序章~プロローグ~
「砂」
細かい岩石の集合であり、通常、径2ミリメートル以下、16分の1ミリメートル以上の粒子の総称。
平凡な高校生白沙蓮は、それになった。
朝を起きる。
高校生にとって、平日の朝というのは雨の日ぐらいに、気分を憂鬱にさせる。
もっと寝たい。九時くらいまで寝ていたい。
勉強したくない。
いつもはそう言って、出席日数と、成績維持のため、重い腰を上げる白沙蓮だが、今日は違った。
――速い
百人が見れば百人がそういうであろう速さで、朝の支度をしていく。
いつもは六時に起きる蓮だが、今日は五時起きだ。
なぜなら、今日は高校生活最大のイベントといっても過言ではない、修学旅行の日だからだ。
だが、早く起きすぎた。
炊飯器のタイマーは六時半に鳴る。
「暇だなぁ」
蓮は、なぜこんな早く起きたのか――時間も潰せるので――自分を小一時間説教してやりたい気分になった。
昨日のうちに、着替えや、しおりなどの持っていくものはリュックにもスーツケースにも詰めたし、おこずかいも、財布の中に入っている。
何なら、そのすべてを自分の部屋から、リビングにすでに持ってきている。
――なんで、こういうときだけ行動が早いの!? と妹に怒られそうだが、仕方ないことだろう。
男の子とはそういうものだ。
などと考えている間に、時間は刻一刻と過ぎていく。
時間は早いと、最近になって強く実感している。
まるで昨日のように、高校の入学式を思い出せる。
「歳、……取ったな」
「何バカげたこと言ってんの?」
後ろを振り返ると階段から今年で十四になる妹――白沙琴音が、降りてくる。
「おはよう、……なんかシャキっとしてる?」
「あれだけドタドタしたら誰だって起きるよ」
琴音は寝ぐせった頭を掻きむしりながら、そう言った。
「あぁ、ごめんごめん」
「何? あぁ、って。謝罪の気持ちが感じられないんだけど」
「いやだって、もう六時半になるし。お前いつも起きている時間と変わんないじゃん」
「眠りが阻害されたの! もう一回寝ようと思ったけど、寝れないし……、兄ちゃんのせいだからね!」
この子何時に起きたんだろう、と思ったが、リビングに来たのが六時なので、そんなに時間は空いていないと思い聞くのをやめておいた。
「せっかく早く起きたんだ、朝飯の準備手伝え」
「え、やだよ」
「ご飯盛ることぐらいならできるだろ?」
「……はいはい、わかりましたよ」
連は、台所の前に立ち、目玉焼きを作り、そのあと、油をひきベーコンを焼く。
冷蔵庫の野菜室から、レタスを取り、皿に適当に盛り付けていく。
「兄ちゃんスープ飲んでいい?」
「いいよ。何にする? コーン、ポタージュ、枝豆の牛乳で作る冷製スープ、いろいろあるどー」
「うーん……、暑いから、牛乳のやつ飲んでいい?」
「オッケー、じゃあ俺にも作っといて」
「はいよ」
蓮がおかずと調味料を持っていった時には、ご飯と、スープがテーブルに乗っていた。
食事を終え、琴音は支度をしに、自分の部屋に戻っていった。
思えば、高校のみんなで宿泊学習に行くのは初めてだ。
連は去年の異常気象の日々を思い出す。
日本全土、その周辺国家に、雷雨が十日間絶え間なく降り続いたあの日々。
土砂災害、洪水、その他もろもろの災害により、日本だけで約百五十人が死亡、約二千人が行方不明になった。
幸い、連たちが住んでいる地域には近くに山などがなかったため、土砂災害はなかったが、断水などが続いたため、二人でかなりつらい思いをした。
そして、その日と宿泊学習の日がぶつかってしまったので、結局一年生の宿泊学習はしないまま二年生に上がった。
「フラグとかじゃないから、今年は起きないでくれよ」
七時
修学旅行の日は飛行機の関係もあって朝が早い。集合は七時四十分。
連の家は比較的高校と近いので、自転車を使えば五分で着くが、何日も学校にいないことを考えて、自転車は使わないで行く。
「とすると、歩きで十五分くらいだったか……」
ソファに座って一緒にニュースを見ている琴音に問いかける。
「琴音、兄ちゃん今日ちょっと早く出るけど、どうする?」
「何が?」
「いや、時間的都合でいつも先に、お前登校してるじゃん? だから、一緒に登校しないかって」
「……私、学校に早く行ってもやることないんだけど?」
やんわりと、思春期の中学二年生にしては優しく、やんわりと断られた。
「……オッケー。じゃあ行ってくるかな」
「お土産よろしくゥ!」
「はいよ、じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃい!」
お土産楽しみにしているな、と思いながら、玄関のドアを開ける。
だが、その琴音の願いが叶うことはなかった。
どうも初めまして。沼田です。
今回、自分の夢(本当に寝て見た夢)を題材に、小説を書いてみました。
投稿日は未定です。
初めてなので文章は大目に見てもらえると幸いです。
それではまた。