家族会議(2)
この場に現れるとは思わなかったのだろう。
父親と母親は狼狽した。
マリーだけは少し驚いた後、おっとりと続ける。
「失礼いたしました。ご無礼をお許しください。ですが、元々あなた様の力は私が継承すると決まっていたのです。正式なアミュール家の血筋を受け継いでいない姉に継承の資格はございません」
それを聞いた父親は我にかえって続けた。
「そうだ。そいつの血は半分汚れている。私はこのマリーに継承すると決めたのです。代々そうして力を継承してきたはず。私も父から受け継ぎました」
汚れているとはよく言う。
自分がメイドに手を出した結果、私が生まれたというのに。
その矛盾をあいつらはどう考えているのだろう。
ルカは矮小な家族にため息をついた。
なぜ、前回の人生で私はこんな家族に愛されたいと思ったのか。
2人の主張を黙って聞いていた青年は、表情を少ししかめて口を開いた。
「それで?何が言いたい?」
相手の話をくみ取れという傲慢な会話を、青年は拒否した。
ちゃんと言いたいことがあるなら言えと、ストレートに口にしたのだ。
父親は意を決して言った。
「あなたの力は私の娘、マリーのものです。そいつではなく、この子に力を与えてください」
その言葉に、青年は首を振る。
「力を与える。それは私が聞きたい言葉ではない。おまえ達は残した力を発展させようとせず、使いつぶしてばかりだった。国のためを思って多めに見てきたが、それも限界だ。望みさえ口にできぬほど思い上がった者に、私の力は預けられない」
父親は、最初は自分が言われた言葉を理解できなかったようだが、徐々に自分達がこき下ろされていることがわかったのだろう。
怒りで我を忘れて、叫んだ。
「そもそも!あなたが我がアミュール家に伝わる『ダークナイト』なのか?代々伝わる継承では、あなたは出てこなかったはずだ!」
父は、あろう事か青年の存在そのものを疑い始めた。
それに青年はうっすらと微笑んだ。
「では、私の力をお見せよう」
すると、彼の足下から闇が吹き出した。部屋を包み、館全体を包み込む。
暗闇の中、青年の声が響いた。
「これが私のほんの一部の力。この闇をいかようにも変化させることができる。砂に変えれば圧死するだろう。毒ガスに変えたら長く苦しみながら死ぬ、無に変えれば跡形もなくなるだろう。お前達にとっては、これが一番優しい死に方かな」
柔らかい声色で、恐ろしいことを言う。
せっかく2度目の人生を始めたばかりなのに、ここで死ぬのはさすがに悲しい。
恐ろしくはあったが、ルカは声を出した。
「今の状態だと、私も巻き添えになるのでやめてください」
すると、闇は一瞬で消え去った。
前を見れば、椅子ごとひっくり返った父親と、恐ろしさのあまり頭をかきむしる母親。
そして、こちらをにらみつけるマリーがいた。
マリーのむき出しの表情を見たのは、処刑の前日の時以来だ。
ルカは思わず笑いそうになった。
ようやく、自分が本当に継承できないと理解したようだ。
その顔が見たかった。
でもね、私は生首にまでなったの。
これで終わるなんて思わないでね。
ルカは口を開く。
「まずは2人で話がしたい。ここは邪魔者が多いから、私の部屋へ行きましょう」
そう、あんたはただの邪魔者なの。
そこのところ、ちゃんと理解してね。
ルカは家族をおいて、青年と部屋を出て行った。