3:『ダチ公救出作戦』
「あのチョーシ乗った奴らどうする?」
「ボコってそこら辺に捨ててくれば良いだろ」
「なんなら殺っちまった方が早いんじゃねぇか?」
製材所の入り口にはラゴスのメンバーが立って喋っている。見たところ数は少ないようだ。多分建物の中にいるんだろう。
デイブは早速行動を開始した。AK47を入り口の奴ら目掛けてぶっぱなす。
「なん……っ!?」
言葉を完全に発する前に、身体や頭に弾丸を受けて、入り口の奴らは動かなくなった。
「よーし、始まったぞぉ!ショーン!援護頼んだぜ!」
『もちろん!』
デイブは丸太が積み上がった場所に身を隠す。
「襲撃だ!殺せ!!」
案の定ラゴスの奴らがワラワラと製材所の中から出てきた。その数、十数名。全員拳銃やらショットガンやらを持っている。
「ほら、ショーン。出番だぞ」
製材所の向かい側にあるビルの屋上。屋上に立っている広告看板の下。
「了解」
ショーンはKar98kのボルトを引き、弾を装填して構える。しっかりと構えて、スコープを覗き込む。横風も少し考慮して照準を定め、引き金を引き絞る。轟音とともに弾丸が打ち出され、敵のうちの1人の頭が弾けた。
「よし」
ボルトを引くと、空薬莢が排出される。ボルトを戻し、次の標的へ。またしっかり照準を定め、引き金を引き絞った。
デイブはショーンの狙撃で頭が弾ける敵を見て、短く口笛を吹く。
「ヒュー、やっぱりショーンは上手いなぁ。……さてと」
デイブも丸太の陰から身を乗り出し、敵の集団目掛けてAK47を撃ちまくる。
もう合わせて10人は殺ったが、製材所からはまだ出てくる。デイブはまた丸太の陰に身を隠し、AK47の空弾倉を外して新しい物に付け替える。
「結構多いなぁ……グレンの方にあんまり敵が行ってないといいんだが……」
その頃俺は製材所の裏口にたどり着いた所だった。
「おぉ、もうドンパチ始まってんな」
建物の向こうから聞こえる銃声を聞いて独り言を言う。
「……さて、行くか」
俺は製材所の裏口のを開けた。
裏口から入ってみると、中はガラリとしている。多分表に行ってるんだろう。
「デイブたちには感謝だぜ。……さーてと、ルークたちはどこにいんのかな?」
小走りで部屋へと繋がるドアを片っ端から当たってみる。その時、偶然戻ってきたラゴスのメンバーと遭遇してしまった。
「誰だテメェ!!」
「うおっと!?」
咄嗟に壁に隠れると、拳銃の発砲音とコンクリートの壁に弾丸がめり込む音がする。
「危ねぇ危ねぇ」
「おい!こっちから入ってきてやがるぞ!!」
どうも仲間を呼ばれてしまったらしい。ラゴスのメンバーがさらに4~5人ほどやってくる。
(うっわ、めんどくさ)
デイブからサブマシンガン借りてきてて良かったかもしれない。俺はサブマシンガンをコッキングして、適当に壁の陰から廊下に向かって弾をばら撒く。向こうから悲鳴が聞こえる。どうやら2人仕留めたみたいだ。
「おらぁ!」
壁の陰から出て、弾をばら撒きながら反対側へと滑り込む。ばら撒いただけだが、運良く敵は3人も当たってくれたようだ。残るは1人。
「ああクソッ」
残された1人はどこかに逃げていった。
「お、ラッキー」
今のうちに進もう。俺はまた製材所の奥へと走り出した。
製材所の向かいのビルの屋上。ショーンは確実にラゴスの奴らを撃ち抜いていく。
「ふぅ、結構数も減ってきたなぁ」
もう三十数人程殺って、段々数も減ってきた。
『ショーン、俺の援護は少し休んでいいから、ルークたちを探してくれ』
「了解」
ショーンはスコープ越しに製材所の窓を右から順に覗いていく。
(……んー……ここから見える位置にはいないのか……?)
一番左の窓を覗いてみると、ボロボロになったマイクの顔が見えた。すぐにデイブとグレンに無線で連絡する。
「いた!いたぞ!こっちから見て一番左の窓から見えた!」
「りょーかい」
俺はショーンの無線を聞いて走り出す。
(ショーン側から一番左ということは……ここから一番奥だな……)
俺は1度壁の陰で立ち止まり、サブマシンガンをバッグに仕舞ってバットを手に持つ。そして再度走り出した。
「あっ!テメ……」
「オラァ!!」
「ヴっ」
曲がり角で1人出くわしたが、近かったのでさっさとバットで殴り倒す。廊下をダッシュで走り抜け、目的地と思われる部屋のドアが見えてきた。ドアの前には2人いる。
「何の用だテメェ!!」
「ぶっ殺してやる!」
ここの奴らは銃を持ってないのか、ナイフを取り出して襲いかかってきた。まぁ、銃じゃなければ特に問題ない。
「うぉらぁ!!」
まず一人目が斬りかかって来る。左に避けてバットで顔面に一撃。綺麗に顔面に入って、そいつはそのまま後ろにすっ転ぶ。続くように2人目が来るが、今度は低い姿勢からバットのグリップの先で腹に打撃を叩き込む。
「う゛っ」
「オラァ!」
怯んだ隙にバットを振り下ろし、頭をかち割ってやった。
もう一人の方に向き直ると、ちょうど立ち上がろうとしているところだった。
「ふんっ!」
容赦なく頭頂部目掛けバットを振り下ろし、トドメを刺す。
「ふぅ……さーてと」
俺はバットについた血を振り落としながら、目的地のドアを見据える。ゆっくりとドアに近づき、壁の陰に隠れながらドアを開けた。
ルークたちは縄で部屋の柱に縛り付けられていた。リンチされたのだろう、身体はボロボロだ。
「テメェか。ここに入り込んできてやがるってのは」
そう言いながらルークたちと俺の間に男が割って入る。
「テメェどこのモンだ、え?」
「スラッガーズだ」
「スラッガーズだぁ?……あー、思い出したぞ。最近噂になってる奴らだな?」
「ふーん、噂になってんのか……」
「……で、そのスラッガーズが何の用だ?え?」
「実はさ、そこにいる奴ら、ダチでよぉ。ちょっと用事があったから、迎えに来たんだ」
「ふざけんじゃねぇぞ!?テメェらはラゴスにケンカ売ってんだぞ!分かってんのか!?」
「あ?んなこた分かってら。でも一つ言わせてもらうけどよ、俺らのダチを拉致ってんのはテメェらだ。ここまでいっぱい群れねぇと何も出来ねぇクズどもには分かるだろ?」
「んだとゴラァ!?もうガマンならねぇ!ぶっ殺してやる!」
そう言って男は折りたたみ式のナイフを取り出した。
俺はバットのグリップを握り直す。
その後数秒の沈黙が広がる。
「死ねぇええ!!」
男が間合いを詰め、ナイフを突き出してくる。俺はバットのグリップから左手を放し、左手でナイフを持った手を受け流し、相手の勢いを利用して腹目掛けて蹴りを繰り出す。
「ふんっ!」
男は身体を翻して蹴りを躱す。その時に腕を捻ることで俺の手を振りほどいた。
あいこのように見えたが、次の瞬間勝負は決まった。向こうが身を翻したときに、顔面目掛けて一か八かでバットを投げたのだ。バットは回転しながら勢いよく男の顔面へと飛来する。
「が…っ!?」
蹴りを避けた直後で気付いていなかった男は避けることもなく、バットは顔面に衝突した。その時にナイフを取り落とし、男は顔を押さえて地面にうずくまる。
「よっ」
地面に落ちたナイフを蹴って遠くにやり、バットを拾い上げた。
「ぐぉぉ……きたねぇぞ……」
「汚ぇもクソもあるかよ」
俺はバットを振り上げる。男はそれを見て「ヒッ」と短い悲鳴をあげたが、知ったこっちゃない。
俺はバットを思いっきり振り下ろした。
「……ふぅ」
俺は頭をかち割られた男の死体を前に、額の汗を拭い、バットの血を振り落とした。
「さて……と」
俺はルークたちの方を見る。
「お前ら無事か?」
「ま、まぁ……なんとか……」
ルークがアザのある顔でにっと笑う。
「そうか」
俺はさっき男が使っていたナイフを拾い、ルークたちを縛った縄を切った。
「先゛輩゛ぃい゛い」
3人が俺に半泣きで抱きついてくる。
「あーはいはい。礼は後でいいからとにかく帰るぞ。お前ら動けるな?」
「もちろん!」
「当たり前だぜ!」
「おう!」
3人ともボロボロながらも元気に返事をしてくれた。
「よし、じゃあ、これ使え。拳銃とショットガンだ。まだ敵がいた時にはそれで殺れ」
「りょーかい!」
ケネスがショットガンを受け取り、ルークが拳銃を受け取った。
すると、まだ居たのだろうラゴスのメンバーが一人入ってきた。
「テメェらぶっ殺してや……」
言いかけた所で窓が割れ、ソイツは身体をくの字に折り曲げて吹っ飛んだ。
「なっ、なんだ!?」
マイクがあたふたと周囲を見回す。
「ショーンの狙撃だな。ショーン、助かったぜ」
俺は無線でショーンに礼を言った。
『いいよ別に。それより、今デイブが正面から入って行ったから、中で合流してくれ』
「了解。よし、行くぞ」
俺は3人に合図して部屋を出た。
廊下を警戒しながら進む。が、敵はほとんど殺ってしまったのか、見当たらない。
「おーい、グレーン!」
途中でデイブと合流した。
「お前ら無事だったか!?」
「おかげさまでちゃんと生きてるぜ」
「そりゃ良かった。グレン、敵はいたか?」
「いや、いなかった」
「そうか。じゃあ、さっさとずらかっちまおうぜ」
「そうだな」
そこでショーンから無線が入った。
『おい!遠くからサイレンの音がするぞ!段々近付いてる!』
それを聞いてデイブが舌打ちをした
「チッ……さすがにド派手にやりすぎたか。多分サツが来るぞ!急いでズラかろう!」
「あいよ!」
「ショーン!少し単独行動で頼む!とりあえずこの場から離れるぞ!」
『分かった!じゃあ、また後で!』
そして無線が切れる。
「よし、それじゃあ行くぞ!」
俺たち5人は走って裏口へと向かった。
裏口を抜け、すぐに向かい側の狭い路地へ逃げ込む。すると、案の定パトカーのサイレンが近付いてきて、製材所の表の方で止まった。
「ふぅ……んじゃ、さっさと逃げるか。クルマはこっちにある。ついてこい」
「りょーかい」
「うぃーっす」
俺たちは車の方に戻ると、ショーンは既にクルマの場所で待っていた。
「おつかれ」
「うぃ、おつかれ。ほら、お前ら乗れ」
「サンキュー」
ルークたちとショーンは後部座席に乗り込み、俺は助手席に乗り込む。デイブは乗り込むとすぐにエンジンをかけ、ワゴン車を発進させた。
「骨折とかは無いみてぇだし、とりあえず俺らの隠れ家行くぞ。病院に行くと下手すりゃラゴスの奴らに捕まりかねないかもだし」
デイブはハンドルを握り、法定速度ギリギリで走りながら言う。
「……本当にありがとうございました……!」
ルークたちはグスグスとべそをかき始めた。
「おいおい泣くなよなー。お前ら男だろー?」
俺はそう言いながら後ろの席の3人を見る。
「……でも……俺たちこんな……情けないんじゃ……先輩たちに見せる顔が無くて……うっ、うぅ……しかも、わざわざラゴスにケンカ売らせちゃって……」
すると、デイブがため息をついて、口を開いた。
「情けないとか言うな。あと、ラゴスにケンカ売ったとか、俺ら気にしてねぇから」
「……え……?」
3人は顔を上げてキョトンとする。
「どうせいつかはドンパチするんだったんだろうしな。……それに『やばい時にはお互い助ける』って言ったろ?何があろうと助ける。だって俺らはダチ……いや、ブラザーだろーが。だから、メソメソ泣いてねぇで、ワイワイ騒ごうぜ?いいな?」
それを聞いた3人は、涙や鼻水を拭いてにっと笑う。
「おう!」
「それでよし。……よーし、んじゃ、さっさと帰って飯食うぞー!」
「「「「「おーっ!」」」」」
やっぱり賑やかなのが俺らには合ってる。帰りのワゴン車の中、俺は改めてそう思った。




