少しだけ先の未来
「おはよう」と、いつもの挨拶をしたわたしは、とある部屋の扉を開いた。
そこには双子の兄妹がすやすやと眠っていて、同じ寝顔に思わず小さく微笑んでしまう。
「朝だよ。起きなさい、二人とも」
「すー……すー……」
わたしと同じ、薄い茶色の髪を少しだけ伸ばしている男の子はまったく起きる気配がしない。
「んん……。あさぁ?」
「そうだよ、朝だよ」
まだ開けきっていない瞳をこすりながら、銀の髪の女の子が起き上がった。
薄く開いた蜂蜜色の瞳をわたしに向けながら、まだ眠いと唇を尖らせる。
「朝食が冷めるでしょ。二人とも、着替えて顔を洗ったら食堂へ来なさい」
「はぁい」
「すー……すー……」
ムスッとしながらも、目覚めてからは動きが早い女の子は、さっさとベッドから降りたら着替えのある場所へ向かって行く。
相変わらずちっとも起きない男の子を、どうしてくれようかとわたしは見下ろすことにした。
「いい加減、起きなさい!」
「うぇっ!?」
仕方なく耳を引っ張ることにしたら、ビクッと震えながら目を覚ました。
紫色の瞳を真ん丸く見開いて、目の前のわたしに気が付いて首を傾げる。
「どうしたんですか、母上?」
「どうしたのじゃない。朝なんだから起きなさい。支度をしたら、食堂へ行って朝食!」
「はぁい」
きょとんとして、なんでここにいるんだと不思議な顔をするんじゃない。
朝だって、さっきから何度も言っているだろうが。
食堂に行ったら、いつもの椅子に座ってシュトレリウスが待っていた。
「おはよう、二人とも」
「おはようございます、お父様」
「おはようございます、父上」
そうして四人で並んで座ったら、いつもの挨拶をして朝食の時間だ。
「いただきます」
パンッと四人分の手を合わせた音が響いて、すぐに女の子が口を開いていく。
「今日はお城に行くのでしょう?王女様はいるのかなあ」
銀の髪の女の子は、シュトレリウスと同じ魔法使いだ。
少し勝ち気な目元をきょろっとさせて、わたしと同じ蜂蜜色の瞳をシュトレリウスに向けて尋ねていった。
「僕は家にいるの?お城に行くの?」
わたしと同じ薄い茶色の男の子は、わたしと同じく魔法使いじゃない。
けれど双子の片割れということで、魔法使いの素質があるのかという検査のようなものをしに、たまにお城に通っている。
シュトレリウスと同じ紫色の瞳なのに、ちょっと垂れ目な目元を向けて同じように尋ねてきた。
「今日はみんなが呼ばれているから、終わったらお茶をするんだよ」
「「はぁい」」
返事だけはしっかりしている双子がそろって手を挙げたのを見て、シュトレリウスが小さく微笑んだ。
相変わらず、少しだからわかりにくいけど嬉しそうに瞳を細めてもいる。
目も元々細いから、本っ当にわかりにくいままだけど。
そうしていつものように会話をたくさんしながら朝食をいただいていって、出掛ける準備をしたら馬車に乗りこんだ。
「……ん?」
「どうした」
ガタガタと揺れる馬車じゃなくて、ゆっくりな揺れと暖かさで目を覚ましたら。
目の前にシュトレリウスがいて、パチパチと暖炉で火が爆ぜる音がしていた。
「ゆめ……?」
「何か見たのか?」
さっきまでは、あんなにハッキリと見ていたはずなのに。
今はもうぼんやりと、うっすらとしか思い出せない。
心配そうに覗きこむ、紫色の瞳と。
暖炉の火に反射して、不思議な色合いになっている銀の髪を見つめながら。
「たぶん、もう少しでわかります」
「何がだ?」
「……内緒、です」
「??」
大きくなってきたお腹を撫でながら、きっともうすぐ会えるかなと。
賑やかな朝を思い出しながら。
わたしたちにそっくりな子供たちに会える日を、もうちょっとだけ待つことにしよう。




