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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『人生としては面白いです』

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1/9

Review1 あなたへのレビューが更新されました

「先生、もし将来つらくなったらどうしますか?」


 卒業式の日。


 藤原美咲はそう言った。


 今でも、その言葉を覚えている。


 むしろ。


 忘れられない。


 教師を辞めて半年が経った今でも。


 あの日の教室。


 あの日の笑顔。


 そして。


 あの日の自分の返事を。


「そうだな。コーヒーでも飲みながら考えるかな」


 美咲は笑った。


「先生らしいですね」


 俺も笑った。


 それで会話は終わった。


 終わったはずだった。


 もし人生にやり直しがあるなら。


 俺はあの日に戻りたい。


 そして。


 もっと違う言葉をかける。



 雨上がりの夜だった。


 高瀬悠介はコンビニの駐車場で缶コーヒーを開けた。


 三十二歳。


 元中学校教師。


 現在無職。


 肩書きだけ見ると人生失敗した人間みたいだな、と苦笑する。


 教師を辞めたことは後悔していない。


 少なくとも、そう自分に言い聞かえている。


 だが。


 藤原美咲の名前を思い出すたびに。


 その自信は少しずつ崩れていく。


(俺は本当に正しかったのか)


 何度考えても答えは出ない。


 だから考えないようにしていた。


 コーヒーを飲み干し、スマホを見る。


 その時だった。


 スマホが震えた。


 通知。


 見覚えのないアイコン。


 見覚えのないアプリ。


 インストールした記憶もない。


 表示された文章は一行だけだった。


【あなたへのレビューが更新されました】


「……は?」


 意味が分からない。


 レビュー?


 何の?


 試しに通知を開く。


 数秒後。


 白い画面に文字が表示された。


 ★★★★★


 人生としては面白いです。


 高瀬は眉をひそめる。


 悪質な広告かと思った。


 だが。


 その下の文章を見た瞬間。


 呼吸が止まった。


【評価対象】


 高瀬悠介


【現在の評価】


 2.8


【改善点】


 教師を辞めた判断は妥当でした。


 それだけじゃない。


 さらに下には。


【総評】


 藤原美咲への対応については、現在も評価が分かれています。


 高瀬の指が止まった。


 全身から血の気が引いていく。


 なぜ。


 どうして。


 その名前を知っている。


 雨上がりの夜風が吹く。


 スマホの光だけが妙に明るかった。


 気付けば高瀬は、画面から目を離せなくなっていた。

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