第1話~追放~
「ヴァイオレット!産まれたぞ!良かったな、男の子だ!」
遠くから声が聞こえる。
ぼんやりとした意識の中で、誰かに抱き上げられている感覚があった。
「本当?……ふふ、ありがとう」
優しい女性の声。
「じゃあ、この子の名前は――ブライアね」
(……え?)
頭の中に疑問が浮かぶ。
(ブライア?誰のことだ?)
体が動かない。まぶたも重い。
けれど、意識ははっきりしている。
(なんで俺、意識あるんだ?)
そこで気づく。
(……もしかして)
(異世界転生ってやつか?)
驚きと同時に、胸の奥が少しだけ高鳴った。
――――――――――
その後の生活で分かったことは多い。
ここは剣と魔法が存在する世界であること。
紙は貴重で、本はほとんど存在しないこと。
そして俺の名前はロイ・ブライアというらしいこと。
親戚らしい大人たちが剣を振るい、魔法を見せてくれた時は本気で興奮した。
(ここなら……俺もヒーローになれるかもしれない)
そんな期待を抱きながら、俺は日々を過ごしていった。
だが。
十二歳の誕生日を迎えた頃から、体に妙な違和感を覚えるようになった。
痒いような、熱いような、不快な感覚。
鏡を見ても異常はない。
「気のせいか……」
そう思って放置した。
それが間違いだった。
一週間後。
鎖骨のあたりに、紫がかった痣が浮かび上がっていた。
見たことのない模様。
嫌な予感がした。
俺は母――ヴァイオレットのもとへ向かった。
「母さん、これ……」
言い終わる前だった。
母の顔が歪んだ。
これまで見たことのない表情。
恐怖。
嫌悪。
そして――絶望。
次の瞬間。
氷の槍が、俺の足元に突き刺さった。
「……え?」
何が起きたのか分からない。
「ブライア!!」
母は叫んだ。
「もう私たちの前に立たないで!!」
声が震えている。
怒りじゃない。
恐怖だった。
「お願い……来ないで……」
その言葉に胸が締め付けられる。
「あの人には事情を説明してあげるから……安心して、どこかで死んでちょうだい」
頭が真っ白になる。
「さすがに……実の息子をこの手で殺すのは……気味が悪いもの」
理解が追いつかない。
何を言われているのか分からない。
ただ一つだけ分かった。
俺は――
拒絶された。
こうして俺は、家を追い出されたのだった。




