自己紹介(1)
部屋に2人で戻り、ドアをしめた瞬間、ルカは力が抜けてへたり込んだ。
自分の人生を変える一歩を踏み出せたことに安堵したからだった。
青年はルカに手を差し伸べる。
「先ほどは突然力を出して申し訳ありませんでした。もちろん、あなたを巻き込む気はありませんでした。避難させるつもりでしたよ」
青年は、先ほど見せた闇の力にルカが怖がっているのだろうと解釈していた。
ルカはありがたくも手を取りながら答える。
「いいえ、そのことは恐くはありませんでした。驚きはしましたけど。すみません、無事あなたに選ばれたことで安心してしまって……」
その言葉に青年は微笑んだ。
「嬉しいことを言ってくださいますね。……では、まずは互いを知ることから始めましょう。共に歩んでいくには必要なことです」
そのほほえみは今まで見せた恐ろしい姿にはかけ離れたものだった。
つられて笑顔をルカも返す。
「そうですね。まずはあなたの名前を知りたいです。呼び合うのに不便ですから」
2人は部屋の中央のテーブルセットに腰掛けた。
青年はほほえみながら言う。
「改めて、私の名前はリアン・アミュール。この国のアミュール家の始祖になりなす」
ルカもリアンに改めて自己紹介をする。
「私の名前はルカ・アミュールです。よろしくお願いします」
向かい合うことで改めてルカは青年を見た。
整った顔をしている。
アミュール家の血筋の者は眉目秀麗と言われているが、始祖である彼からそれは始まっているのだろう。
だが、マリーをはじめとした家族は金髪だが、彼は黒髪だ。
それも相まって、彼とマリー達家族は遠く離れた存在のように思う。
生粋の黒が黄金になる。まるで富に執着するアミュール家を象徴するようだった。
ルカの視線に気が付いたのだろう。リアンは自分の髪をさわりながら言った。
「今のアミュール家とは毛色が違うでしょう。20世代より前から血筋を厳選するようになり、今の黄金色の髪になったようですね」
アミュール家の象徴の黄金色。
ルカは自分の髪を一束摘む。ルカの髪の色は青みがかった銀色だった。
変わった髪色をした母親の血が色濃く出たらしい。
もっとも、その髪色のせいで父に目をつけられたわけだが。
その様子を見ていたリアンが言った。
「ルカはとてもきれいな髪色をしていますね。月のようです」
この髪色をほめられたことなど一度も無かった。
粗末な色だ、不吉な色だ、さんざん言われてきた。
忘れられないのが、マリーの言葉だ。
「ご老人の髪のようですね。死を迎える前のよう」
それに父親と母親だけでなく、メイドや執事も笑った。
あの時の私は、傷つく心を抱えながらも場の空気を壊さぬよう笑顔でいるしかなかった。
あの時の自分に教えてあげたい。
私の髪を、月にたとえてくれる人が現れるよと。




