プロローグ
「この世はマナで満ちている。マナは存在する」
2000年代初頭、そんな論文が発表された。
地球上にはマナと呼ばれる不可視の物質が存在しており、それが空を飛ぶ飛行機の揚力、心霊現象ですらマナで説明がつくという。
もちろんこんな荒唐無稽な話、誰も信じるわけなくこのまま埋もれていくものと思われていた。
そんな論文に興味を持ったのが日本のN大学の一人の教授。
論文を読んでマナを可視化したり物質化できたら面白そうってな軽いノリで研究を始め、霊能力者や超能力者の力を借りつつ20年ほどでやり遂げてしまった。
その後富士山近辺にマナ総合研究所を設立。
世界中から技術を学んだり、研究したいという者が大勢集まった。
ではなんで富士山近郊なのかというと、なんでもマナが豊富で都市部からも離れており色々と都合の良い場所だったのが理由だそうだ。
そんなマナ研究所も50周年を迎える。
自己紹介が遅れたが俺の名前は七瀬 真奈人。
研究所で働く所員の一人だ。
両親もこの研究所の所員で英才教育の賜物か気付いたらここで働いてた。
まぁ、それ以外にも理由はあるんだけどもそれはまた今度。
今日は50年の節目になんとか間に合わせたマナ技術を用いた核融合炉の初試運転の日。
国や各国のお偉いさんを呼んで式典を行った後、所長立会いの下に総理が始動ボタンを押した。
それを皮切りに炉に火が入り無事に起動完了。
アメリカ大陸にある北の2号機と南の3号機、オーストラリアやユーラシアにある5か所の融合炉も同様に稼働を開始したとの連絡があった。
俺はというと所員の列に参列しつつその連絡を受け安堵し、「このまま滞りなく終えてくれるといいんだが・・・」と内心思っていた。
式典もひと段落終え、皆が会食で談笑してそろそろお開きという段階でそれは起きた。
「緊急警報発令!緊急警報発令!融合炉の温度が急激に上昇しています。関係者各位はマニュアルに・・・」
意味が分からなかった。
しかし、思考している場合じゃない。
緊急時の炉の制御担当は俺だ。
制御室に入るとそこには一人の研究員の姿があった。
数か月前に入った新人の外国人研究員だ。
新人研修を終えた後、強い希望もあって融合炉開発チームに入ってきたんだ。
それがなんでここに?と、思いつつ。
「何してるんだ?早く避難を..」
と言いかけた途端乾いた破裂音が二度した。
その刹那体から力が抜け倒れ込む。
状況を確認しようとよく見ると床に血が広がっていく。
どうやら撃たれたようだ。撃たれた箇所が熱い・・
「なんっで・・・?」
目前の研究員が笑いながら言う。
「我が国の炉が動いてしまえば日本の研究所は不要!」
「試運転とは言え稼働する、この日を待っていた!」
「我が国の重鎮も来ている。決行するなら今日だと決めてたんだ!!」
・・・何を言ってるんだ?
「お前・・・ここの炉が消えたら各地の炉も停止するって仕様・・忘れたのか?」
「え・・・?何を言っている・・・?」
「今回の・・試運転する前にも教えただろ・・・?各国との取り決めで起動、制御、停止は全てここでやるんだよ・・って」
「まさかっ!じゃあ私のやったことは?!」
「完全に無意味・・だ」
「嘘だ!今更そんなことっ 嘘に決まっている!!」
(嘘だと言いたいのはこっち)
「そうだ・・嘘だ!嘘を言って惑わして暴走を止める気だなっ!!」
「祖国に帰れば私は英雄なんだ!騙されるか!!」
と叫んで奴は制御室から出てった。
「・・・・・」
マジかよ・・・
そんなことある?
しかしまぁ、思った以上に深手だったようで全っ然動けやしねぇ・・・
加えて制御パネルとかめちゃくちゃにされてらぁ・・・なくても制御はできるけど動けねぇからこりゃ無理だ。
眼前の炉は完全に暴走していて、あと数分もすれば大規模な爆発を起こすだろう。
とりあえず父さんと母さん無事に逃げられたかな・・・大丈夫だよな?
皆ごめんなぁ・・
暴走を知らせる警報が鳴る中、俺は意識を失った。




