第2話~組合~
家を追い出されたあと、どれくらい歩いただろうか。
気づけば森の中にいた。
頭の中は真っ白だった。
寒い。
腹が減った。
足が痛い。
でも、それ以上に胸が苦しかった。
(……なんでだよ)
俺はただ、生まれただけなのに。
気づけば視界がぼやけていた。
そのまま地面に倒れ込む。
(……もう、いいか)
意識が暗闇に沈んでいった。
――――――――――
ガタン、ゴトン。
揺れを感じる。
ゆっくりと意識が浮上する。
(……生きてる?)
目を開けると、天井があった。
木製の天井。
体の下は柔らかい布。
どうやら馬車の中らしい。
「起きたか」
低い声が聞こえた。
視線を向けると、そこには銀髪の青年が立っていた。
整った顔立ち。
感情の読めない表情。
そして何より――
(強い)
本能的にそう感じた。
「あの……貴方は誰でしょうか?」
声が震えているのが自分でも分かった。
「俺はクルデーリス。組合の幹部だ」
短い名乗りだった。
「組合……?」
聞き返すと、男は淡々と続ける。
「お前を組合に加入させるために馬車に乗せた。拒否権はない」
え?
「……え?」
理解が追いつかない。
「質問はあるか?」
「あの、この痣って……何なんでしょうか」
俺は震える手で鎖骨を指した。
紫色の模様。
男は一瞬だけそれを見て言った。
「魔性紋だ」
初めて聞く言葉だった。
「魔法使いにのみ現れる異常現象。発現した者は魔女、または魔人と呼ばれる」
「……魔人?」
「蔑称だ」
淡々とした声。
感情がない。
「魔性紋を持つ者は常人よりも強力な力を得る。だからこそ恐れられ、迫害される」
胸が締め付けられる。
「そして組合とは――」
男は少しだけ間を置いた。
「お前のような者が集まる場所だ」
同じ……?
「……もうすぐ魔王城に着く。質問の続きはその後だ」
そう言われ、俺は黙るしかなかった。
馬車はゆっくりと進み続ける。
窓の外には巨大な城が見え始めていた。
俺の新しい人生は――
ここから始まるらしい。




