第5話- another
「……あたしばっかり助けてもらってるから…」
彼女は膝にカップを落として中身を見つめていた。その言葉は自分に向けられていると思っていいのだろうか、それとも…
「立場上辛いんだったら、せめてあたしが話……!」
答えを聴きたくて手を伸ばしたら、それは瞬間に返ってきた。
ほら、その言葉。
俺が歩み寄ってみても、絶対ぶつかる壁のようだ。
いくら幼馴染みといえど、その隔たりが消えることはなかった。
いつも一線を引かれる。
頭の良いお前のことだ、引き際を知っているのだろう。
『でも国王にこんなことさせてたら、あたしが怒られちゃうわね』
『立場上辛いんだったら…』
「お前にとって俺は『国王』に過ぎないのか?」
情けないほど掠れたそれは、俺の本音なのかもしれない。
クロエの息を飲む音が聴こえる。
本当の意味が伝わったうえでの反応なのか。明らかに伝わる困惑に、逆に笑えてきた。
「ふっ…ははは、何言ってんだろ。余計な心配かけたな。忘れてくれ」
直ぐに腕を解いて、顔を見られないようき背中を向けた。
言葉にするのがこんなにも怖い。あんな遠回しな物言いは自分でも卑怯だ。
胸がむかむかする。
「悪い……しばらく一人にしてくれ」
「っ………」
背中の向こうの彼女はどんな顔して出ていったのだろう。見たくない、させたくない顔であったのは確かだ。
「………どうすればいいんだよ」
気づいた。
いや、壊れるのが怖くて誤魔化した。
埋まらない距離は短いようで縮まることはなかった。
そしてその距離を
また自分で広げた。
次回で最終話になります。




