2人の教師と2人の生徒
「星子さん、ここってどうやって解くんですか?」
いつもの勉強風景、優子が解らない問題があると星子さんに解き方を教わる。
だけど、今日は優子の他に佐織もいた。
「ジュン君、ここ教えて」
佐織が俺の袖をひっぱる。
佐織は学校の中でも頭が良いが俺はいまいち。それでも得意分野の数学では佐織よりも俺の方が得意だった。
佐織にとって苦手な数学だが、得意だった俺がやっと教えられるレベルだが。
「こっちの公式に当てはめると簡単に解けるぞ」
そう言って、佐織のノートに数学の公式を書き込む。
佐織は数字をそれに当てはめ答えを出した。
俺は一応、電卓で計算が正しいかを確認する。
「これでいいの?」
「ああ、偉いぞ」
佐織は俺の方に頭を差し出す。
俺はその頭を撫でてやる。気持ちよさそうに佐織が身体を俺に押しつけてくるが、それを押しのけて次の問題に取りかからせた。
「星子さん、ごめん。これ教えて」
苦手な英語の問題を星子さんのところに持って行く。
英語だけはどうも覚えられない、単語のスペルも文法も。
「これはね」
そう言って星子さんが丁寧に説明してくれる。
わかりやすい説明を聞いてるうちに理解した気分になる。
「ありがと、わかった」
そう言って星子さんの方を向いた。
集中して気がつかなかったがすぐ近くに星子さんの顔があった、触れてしまいそうなほど近くに。
星子さんと目が合い、ちょっとした沈黙が流れる。
優子と佐織が居なかったら良い雰囲気になれるのにと考えてしまうところが自分でパニックっている所だ。
「ジュン君、これわからない」
そんな2人の雰囲気を無粋な佐織が壊した。
俺は袖を引っ張られ星子さんから離れていく。
「どれさ」
「この問題」
星子さんはちょっと残念そうな視線を俺に送ってから自分の参考書に目を移していた。
「へへへ、賢いでしょ。もっと褒めて」
佐織は普段は世話焼きだが、相手の得意分野では甘え上手だ。
そして、俺は妹にも佐織にも甘い。
そんな様子をみて星子さんが少しつまらなさそうにしていた。
「俺は星子さんを送っていくね、佐織も帰るなら送っていくぞ」
勉強を終え、くつろいでいる佐織に声をかける。
佐織の家はここから徒歩で1.2分の距離だから、急いで帰る必要もない。
「私は少しゆっくりしていくね」
そう言って優子とおしゃべりを始める。
2人をほっといて俺は星子さんと家を出た。
帰り道、あまり話が弾まない。
というより、星子さんの機嫌が少し悪いみたい。
会話のないまま、公園を歩いている。
「ねぇ」
沈黙に耐えきれず、俺が声をかける。
「なに?」
ジト目で俺を睨む星子さん、少し怖いよ・・・・。
「潤平さん、私たち別れた方がいいのかな」
そう言って彼女は俺の目を見る。
「別れようか?」
彼女が言った。
その表情は寂しそうだった。