最低の日常。そして願い
「ハアーーーー?!んだよこのクソゲー!」
「なんでこの難易度で二段階変身なんだよ!しかもザコ復活すんのかよ!フザケンナ!!」
ここ大人気ダイヴ型MMOゲームをやってるんだが…いき詰まっている。
「まあここは初心者の壁って呼ばれてるんだぜ?しょうがないだろ」
次があると言いながらおれを慰める声が流れてきた、一緒にこのゲームをやってる友達の斎藤だ。
「…初心者じゃねぇよ。リリースされて10年!初期からやってるガチゲーマーだぞ!おれは」
「そりゃお前が悪いんだぞ。『運営がデータを作り直せって言ったバグデータで、ずっとやってるせいだろ』」
「しかもレベルが上がらないバグ『固定レベル』。なあ東谷、そのデータに愛着があるのか知らないが作り直せって」
「やり直したいのは山々だけど、途中で投げ出すのは絶対にイヤなんだよ!
「せめて、せめてこのボスだけ倒してから…」
「このボス倒してからぁ?もう何年たってんだよ!東谷!お前がここのボスにたどり着いたのは何年前だ?!」
「うっ」
「8年前にこのボスに来ただろ?すぐに諦めてたデータ作り直したら2年程度取り戻せるんだよ」
ちっ斎藤め!耳が痛いことばかり言いおって!
「…固定レベルだとしても隠し職業ならトッププレイヤーで稼げたんだろうな…あーあ俺らも隠し職業だったら、堂々と街を歩けるんだけどなぁ」
そうおれらはニート、働いてない穀潰しなのだ。この倒せないボスにぶち当たってから一切動いていない。斎藤もランキングでいうなら1000位台、若い年代ならプロゲーマーとして働けるくらいだ。
ゲーム界隈だと落ち目、オッサンと言われる25歳。
もし10年も前に戻れるならバグのないデータでやり直してぇ。
はぁどうにか固定レベルだけでも解けないだろうか。
「そういや東谷、おまえ何日くらい寝てないんだ?」
「10徹…くらいか?ボスの残りHPが10%だから、二段階変身とザコ復活のパターンさえ見つけられれば勝てるはずなんだよ!たぶん…」
「はっ。残りHP5%まで何年かかるかな?予想してやろうか。あと5年だな!!ドM東谷!」
「言ってろクソニート」
ブチッと声が途切れた。時計を見ると1時、斎藤はこれから寝るのだろう。
しかしおれは11徹に入りボスの研究に入るとしようか…
「…え?!ボスを倒せた?のか」
3時まで研究を続けていた。それでトイレに行って自分の部屋に戻ったらボス撃破。
ログアウトして装着型ゲーム機も外し、片付けたはずなのに。はずなのに。
いつのまにかボス撃破のリザルト画面に来ていた。
「報酬をお選びください」
ああ、8年ぶりの報酬画面だ…ボス撃破の特権、懐かしい…
えーと報酬は…ん?
「お金、願い、隠し職業のどれかを選べ?」
おれの欲しいものはなんだ?達成感のせいで頭が働かないよ…
「なんかもう疲れたな…そうだ。10年前に戻してくれよ!」
「…やっぱできな「承知した。寝て起きたらキッチリ10年前だ」
もしかして、これマジのやつ?
運営に問い合わせた方が…なんだか眠い…
もしかして、とんでもないことしちまった?やばい眠い…
「…ー也、起きなさい!」
うるさいな…11徹目のショートスリープだぞ…!静かにしてくれ…
「蒼也!起きる!」
だれだよ蒼也って。
「東谷蒼也!さっさと起きろ!」
「はい!!!」
…あ!?おれの下の名前は蒼也だったんだ!そっちで呼ばれるなんて5年ぶりか?
「お、お母さん…」
「さっさと飯食って学校行く!」
…ニート時代は会話がなかったけど、、、こんなに厳しかった?
いや本当に懐かしい。
「…おはよ」
い、妹!!!あの蔑んだ目をしてきてこない時代の妹、千佳!!
「おはよう」
10年前に戻ってきたんだ。もうあんなクソゲーはやめよう。
学校生活!25歳のアドヴァンテージ!これを組み込めば…つまり最強!
「よーぅ斎藤!おはようさん!」
「え、あうん。おはよう」
げ。まさか友達じゃないのかよ。うーわ恥ずかしい
「えーと東谷くんだっけ?入学以来の初めてテストだね」
ふっふっふ。まぁ余裕でしょうね。いやぁ100満点とってみようかな笑
さーてと。席に座って筆箱を…
筆箱を…
筆箱がない!
どうしよう。斎藤とは友達じゃないし、ってか斎藤以外友達いなかった気がするぞ…
しかも微妙に遠い席?!ーーわざわざ話しかけに行くのは可笑しいやつすぎる!
「(隣は…女子。急に帰りたくなってきた…はぁどうしよ」https://mitemin.net/imagemanage/top/icode/639724/
「筆箱わすれたの?シャーペンいる?」
ちょっと待てよ…罠なのか?周りが分かるくらいに顔に出てたのか??
女子から話しかけられるってことは罠ではない?いや逆に罠?!
そっちでもない。シャーペンは使わないほうがいいんだ!
「ーー芯をください」
「シャー芯で乗り切ります」