第9話 お花見・たまご・リスタート(後編)
中編からの続きです。
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夜食も終わり、手元に注意する必要もなくなったので、ランタンの灯りを消す。すると、それまでLEDの強すぎる光で分からなかった月明かりを感じた。
やさしい光の中を、花びらがゆったりと漂っていく様は、まるでピンク色の流星群だ。
うららと氷彗は、添い寝するみたいに仰向けで、ブルーシートに寝転がった。
花見と言えば賑やかなものを想像するが、二人だけで静けさに浸り、ゆったりと眺めているのも風情がある。
「今日は本当ありがとうね。私のために色々、してくれて」
「いえ、そんな……私は、塔山さんが元気になってくれたなら、それで」
「そういえば、さっきは私のこと、うららって呼んだよね?」
「あ! あれは、その……勢いでつい」
氷彗は口をもごもごとさせてうつむいた。
うららは別に、その呼び方に怒っているわけではない。それは氷彗も分かっているだろう。
伝えたいのは、その先だ。
でも、踏み出すには少しだけ心の準備が必要だった。
「「あの!」」
鏡合わせのように、うららと氷彗は同時に口を開いた。
「鳥見川さんからどうぞ」
「い、いえ、塔山さんの方から」
「……なら、お言葉に甘えて」
まるで、初めて出会った時の夜みたいだ。あの時も、こんな風に緊張していたっけ。
ごくり、と固唾を飲み込む。
「これからは、私も呼んでいいかな? 鳥見川さんのこと、氷彗って」
頬を赤らめながら、氷彗は小さく笑みを湛えた。
「はい、喜んで! うららさん!」
こうして――
二人で食べる、真夜中ごはんは再び始まった。
これにて第一部「春」はおしまいです。
ここまで追いかけて下さり、ありがとうございます。
二部スタートまで、お時間いただくことになると思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。
m(__)m




