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#11

 けど何とかするにしても情報が足りない。

 だから私はイサミの戦いを観察しながら、黒騎士の正体を見極めようとした。


 この世界の魔王達はソロモン72柱の悪魔に由来する存在だと私は考えている。

 前回倒した魔王ダンタリオンはその名の通り、他者の姿を模倣する知略型の魔王だったし。

 なら、あの黒い鎧の騎士も正体がわかれば、そこから打開策が見いだせるかもしれない。


 けど、あれの正体は……なんだろう?


 ソロモンの悪魔の中で騎士と呼ばれてるのはフルカスたけ。

 でもフルカスは確か青白い騎士と称されていた気がするし確か老人のイメージなはず。

 そんな伝説のビジュアルと、眼前の完全武装した騎士の姿はイメージが合わない。

 そもそもフルカスの権能はどちらかというと天文学とか占星術とかの文系よりだったはずだから……たぶんあれはフルカスじゃない。


 なら他は? 思い出せ、私!


 ……騎乗している悪魔といえば……ベリト?

 でもあれは赤い衣装に赤い馬だったはず。

 召喚者の質問に答えるけど、嘘をつく……そんな権能は今の状況とは無関係に見える。

 ならあれはベリトでもない?


 黒騎士……黒をイメージカラーにしている、悪魔。馬。

 ……エリゴール!

 黒い馬に乗り、槍を持ち、未来を見据えた戦争を司る悪魔!



 そうか、あれが戦略に長けたエリゴールなら。

 単体攻撃しかできないイサミが、黒騎士に挑む前に先んじて取り巻きを倒しにかかると予想しているのは当然だ。

 そしてあえて自身が前に出ず、軍勢であるヘルハウンドを指揮して獲物(イサミ)を集団で狩っている可能性は十分に考えられる。


 そしてイサミの方は……たぶん目の前のヘルハウンドに集中していて状況が読めてない。

 つまり、エリゴールの策に嵌まっているってことだ。

 なら、この状況を崩すには……。


「くそがっ!……アレを使わな、あかんのか!?」


 さらに手傷を負ったイサミが忌々しげに毒づく声が聞こえる。

 そう、私が最初に考えた現状を打開する方法は……「アレ」。

 つまりスペクタクルズで見たイサミのステータスに記されていたチート能力、「装着」だ!


 でもイサミは私の方をチラリと見て眉をしかめると、そのまま大剣を構え直してヘルハウンドの群れに向き直った。

 あれ?使わないの?


 イサミの様子は出し惜しみしているというよりも……なにか使えない理由があるように見えた。

 この手の能力は強力だけど反動やら代償が伴うというのがお約束であることが多い。


 私を見て思いとどまった……ってことは、もしかするとイサミの能力は同行者の命を吸ったりする系!?

 「装着」っていう名称とはちょっとそぐわない気もするけど……。


 けどイサミがチート(自力)で状況を打開しないなら、私がなんとかしないと……。


 勇者とは言えイサミの根っこはヤンキー高校生だ。

 ヤンキー同士の喧嘩なら雑魚を先に倒してから手強い相手と戦うって言うのはおそらく鉄板の戦術なんだと思う。

 けどエリゴールにその動きを読まれている状況では、その判断が裏目に出ている。

 なら、私がすべきアドバイスは1つだ!


「イサミ、ヘルハウンドは無視して、エリゴールを!」

「はぁ!?エリゴ……って何やねん!」

「黒騎士!そいつがヘルハウンドを指揮してる!それにさっきから槍でヘルハウンドを守ってるよ!」

「なんやて!?どうりで当たらんはずや!」


 ……イサミ、目前の敵に集中しすぎてエリゴールがヘルハウンドをガードしてたことに気付いてなかったのか。

 まぁ、私は遠くから俯瞰して見てるから黒騎士の動きがわかるけど、当事者のイサミとしたらヘルハウンドの攻撃を捌いている最中に視界の外から一瞬差し込まれる槍で大剣の軌道を逸らされてる事に気付く余裕がないのかもしれないけど……。


 もちろん、大声でこんな会話をしてると黒騎士に聞かれてしまう危険性はある。

 けど、私はイサミに日本語(・・・)で話してるんだ。

 黒騎士が異世界の言葉を理解してなければ、雑魚の民間人が声援を送ってるようにしか見えないだろうからね。


 とはいえイサミの側も状況が判ったからといってそう易々と黒騎士を攻撃できる訳じゃない。

 なにせ一対六だからね。

 私が飛び道具でも使えれば、黒騎士とヘルハウンドの連携を崩す切っ掛けでも作れたのかもしれないけど……。

 こんな事ならイサミにおんぶに抱っこじゃなくて、パチンコ(スリング)の使い方でも練習しておけば良かったんだけど……今となっては後の祭りだ。



 私が歯がみしながら見守っている間にも、周囲をヘルハウンドに囲まれたイサミはまた背後から攻撃を受ける。

 かろうじて牙を受け流し、反撃を加えようとしているけど……疲労が蓄積しているのか、イサミの大剣は空を切り、先端が地面に突き刺さってしまった!?

 あれ、ヤバいやつじゃない!?


「イサミっ!」


 思わず私は声を上げてしまう。

 そしていくつかの事がほぼ同時に起こった……ように見えた。


 イサミが空振りした勢いで前のめりになって――

 横合いから飛びかかったヘルハウンドがイサミの左手に噛みつき――

 攻撃を受けた勢いでイサミの身体が半回転し――


 ――何故か、黒騎士が吹っ飛んだ。


 え?今、何が起こったの!?


「これで、どうやっ!」


 混乱する私をよそに、イサミはそう叫ぶと噛みついたままのヘルハウンドを地面に刺さったままの大剣に叩き付け、無理矢理倒してしまった!?


 訳もわからず倒れた黒騎士の方を見ると……あ、兜が脱げて、黒騎士の顔が露わになっている。

 角が生えたイケメン?

 けど顔色が群青色で、やっぱりどうみても人間じゃ無いよね、あれ。


 確かエリゴールは「端正な顔つき」と表現されていたはずだから、やっぱりあれはエリゴールなんだ!


 そして魔王とは言え金属鎧を着た状態で転倒したエリゴールは即座に起き上がることが出来ず、身を起こすのに苦労しているように見える。

 もちろんそんな状態では指揮を執れるはずもないから、これまで精密だったヘルハウンドの動きが乱れ……その隙を狙ってイサミが残り4体となった魔犬達を斬り伏せてゆく!


 たちまちのうちにイサミがヘルハウンドを殲滅し、ようやくエリゴールが起き上がった時には勝負は付いていた。

 起き上がりに重ねるようにイサミが振り抜いた大剣は、兜を失ったエリゴールの頭部を重い一撃で討ち飛ばしたんだ。


 ……うわ、スプラッターだ……。


 ダンタリアンの時は薄暗い城の中だったし、遠目でしか見なかったから気付かなかったけど、魔王って血が青いんだね。


「おっしゃーーー!」


 私が場違いなことを考えていと、その場に座りこんだイサミが大声を上げた。

 勝ち鬨ってやつかな。

 いいね、そういうの。

 私は見てただけだから、一緒に叫ぶ権利はないけど。


「イサミ、お疲れ」

「おう!」

「ね、さっきのどうなってたの?噛まれたと思ったら魔王が倒れてたけど」

「ん?ああ、あれか?噛みついてきた犬を重しにして反動付けてな、ぐるっと回ってあいつのどてっ腹蹴り飛ばしたったんや。上手いぐあいに決まったやろ?」

「え?じゃあ空振りが地面に刺さっ(ファンブルし)たんじゃなくて?」

「んなヘマせえへんわ!サチが黒騎士狙え言うから、それに合わせたんや」


 どうやら、イサミは私のアドバイスを元に行動した結果があれだったらしい。

 いや、イサミって戦況の判断出来てないと思ったけど、そんな事なかったね。

 むしろ私よりも臨機応変に対応出来てるんじゃないかな……?


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