第零話 死隊
日本国東京首相官邸
大臣達と宮内庁長官、国家公安委員会委員長が非公開の会議に招かれていた。
この会議の理由が分かる者は少なかったので、数人が会議の目的についてひそひそと話していた。
そうして集合から10分経った頃宮内庁長官が話しはじめた。
「ここに居る中でこの会議が起こされた理由を知らぬ者が数人居るようなので、最初に話しておこう」
重苦しい空気が辺りを包んだ。
「ここに集めた理由はだな。それが宮内庁に新たな課を新設することが決まった」
皆が驚きに包まれた。静寂は一気に壊れ部屋で放たれる音が大きくなる。そして宮内庁長官が咳払いを一度するとすぐに静寂が舞い戻ってきた。
しかし一人の男が宮内庁長官に問いを投げかけた。
「それではここで、新設の課の話をし、私達の全会一致にて決まるということだな」
「いや、もう課を設立するのは決定事項だ」
再びどよめきが辺りを満たす。
「国会で予算案も認証していないだろう。何処か相談を受けている省庁はあるのか?」
周りへと一人の男が声をかける。そして男に反応するものが居た。
「私は前々から相談を⋯」
宮内庁長官は手を振り、総理大臣が喋るのを一旦は阻止した。そして宮内庁長官は周りを落ち着かせながら喋り始めた。
「皆、驚いていると思う。しかしこれは仕方ないのだ、国防に必須のことなのだ。周知の通り、2年前一人の特殊な人間、私達は能力者と呼んでいるが」
宮内庁長官は椅子に座っている大臣の周りを歩き始め、ソワソワとした様子で大臣達一人ずつに語りかけるようにして喋っていた。
「かの能力者は去年、彼ら公安部の活躍によって死に伏した」
宮内庁長官は国家公安委員会委員長を指差し、それから拍手をし、彼らの称賛をした。宮内庁長官が周りの大臣を睨み、そして睨まれた大臣達は急かされるように拍手をし始めた。
「それからというもの能力者は増え続けている。それは我々人類と日本にはあまりにも危険過ぎる」
そこに口を挟んだのは国家公安委員会委員長だった。
「我々公安でも能力の対策は行っているのだが?」
公安の中にはすでに能力対策課が設立されていた。そこでの新設される課ができるのだ、自分たちの実力を疑われていると感じたのだろう。そこに防衛大臣が口を挟んだ。
「我々も自衛隊の全力を使って能力者を対策している。それに宮内庁は疑問を呈しているのか」
「しかしあなた達の組織は能力者を殺すことは出来ない。そのために新たな組織が必要になった。公安の能力対策課、別班でも能力者を殺すことは出来ない。たとえアメリカのB2を使おうが、殺せない能力者は無數に現れる、さらにだな」
この室内にいる誰でもない声があたりを見回した。
「能力者を殺すことに否を唱えるバカどもがいるだろう。ならば暗躍して殺す者たちが必要なのだ。目には目を歯には歯を、ならば能力には能力をぶつけるしか方法はない」
閣議室の扉はもう空いており、宮内庁長官は客人をもてなすように先程の発言をした男の接待を始めた。
「この方が新設される新しい隊の隊長であり、この世界を変える発明をした御人だ」
東京都何処かの首都高
トラックに揺られる一人の少女がいた。少女は手に一つの小さな箱を持っていた。髪色は黒、瞳には黒に近い藍を携え、そんなモデルのような体型の少女は不満を虚空に漏らした。
トラックの中と言っても中にはタカそうな機械がごまんと入っており、サイバーパンクのような風体をなしていた。
「この箱に入っているのが私たちの武器って、ばっかじゃないの」
トラックの中から、閣議室にて接待されていた男の声の返事が飛んできた。
「開ければわかるはずだよ、己己己己踊夏」
そう言われると踊夏は文句をぶつくさ喋りながら箱の中身を見た。
「これは何」
踊夏が開けた箱の中にはICチップのようなものが入っていた。
閣議室
閣議室の中に一人の男が入室した。中の人間はスーツをピシッと来ているのに対し、男はよくある博士のような着こなしと髪型で入ってきた。
男は部屋の奥に置かれたモニターの前に立つと、備え付けのパソコンを弄るとモニターには踊夏が持っていた箱にあったICチップのようなものが入っていた。
「能力を対策するのに君たちは重火器を使っるがね、それじゃあ彼らの大半には効いてないなんてこと分かっているだろ、ならば能力には能力を使うしかない。こちらに写ってるのは能力者どもを皆殺しにできる兵器だ」
男は深呼吸を一度してから画面に写っているICチップのような何かを指さした。
「これこそが能力神経接続システム、私はNeural Ability Connection System呼んでいる、略してNACSでも良いかもしれない。これは能力者の体から精製することが可能だ。使い方だが⋯」
コンテナ内部
踊夏は虚空から聞こえる声の指示に従って、NACSを使おうとしていた。
「まず首の脊髄のあたりにNACSを近づけろ。それでいい、NACSはお前の神経の位置を自動的に把握し、首に吸い付いてくる」
声の言うとおりにしてみると、NACSは完全に踊夏の首に張り付いていた。
「最高だろ」
踊夏は自分の体が軽くなるのを感じていた。踊夏は辺りを見回し、そしてカメラが置いてあるのを発見し、カメラに向かって喋り始めた。
「これが能力?」
「そうだ、さあ任務の開始時刻だ」
スピーカーから聞こえる声は笑い始めそして、音をなくした。踊夏がいるコンテナは走っているというのにドアが開き、大量の風が入ってきた。踊夏は風に怯むこと無く出口付近まで近づき、少し周りの様子を伺ってから、夜の街へと一歩を踏み出した。
閣議室
そしてこの様子を閣議室のメンバーは見ていた。カメラが変わると夜の街を縦横無尽に走っている踊夏の様子が映っている。大臣達は信じられないといったような顔を次々と浮かべ、周りと相談し始めた。そして一人の大臣が声を上げた。
「これは本当に現実なんだな
男は流れていた映像を止めると「ああ」と一言だけ口にして宮内庁長官と位置を変え、詳細について宮内庁長官が事細かに喋りはじめた。
「こちらの資料をご覧ください」
ここに居る全員に一つの資料が手渡される。そこにはアメリカ大統領と中国共産党中央委員会総書記の署名が済んでおり、そこの上には『課の設立を認める』と日本語と中国語そして英語で書かれていた。
「そういうことだ。もう課の設立は宮内庁にとって決定事項となっている」
まだ反論をしたいのか大臣の一人が立ち上がった。
「仮にだ、その課が出来上がるとして名前は何だ」
「課の名前は秘密課となっている。そしてそこに所属する隊が一つ決められている、その名は⋯」
東京の何処か
踊夏は任務になっていた通り、一人の能力者を追いかけていた。その能力者は壁走りの能力を持っていると報告されていた通りに能力者は壁を走り、踊夏と一進一退の逃走をしていた。
能力者は半べそをかきながら、後ろから迫る殺戮者から必死に逃げようとしている内に、何故か言葉が口から溢れてしまっていた。
「なんで俺が追われなきゃなんねえんだよ。母さん俺死にたくねえよ、俺何も悪い事やってねえのによ」
能力者は半べそかきながら必死に必死に逃げていた。そうしているといつしか踊夏との距離が縮まり、そして後ろを確認しようと振り返ったら、踊夏と目があってしまった。声が漏れ出すのを防ぐために口を抑えながら、もう逃げられないと能力者は悟り、腰をがっくりと落としまった。
「なんでこんな目に⋯」
踊夏は何も答えない。
「俺何もしてねえだろ!答えろよ!」
能力者は一周周り、暗い路地にて踊夏に対して声を荒げ、そして丁寧なことに踊夏は回答を死にゆくものに残した。
「あなた達は生きている時点で罪だったのよ。あるでしょハンセン病患者の家族とか黒人とかさ、彼らは昔生きているだけで罪だった。だからあなた達は邪魔なの、人間の停滞にとってね」
能力者は涙を流しながら言葉を紡いだ。
「生きている時点で罪って何だよ。お前も能力者だろうが⋯」
踊夏は笑いながら答えた。
「これは借り物の力だもの、それにあなた達を殺すための武器なの、物に罪はないでしょ。あるにしても物を作った張本人に罰が下る」
踊夏は腰に携えた拳銃を取り出した。
「あなた達の罪の償い方は死だけ」
能力者はの涙は枯れ、いつか恨みを果たすために問いをを考え、導き出した。
「お前は何なんだ」
踊夏はニヤッと笑いながら、能力者の最後の問いを答えた。
「私たちは⋯」
場所は違ったが男の声と踊夏の声はピッタリと重なった。
「「『死隊』」」
弾が発射された音はサイレンサーにかき消され、一人の能力者は回収され、一人の人間と人間にあらずものは青い光の中へと消え去っていった。
『死隊』それは全ての能力者を殺すまで止まらない。




