第23話 真夜中の駆け引き
昼の騒がしさからは打って変わって、ティーバルの夜は静寂に包まれている
月明かりに照らされた街に1人の男がいた
男はこの街の静けさを堪能し、ある宿屋の前で止まった
「…ここか……」
男はそれだけ言うと3階の窓まで飛び、部屋に侵入した
そこにはカズトとサクラが気持ち良さそうに寝ていた
「これでさよならです」
男がカズトの喉にナイフを刺そうとした瞬間ーーーーーーー
「何の真似だ………ジル」
「起きてたんですか、カズトさん」
「そんな悲しそうな顔するなよ」
「悲しそう?あなたにはそう見えましたか。初めまして。魔王軍幹部ジル・グレアムと申します」
「初めまして……か…。寂しいこと言ってくれるじゃねーかよ」
「ふふふっ。いつから気づいてらしたんですか?」
「答え合わせは必要か?」
「参考までに」
「そーだな。しぃて言うなら温泉の時かな。俺の水切りの時の魔法を見抜くほどの奴が、盗賊なんかにやられて死にかけるかなーってちょっと思っただけだよ」
「たったそれだけの会話で気づかれるとは僕もまだまだですね」
ジルはカズトとの会話を心底楽しんでいた。それに比べ、カズトの表情は優れない
永遠にも続きそうな沈黙の中カズトが言葉を漏らした
「俺を殺すつもりなんだろ?だったらさっさとやろうぜ?」
「あれ?意外とあっさりしてるんですね。カズトさんて。色々聞かないんですか?」
「聞いたら答えてくれるんですか、魔王軍幹部のジル様は」
「嫌味のある言い方ですね。ふふっ。1つだけなら答えてあげますよ」
「1つ…….か。どうして俺を狙うんだ?」
「どうして?ですか。結論から述べるとあなたの強さは危険だからですよ。あのレッドドラゴンとサシで対等に渡り合える人間なんて、この世に数えらるほどしか存在しないですからね」
「アネルカの事か。どうやら俺の行動は筒抜けのようだな。」
「ええ。これ以上、王都に近づかれても厄介なのでね。ここで引導をわたしにきた次第ですよ」
「どいつもこいつも王都王都ってうるせーな。逆に気になってしゃーなくなってきたわ!死んでも王都に行ってやるよ」
「それは困りますね〜。まぁこれ以上話しても意味はなさそうですが」
「そうだな。だが、一緒に酒を飲んだ仲だ。1つだけ俺の願いを聞いてもらう」
「………僕の叶えられる範囲なら」
「場所だけ変えよう。ここでやり合うと必ず死人が出る」
「ほんと、つくづく優しい人だなカズトさんは。いいですよ。街を出ましょうか」
「助かる」
ジルとカズトは闇に消えていった




