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夜空と星  作者: 小田桐
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寄り道


「今日は予定あるの?」


 退屈な学校の授業が終わると祐介が声をかけてきた。


「ん〜、古本屋でも寄ってみようと思ってるかな」


 あるきっかけで俺は本好きになっている。図書室に通っている他の学生よりも俺の方が読書量は多いだろ、きっと。


「そういえば、亜美も本を探してるって言ってたな。誘ってみるか」


「別にいいよ」


 星子さんと付き合うようになってから亜美さんとも話すようになっていた。祐介も星子さんも亜美さんと幼なじみなんだから、幼なじみ2人と仲が良い俺は亜美さんに受け入れられたのだろう。きっと。


「なら、ちょっと待ってろよ。今、呼んでくるから」


 祐介はそう言って教室を出て行った。

 鞄に荷物を詰め祐介が戻ってくるのを待った。

 今日は星子さんが妹の家庭教師をしてくれる日だから、買い物が終わったら迎えに行ってみようと考えてみた。

 きっと、驚くだろうな。



「雨夜くんってどんな本を読むの?」


「ミステリ系が多いかな、如月さんは?」


 商店街にある古本屋の小説のコーナーで亜美さんと話していた。

 祐介は1人で漫画のコーナーで立ち読みしている、基本的に彼は小説は読まない。


「恋愛モノとか好きかな。由美や星子も恋愛小説を読んでるよ」


 そういえば、星子さんが以前そう言った本を読んでるって話を本人から聞いたことがある。読書という共通の趣味が見つかったときに本の話題で盛り上がったんだ。


「お奨めとかあります?」


「興味があるなら、貸そうか?でも、男の人が読んでもつまらないかもよ」


「何でも読むから大丈夫ですよ。それに合わないようだったら次からはミステリオンリーにしますよ」


「なら、明日持ってくるね」


 亜美さんから本を借りることにしたから、今日は無理して本を買う必要が無くなった。

 本を読みたいなら図書室で借りればいいのだが、学校の図書館には推理モノとかはあまり置いていない。当然といえば当然かもしれない、学業を学ぶところに緻密に練られた殺人計画なんて似合わないからだ。


「うん、楽しみにしてるね」


 俺はそう言ってから今日は本を買わない旨を伝える。

 亜美さんはお気に入りの作家の本を一冊買ったみたいだった。

 亜美さんの買い物が終わると漫画を立ち読みしている祐介に声をかけて店を出た。




 さて、時間までまだ余裕がある。今から家に戻って星子さんを待つにも中途半端な時間だった。

 祐介に声をかけて適当に時間をつぶそうか、1人で何処かに行こうか迷っている。


「潤平はこれからどうするの?」


「ん〜、適当にぶらついてるかな」


「ああ、星子を待ってるのね」


 勘が良かったのは亜美さん。それを聞いた祐介がニヤニヤしてる。


「それなら時間まで俺たちも付き合ってやるよ」


 余計なお世話と思いつつも、1人で1時間をつぶすのは大変だと思っていたところ。


「そうね、どっかで飲み物でも飲んでいましょう」



 亜美さんの提案で近くのファースフード店に行き、それぞれ飲み物を注文した。

 テーブルを挟んで祐介と亜美さんが座っているのだが2人の距離がかなり近い。恋人の距離って奴なのだろうか。


「星子とどんな感じなの?」


 控えめに亜美さんが聞いてくる。


「どんな感じって聞かれても答えようないかな」


 はぐらかそうと決めた俺。


「たとえば、手を握ってるとか。キスをしたとか。それ以上とか」


 それ以上ってなんだよ?もっとオブラートに包んで発言しろよと心の中で祐介につっこむ。


「おまえはどうなんだよ」


 と、言ってしまって少し後悔する俺。

 祐介だけならかまわないが亜美さんも一緒にいることを失念していた。


「聞くまでもないだろ」


 祐介は平然と答えるが、亜美さんの顔が心なしか朱色に染まっている。

 確かに聞くまでもない。


「まぁ、その様子だとキスもまだみたいだな」


 勝ち誇ってる祐介。

 星子さんとキスをしていないからといってキスをしたことがないわけじゃないぞ。

 だからといって、別に星子さんとキスをしようと思ってるわけじゃないが。


「ちゃんと星子の心を掴んでないと振られてしまうぞ」


 意地悪なことを言うな。

 だけど、それが本来の正しい道なのかもしれない。

 俺はずっとそのことが気にかかってる。


「でも、どうして星子さんは俺を選んだんだろ」


 誰に尋ねるわけでもなく独り言のように呟いた。


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