2:『要らん洗礼』
「お前らさ、銃とか持ってんの?ドンパチするんなら、無いと話にならねぇぞ」
俺はチーズハンバーグを食べながらなんとなく聞いてみた。
「一応拳銃なら普段から持ち歩いてる。あと、ケネスの家には狩猟用のショットガンがあって、マイクの家ではスナイパーライフルを見かけた」
「おっ、スナイパーライフルかぁ」
ショーンがスナイパーライフルという言葉に反応する。
「……まぁ、使い方はイマイチ分からねぇんだけど」
「なんだよそれー」
テーブルが笑いに包まれる。
「……にしても、ショーンはなんでスナイパーライフルに反応したんだ?」
「あぁ、俺は普段ドンパチの時は狙撃で援護する役だからな」
「へぇー!今度使い方教えてくれよ!」
「おっ、いいぞぉ」
弟子ができたからか、なんだかショーンは嬉しそうだ。
「あ、そういや、こんなアプリを見つけたぞ」
デイブはなんとなく携帯のアプリケーションを漁っていたようだ。デイブは携帯の画面をこちらに見せる。
「どれどれ?」
「『tracker』っていうアプリだ。電話帳登録してある相手に、自分の現在地を教えられるらしい」
「へぇー、そんなアプリがあるのか……」
「なんかあった時に、現在地教えられなかったら手伝いに行けないだろ?このアプリ入れておけば簡単なんじゃねぇかなと思って」
「なるほど……たしかにそれは便利そうだ」
「よし、じゃあ全員これ入れとこうぜ」
「おうよ」
というわけで全員同じアプリを入れることになった。
全員飯を食べ終え、俺たちは代金を払って店を出た。
「そういや、お前らこの後どうすんの?」
「俺たちは一旦帰る」
「そうか。他のギャングに絡まれないよう気をつけろよ」
「りょーかい。じゃ、またな」
「おう。またなー」
そこで俺たちは別れた。
「……俺たちも帰るか」
「そうだな」
俺たちも隠れ家へと帰り始めた。
ルークたちは、喋りながら自分たちの隠れ家へと向かっていた。
「これから楽しくなりそうだよな!」
「そうだな!先輩たちとつるめるようになったし」
楽しそうにしているルークたちをチャラそうな格好をした奴らが取り囲む。
「あ?んだよテメェら」
ルークが目の前の奴を睨みつける。睨まれた男は不敵な笑みを浮かべ、口を開いた。
「お前ら、最近ギャング始めたらしいじゃねぇの。噂になってるぜ?」
「だから何だよ?」
「俺たちは『ラゴス』っていうグループなんだけど、知ってるよな?」
「……!」
ラゴスというのは、この街でも相当大きい方に分類されるギャンググループで、一般人にも手を出すことで悪名高く、コンビニなどの店舗強盗なんかでもよく出てくる名前のグループだ。
「……だ、だからどうした?」
「いやぁー、ギャングの先輩として色々教えてやらないとと思って……なっ!」
「ぐふっ!?」
ルークは突然のパンチを避けることもできず、顔面に拳を食らいその場に倒れる。
「……っ!ルーク!……ぐぁっ」
「う゛っ」
マイクとケネスも、周囲の奴らから蹴りやパンチを食らい、地面に倒れ伏した。
「へっへっへ……コイツらには調子に乗った罰ってのを教えてやらねぇとなぁ。よし、連れてけ」
「あいよ」
「ぐっ……」
ルークは、ポケットの中で必死に携帯を弄っていた。
その頃、俺たちは隠れ家でゆったりとしていた。
「さーて、アイツらは上手くやってけるもんかなぁ?」
「ま、そこら辺はつるんでるんだしサポートしてやってもいいんじゃねぇの?俺ら先輩だしな」
「そうだな……」
デイブは何気なしに携帯をいじっていると、唐突に着信音が鳴り響く。
「んお、ルークからだ。なんだ?」
「何か忘れ物でもしたのかな?」
「さぁ?」
デイブは電話に出る。
「はい、もしも……」
『オラァっ!』
そんな声と何かが殴られるような音が聞こえる。
「……っ!?」
デイブが血相を変えた。
「どうしたんだデイブ?」
「まずいぞ!ルークたちが誰かに襲われてる!」
「おいマジかよ!?」
「助けてやらねぇと!……でも、アイツらどこにいるんだ?」
「分からねぇ……」
デイブが悩んでいると、ショーンが思い出したように言う。
「……そうだ!あのアプリ!」
「あっ!」
デイブは早速アプリを開いてみる。
「おおっ!通知が来てるぞ!」
「やっぱりか!どこだ!?」
地図を表示してルークたちの居場所を確認し、
「げっ」
と思わず口に出してしまった。
「ここは……!」
デイブも表示された場所を見て驚いているようだ。
表示された場所は、ファクターストリートB-12-5にある小さな製材所。
「ここって何なんだ?」
とショーンが聞いてくる。そうか、ショーンはよく知らないのか。
「ここは……『ラゴス』の支部だな」
「ラゴス?」
「この街でも相当大きい方のギャンググループだよ。いくつも支部があって、さながらマフィアみたいな規模だ」
「マジかよ……」
「またトンデモナイ奴らに目をつけられたなアイツらも……」
少しだけ間があいて、デイブが口を開いた。
「……んで、もちろん助けに行くよな?」
「あたりまえだろ?」
「もちろん」
俺たちはダチを助けないようなクズじゃないしな。
デイブがにっと笑う。
「……だろうと思ったぜ。よし、じゃあすぐに準備だ!」
「分かった!」
「おうよ!よーし、ラゴスに喧嘩売るぞぉ!」
俺たちは大至急準備を開始した。
俺はワゴン車に必要な銃や弾薬を積み込んでいく。
「AK47とショットガン……ショーン!ライフルは!?」
「ちょっと待ってくれ!今組み立ててるから!」
「デイブー!サブマシンガンはあるかー!?」
「あぁ俺が持ってるー!」
「なら大丈夫か。えっと、拳銃も良し。……あ、バット!」
俺がバットを車に積み込んだ所でショーンとデイブもやってきた。
「よし!すぐに出るぞ!一刻も早くルークたちを連れ戻さねぇと!」
「おう!」
俺たちはワゴン車に乗り込み、すぐに出発した。
ワゴン車は明らかに法定速度をオーバーしたスピードで、ファクターストリートへ向かって走る。
「……こりゃ、着く頃にはちょっと薄暗くなってくるな……」
デイブは運転しながら時計をチラリと見て言う。
現在午後5時。段々と日が傾いてきている。
「まぁ、やるしかねぇだろ。あ、でもショーン。お前は暗い中でも撃てるのか?」
「あぁ。ハンティングで暗い中で撃つのとかは慣れてるから撃てるぞ。安心してくれ」
「そうか」
「よし、もうすぐだ!お前ら準備しとけ!」
ついにファクターストリート付近まで来たようだ。俺たちは各々自分の使う銃を手に取る。デイブはワゴン車をゆっくり道路脇に停める。
「ここから200メートルの所だ。歩くぞ」
「うぃ」
「あ、グレン、コレ持ってけ」
デイブは俺にサブマシンガンを差し出してきた。
「お?良いのか?」
「今回は俺とお前もちょっと別行動するぞ。お前は製材所の裏から回れ。少なくとも拳銃よか心強いだろ?」
「まぁ、ショットガンも持ってくけど、ある方が心強いな。ありがたく借りとくぜ」
そう言って俺はサブマシンガンを受け取った。
「よし、じゃあ簡単に作戦説明だ。まず、ショーンはいつも通り高台から狙撃援護」
「分かった」
「俺は正面から攻撃ふっかけて気を引く。で、グレンは裏から入ってルークたちを探せ。もしも俺やショーンがルークたちを見つけたら、無線で教える。いいな?」
「りょーかい」
「無線の周波数はいつも通りな。よし、じゃあ行くぞ!」
「おう!」
俺たちは作戦を開始した。