ちはだかっていた。
流石は魔王城。門番のモンスターも並ではない。
大木のような棍棒を軽々と肩に担ぎ、優に3メートルは越える肥満体に見える巨躯は筋肉に覆われている。
トロル種の中でも非常に戦闘力の高い「ドントロール」だ。
奴らの怪力は脅威。棍棒を防御しようものなら防御の上から圧殺され、体力を削れば我を失いその場にいるもの全て皆殺しにする。
できることならば関わりたくないモンスターである。
だが、私は勇者。それも十年以上にわたり冒険を続けてきた熟練勇者だ。
例え相手が一撃必殺の怪力を持ったモンスターであろうとも戦う他はない。
殺されることによって学んだ私の経験値を舐めないでもらいたい!
まずは奴に私を視認させる。
「!」
やはり、この距離では襲ってはこない。
一般的にモンスターは非常に好戦的である。勇者の姿を見れば親の仇の様に追い掛けてくる。しかし今回の様に目的を持っているモンスターは別である。恐らくあの「ドントロール」は門番としての役割を担っている。その場合、奴は門番として門から離れることはない。脳みそまで筋肉でできていそうなトロルであってもだ。
しかし門に近づこうものなら嬉々として私を殴殺するだろう。
だから、近づかない。
魔法も武器も届かないこの距離で奴を倒す!




