表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第1章 3話「目的」




 〜視点:少女〜




 朝日と鳥の囀りと共に目を覚ます。カーテンを開け、部屋に陽の光を取り込む。

 クレオ・デウスに来てからはや1週間。この生活にも馴染んできた。


 私は弟の入った保護カプセルを見て、弟が生きている事を確認した。それからベッド横の棚に置いたロケットペンダントを手に取った。

 ペンダントを開くと、その左側には真紅の宝石が煌めいており、右側には母と私たち兄弟の家族写真が入っている。私はそれを、首にはかけず服の内ポケットにしまった。


 ──何かがあっても、このペンダントが私に力をくれる。そんな気がしたのだ。


 母は私によく言っていた。「このペンダントは、絶対に人に見せてはいけません。これを見ていいのは、ルチアとイーグル、そしてママの3人だけよ」と。

 このペンダントは、ルミーネ家の「秘密のペンダント」なのだ。


 ペンダントを持ったら、保護カプセルの蓋を開け弟に行ってきますのキスをして部屋を出る。

 部屋を出ると、扉の横にヴォイドが立っていた。


「……ルチア、ようやく起きたか」

「すみません。昨日はあまりに疲れていたもので……」


 そう言って謝ると、ヴォイドは気にしていないと言わんばかりにうっすら笑みを浮かべた。そして私に短剣を渡し、「行くぞ」と短く告げた。


「今日は、魔鉱石を密輸している売人の始末だ」

「が、頑張ります……!」


 殺しの仕事にも、少し慣れて来た。……まだ、人を殺した感触にだけは慣れていないが。


 ヴォイドは私に、朝食のおにぎりを1つ投げてくれた。ギリギリのところでそれをキャッチし、「ありがとう」と礼を述べておにぎりを齧る。

 私の頬が僅かに赤らんだのを感じる。それと同時に、ヴォイドが一礼をしたのを見て自分も一礼をする。


「ヴォイド、おはよう」

「おはようございます、プレジデント様」


 プレジデント。クレオ・デウスの最高権力者にして、最強と言われる男。本名は不詳で、私たち組織の構成員は皆「プレジデント」と呼んでいる。


「その子が、ニゲルの言っていた……」

「はい。今彼女は、(わたくし)と共に任務に当たっています」

「……そうか」


 プレジデントは、ヴォイドの言葉を聞いて少し間を空けて返事をした。ヴォイドの不自然な一人称は違和感を感じずにはいられなかったが、私も一応プレジデントに挨拶をした。


「ルチア・ルミーネです。プレジデント様とお会い出来て光栄です」


 私がそう言い終えるなり、プレジデントの口の端が緩む。


「ルミーネ。……サージャ・ルミーネの子か?」


 そう言ってプレジデントは、私に追加の質問を問いかけた。


「……それならば、“あれ”は持っているだろうな?」


 “あれ”。私はその言葉の真意にすぐ気がついた。プレジデントが言っているのは、ルミーネ家のペンダントの事だと。

 私は母から、それ以外の特別な物は何も受け取っていない。もしプレジデントが指している“あれ”に当てはまる物があるとすれば、ペンダント以外の何物でもないだろう。


 ここで私は、プレジデントに何というべきなのだろうか。素直に供述するのは、プレジデントの目的が分からない以上、迂闊には出来ない。ならば──


「……何の事でしょうか?」


 私はしらを切った。まだプレジデントがペンダントを欲しがっているという確証は無いが、最適解はこれだと判断した結果である。


「……そうか。まぁ良い。頃合いがくればじきに分かるだろう」


 プレジデントはそう言うなり、その身を翻して去り際にこう言い残した。


「……お前たちの『目的』がな」


 足音が遠ざかり、プレジデントの姿が見えなくなった。すると、ずっと体が強張っていたからか、腰が抜けてしまった。ヴォイドに支えられながら立つと、改めて体が疲弊しているという事に気がついた。


「時間が、長かった……」


 思わずそう口にしていた。まだ日が昇って僅かという時間なのにも関わらず、肉体は徹夜をした時みたいに疲弊しきっている。


 時計の針を見れば、まだ1分程しか経っていなかった。体感時間は、異様なまでに伸ばされていたのだが。


「……あぁ。体感時間が10分程に感じたな」


 私はプレジデントに対する警戒度を引き上げた。絶対に、私に“あれ”の話をした時に口が緩んだのは、ただの笑顔ではない。──何か秘密を隠している笑顔だ。


 次に会う時は、迂闊な事を喋らないように気をつけねば。もし、ペンダントの事を喋ってしまったとしたら……


「……ルチア、大丈夫か? 小刻みに震えているぞ?」


 ヴォイドにそう言われてハッとした。私は自分の手を見つめた。手は手汗が滲んでおり、ヴォイドの言う通り小刻みに震えていた。


「体調が悪いなら、部屋で大人しく休んでいろ。……もう時間だ。お前が任務に行けないのなら、俺が1人で行く」


 ヴォイドはそう言って私に背を向けた。しかし、私は彼の手を引っ張った。


「……私も、行きます」

「……そうか」


 刹那ではあったが、ヴォイドがほんの僅かに笑った気がした。もしかしたら、私に心を開いてくれた証拠なのだろうか……?


 私とヴォイドはクレオ・デウスの建物を出て、任務にて記されていた場所へと向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ