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SLUGGERS!!  作者: ヒラコー
第1章
1/25

1:『俺たちのシマ』

この物語はギャングを主人公にしたストーリーです。犯罪描写、銃撃戦描写やそれに伴う表現が苦手な方はご注意ください。

「んあぁ……ねむ……」

 だらしなくベンチにもたれかかる。すると、後ろから同じくらいの年の男に話しかけられた。茶髪で眼鏡をかけ、濃紺色の帽子をかぶっている。

「おーいグレン。何眠そうにしてんだぁ?」

 俺はこの顔とはよく馴染みがある。

「なんだデイブか……別に俺の勝手だろ?」

「まぁな」

 へらへらしながらデイブは俺の横に座る。そして話を切り出してきた。

「…………覚えてっか?俺ら『スラッガーズ』結成から、今日で1年になるんだぜ」

 俺とデイブは2人でギャングのグループを結成している。いつかはデカイグループに成り上がってやるって結成してから今日で1年だったか……

「あー、そういや結成したの去年の今頃だったっけ?」

「ったく、ハチャメチャな1年だったよなぁ」

「そうだな……」

 ギャングをやる、それにあたって敵対するギャングも当然沢山居る。この1年間ギャング間で戦争のような過激な戦いが繰り広げられていたのだ。現在は警察の介入ということで落ち着いたのだが、本当に1年間大変だった。生きてたのが奇跡だと思うくらいだ。しかしまぁ、これはまた別の話。

「……なぁ、ここでボケっとしてねぇで、メシ買って隠れ家に帰ろうぜ」

 そう言ってデイブはベンチから立ち上がった。

「隠れ家っつってもお前の家だけどな」

「いいじゃねぇか別に。どうせ俺とお前しか住んでねぇんだ」

「まぁな……」

 俺も続いて立ち上がり、横に並んで歩き出した。

 俺は家族は(生きては)いるが、虐待やらなにやらを受けて家出した。デイブは火事で両親と妹を亡くしたらしい。まぁ、原因はどうであれ俺たちは自力で生きていくしかない。それでギャングをやるようになった。

 デイブは保険により家は修復されたが、家族を亡くした上にこれからの食い扶持稼ぎの為に高校を中退。デイブと俺は元々同じ高校に通っていたのだが、俺も家出を機に高校中退。その日が偶然にも同じ日で、高校の前のベンチでぼーっとしてたデイブに俺が話しかけたのが始まりだった。

 それからなんやかんやあって、2人でギャング『スラッガーズ』を結成した。

 今ではデイブの家に居候させて貰って『隠れ家』として使っている。

「今日のメシ何にする?」

 デイブがこちらを見て聞いてきた。

「安い肉でステーキでも焼こうぜ」

「そだな」

 途中スーパーに寄って安い(そして固い)肉を2枚買って隠れ家へと帰った。


 帰って安い肉のステーキを焼いて2人で晩飯にしていると、デイブがこんな話を持ち出してきた。

「なぁ、知ってるか?」

「何を?」

「最近『マグナム・クラックス』の奴らが俺らのシマを狙ってるらしいぜ」

「マジかよ?」

 『マグナム・クラックス』というのは、隣の地区を縄張りにしているギャングのグループ。薬物の密売でちょくちょく名前が出てくるグループだ。

「……にしてもなんでマグナム・クラックスが俺らのシマを?」

「どーせ『たかが2人なら簡単に殺れるだろ』とでも思ってんじゃねぇの?」

「チッ……ムカつくなぁ」

「返り討ちにしようぜ」

「あたりめぇだろ。んじゃ、早速準備しようぜ。何がいる?」

「銃がいる。チャチな拳銃やバットだけじゃ心もとないだろ」

「そうだな。んじゃ、今日はさっさと寝て、明日早速買いに行こうぜ」

「あいよ」

 俺らは順番にシャワーを浴びて、早目にそれぞれのベッドに入った。


「…………ん」

 目覚まし時計の音で目が覚めた。ベッドから出てキッチンに行く。すると、デイブは既に朝飯を食っていた。

「お、起きたか。おはよう」

「おはよ」

 何気ない挨拶を交わして、朝食のコーンフレークを食べる。

 朝は高確率でコーンフレークだからか段々飽きてくる。のだが、ぶっちゃけ2人とも味を時々変えれば大丈夫な程度にはコーンフレークが好きなので、特に問題はなし。

 コーンフレークを食べながら、デイブと今日の予定について話をする。

「今日は銃砲店に行くんだろ?」

「あぁ。いつもの店にな」

 俺たちの行きつけの銃砲店が大通りから二つほど外れた通りにあり、一応護身用に持っている拳銃の弾はいつもそこで買っている。何故かって?余計な詮索を入れてこないからだ。ギャングってのはあんまり銃を何に使うのか聞かれたくないのである。たとえただの護身用だったとしても、聞かれたらなんとなく嫌な気分になるのだ。

 その銃砲店の店主は、特に余計な詮索を入れずに、条例で許可されているちゃんとした銃器を売ってくれる。しかも数十~数百ドル他の店より安いこともある。

「んじゃ、さっさと朝飯食って行こうぜ。もう店は開いてんだろ」

 そそくさと朝飯を済ませ、服を着替えて隠れ家を出た。

 俺たちは一応運転免許は持っているので、車で出かけることにした。今日はデイブに運転してもらう。

「……んで、どんな銃買うんだ?」

「アサルトライフルとショットガンかな。安くてもちゃんと使えるやつ」

「ふーん……ま、店に行ってから考えた方が楽だな」

「そうだな」


 車が走ること5分、目的地の銃砲店前に車が止まった。車を降りて銃砲店に入ると、いつも通りおっちゃんが商品を磨きながらテレビを見ていた。扉の音に気付くと、こちらを見てにっと笑って椅子から立ち上がる。

「らっしゃい。久しぶりだな、2人とも。珍しく弾買いにこねぇもんだから、死んだんじゃねぇかと心配してたぜ」

「おいおいおっちゃん、俺たちが死ぬわけねぇだろー?こう見えて俺たちゃ縄張り持ったギャングなんだぜ?」

 デイブが軽い口調で応えるが、おっちゃんも「はいはい」と軽く流す。やけに俺らみたいな奴の扱いに慣れてんだよなこの人……。

「……んで、今日は何が入り用なんだい?」

 その質問に対しては俺が答える。

「アサルトライフルとショットガンが要るんだ。どんなのがあるか見たいんだけど」

「アサルトライフルとショットガンねぇ。他に条件は?」

「できれば安いのがいい。けど、すぐ壊れても困るから、ちゃんと動くやつで」

「あいよ。商品持って来るからそこの椅子にでも座って待ってな」

 おっちゃんは商談用のテーブルの方を指さす。俺とデイブが椅子に座ったのを見ると、商品を取りに店の奥へと入っていった。


 5分ほど経って、おっちゃんが長物の銃をいくつか持って来た。

「まずアサルトライフル。安いのがいいって要望があったから、とりあえずうちの店で一番安いやつと、中間くらいの値段のやつ」

 テーブルの横にショットガンだと思われる銃を置いて、テーブルの上に2丁のライフルを置くと、おっちゃんも椅子に座った。

「じゃあ、まず安いのは?」

「まずは『AK47』。基本設計は半世紀以上前で、冷戦の時に大量生産された物の余り在庫が多いから、値段はめちゃくちゃ安い。設計的な理由で命中精度は低いし、反動は比較的大きいけど、タフで泥水につけても動く。コイツは故障も滅多に起こさないし、ドンパチやるなら使えるぞ」

「へぇー。次のは?」

「『M4カービン』っていう銃でな、米軍や警察の特殊部隊に使われてるアサルトライフルだな。軽いし精度も十分。ただしAK47に比べると故障に弱いし値段がちょっと張っちまう」

デイブが顎に手を当てて考える。

「んー…………それぞれ値段は?」

「AK47が106ドル、M4カービンが474ドル」

「よんひゃっ……!?……うーん…………グレン、どっちがいい?」

 デイブが俺に話を振ってきた。

「安くて頑丈な方がいいんじゃね?精度高くたって俺らに当てられるのかイマイチ微妙なところだし」

「うーむ…………じゃあAK47で」

「あいよ。まいどあり。じゃあ、後で梱包するぜ」

「あっ、そういえば」

 デイブが思い出したようにおっちゃんに話しかける。

「アサルトライフルってゲームみたいに連射できるのか?初めてアサルトライフルなんて買うもんだからよく分かんなくてさ」

「軍用のものだったらしっかり連射できるぞ。ただ、こういう民間向けに売られるものは、条例で連射ができないように改造しなきゃならんからな。セミオートで射撃はできるが、フルオートで連射は無理だ」

「そうか……」

 デイブはちょっと残念そうな顔をする。それに対しておっちゃんが笑いながら言う。

「はっはっは、ゲームと違って初心者はどうせ連射したって狙いは定まららねぇんだ。まずセミオートに慣れな」

「……はいはい。頑張りますよ、っと」

 デイブはちょっと悔しそうに頭の後ろで手を組んで天井を見る。『初心者』という単語が刺さったんだろう。

「まぁ、そう気を落とすな。心配しなくても後で奥の射撃場で使い方は教えてやっからよ」

 からかうようにおっちゃんは笑った。


「……んで、次はショットガンなんだが……」

 少しおっちゃんが言いよどむ。

「なんだよ。はやく言えよ」

「ショットガンは今うちの店にこれしか在庫が無いんだ」

 デイブがすかさず反応する。

「えー、マジかよー……。……じゃあそれでいいや。それ、なんていうショットガンなんだ?」

「『M870』。警察や米軍でも使われてるショットガンだ。パトカーのトランクに入ってるショットガンあるだろ?」

 たしかにショットガンが載ってるな。

「あれの木製グリップモデルだ」

「へぇー。んで、いくらなの?」

「190ドル」

「よし、買った。弾はなんか種類とかあったりする?」

「沢山あるぞ。まぁ、うちで扱ってるのは00バックショット散弾とライフルスラグ弾だな。あとで練習する時に教えてやる」

「OK。じゃあ早速教えてくれ」

「あいよ。じゃあ2人とも奥の射撃場について来な」

 その後射撃場で2時間ほど射撃練習をしてから弾をそれなりに沢山購入して帰路についた。

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