序章~プロローグ4~
蓮は一週間前に琴音と話したことを思い出していた。
「ねぇ、お兄ちゃん。ちょっと話したいんだけど」
「どうした? 改まって」
夕食が終わったあと、一緒にテレビを見ていた琴音が、いきなり真剣な声色で蓮に話しかけてきた。
「なんか……、最近、感じるの」
「えっ、何が?」
「気配……、視線とか」
「えっ? ストーカー? よし、分かった兄ちゃんがぶっ潰してやるよ」
「いや、たぶんそうじゃない。何か別の……」
「幽霊?」
「怖い怖い。でも、かもしれないの。あぁ! 自分で言っててもかなり怖い」
琴音の顔がすこし青ざめてしまっている。
昔からこういうことは気にしない琴音だったが、思ったより深刻なのだろうか。
「父さんの血が濃く出たか? お祓いとか行ってみる?」
「お父さんは適当言ってただけでしょ。でも、そこまでしなくてもいいと思う。多分、だいじょうぶ」
(あれ以来あんまり言わなくなったから、多分大丈夫だと思うけど、気休め程度だけど、お土産としては十分かな)
「お値段三○○円です。使う時は砂を手で揉んでから使ってくださいねー」
蓮は小さいガラス瓶に入った魔除けの砂を購入した。
使う時の注意事項は意味がわからなかったが、そういうルールがあるのだろう。
素人の蓮にはよくわからなかった。
翌日、待ちに待った自主研修!
どこ行こうが自由! 何しようが自由な修学旅行のお楽しみ!(限度と校則とマナーは守る)
舞台は京都! 快晴の中、田舎者の冒険が始まる!
「六道さん……、なんでこうなった?」
迷った。
人が行き交うど真ん中で、迷った。
蓮はもとより、他の二人も戸惑いを隠せないでいた。
「ん~? おかしいな」
「六道さんって方向音痴?」
「いやいや、京都って碁盤の目の街路だから、出発地点さえ覚えてたら、そこまで迷うはずないんだけど」
後藤さんの疑問とほかの何かを含んでいる質問に、理屈っぽい回答をする美輪だが、
「六道さんが土地勘ないからでしょ。俺たちだって初めての道だったら迷うし」
「いや、私何回か京都来たことあるから、土地勘はまぁある方だよ。白沙君は地図読めーー」
美輪の言葉が、地図から蓮に振り向いた瞬間に、言葉が止まった。
決して蓮に見惚れたわけではない、その証拠に美輪の目線は蓮の後ろに広がる風景に向けられていた。
「どうしました?」
「人が……、いない」
言われてみれば、確かに気付いた時には、人通りが少なく……、いや、美輪の班四人以外の人が消えていた。
美輪の顔は、驚愕に染まっていた。
「六道さん大丈夫?」
「……げて」
「はい?」
「ここから逃げて‼︎」
刹那、ぽつぽつと雨が降る。
去年と同じ匂いの、雨が。
「これは……」
誰かが呟く、美輪以外の三人の中の誰かが。
ひたひたと、ひたひたと、何かが来る。
雨の音に紛れて、現れた。
影、雨の中に出力された、人型の影。
雨で構成された身体。その影が、現れる。
その姿を見て、ある者は恐怖、ある者は驚愕、ある者は不信、皆負の感情ではあるが、美輪だけは、敵意を影に向けていた。
「誰? キュベレーの人間?」
「いや、ガイアの化け物だ」
影から声が聞こえる。
「珍しいわね、地球側が来るなんて」
美輪はそう言い、眼帯に手を掛ける。
「いや、我々の目的はアンタじゃない」
「……?」
「そこの男だ」
「ッ‼︎」
影は蓮に指を差した。
それに美輪は驚愕の表情を蓮に向ける。
「え? 俺?」
これまで、理解できない会話を繰り広げていた二人を遠い目で見ていた蓮は、間の抜けた声を上げた。
「あぁ、正確に言えば、お前の持っているものが欲しい。小瓶に入った、砂を持っているな?」
「あぁ……、あれ」
「白沙君、砂って?」
「妹へのお土産に買ってさ、魔除けの砂。でもあれは部屋においてきたよ」
「では、そのポケットに入っているのは何だ!」
「ポケット?」
蓮はズボンのポケットに手を入れた。
「……何で?」
そこには、昨日買った魔除けの砂があった。
「それを速やかにそこにおけ。従えば何もしない」
「白沙君、……置こう」
「……分かった」
美輪もいつもとは違う雰囲気で言い、何かを感じた蓮は、指示通り瓶を置いた。
その瞬間、瓶が割れた。
その中入っていた砂は、急激に数を増やした。
一瞬で小瓶の中には収まらない量に。
蓮の手に砂が触れるのは避けられなかった。
その砂は、触れたものを、侵食した。
地面を、蓮の身体を砂に変えた。
手が崩れる。
「ーー????!!!!!」
その叫びは、声にならなかった。
「――ッ‼︎」
影が動く、蓮に手をかざす。
刹那、これまで広範囲に弱く降っていた雨が、消え。
蓮の中心半径一メートルの範囲だけ強く降る。
「やめろ! ガイア‼︎」
美輪が叫んだ。だが彼女にはこの状況を打開する術は持っていない。
砂は雨で固まる、地面の侵食は止まった。
蓮の身体は、二つの力で消えていく。
雨のあたった場所は溶けていく、まるで酸性雨の如く。
身体が砂と化し崩れていく、手から徐々に風化するように。
蓮はこれを現実だとは思わなかった、夢なんだと、そう
思いたかった。
後に残ったのは、溶けることなく固まった砂溜まりと、人型に固まった砂。
小さく窪んだ地面と、ボロボロになった制服だけだった。
プロローグ
第〇章 最後の人間
フゥ〜〜〜終わったーーーー!!
最後のサブタイトルは、プロローグの隠されたサブタイトルみたいなものです。
一体誰が最後の人間なのでしょうか?
謎が深まりますね!
考察してくれる人がいたら嬉しいですね!




