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石の記憶 番外編 海と空 恋は紺碧の色



第3章 ハロウィンの街・前編

 十月の終わり。

 ハワイの街は、いつもの景色とは少し違っていた。

 店先にはカボチャが並び、ショッピングモールには大きな蜘蛛の巣の飾り。

 住宅街にもオレンジ色の明かりが灯り、玄関先にはお化けや魔女、骸骨の飾りが並んでいる。

 夕方になるにつれて、仮装した子供たちの姿も増えてきた。

「すごい……」

 真里亞は思わず立ち止まった。

「日本とは全然違いますね」

「ハワイでは、子供だけじゃなくて大人も楽しむからね」

 クリスティンが笑った。

 彼女は黒いドレスに金色の装飾をつけていた。

「今年はクレオパトラ!」

「似合ってる」

「ありがとう。真里亞は?」

 真里亞は少し照れながら、自分の衣装を見せた。

「私は魔女」

「可愛い!」

「ありがとう」

 二人が笑っていると、向こうからリアナとブライアンが歩いてきた。

「Happy Halloween!」

「Happy Halloween!」

 リアナは民族衣装を思わせる華やかな衣装。

 ブライアンは吸血鬼だった。

「ブライアン、それ本気?」

「もちろん」

「似合ってるけど、ちょっと怖い」

「成功だな」

 そんなやり取りをしていると、後ろから聞き慣れた声がした。

「諸君!」

 振り返ると、トムが立っていた。

 銀色の鎧を思わせる衣装。

 そして腰には模造刀。

「……トム?」

「どうだ!」

「何、それ?」

 クリスティンが尋ねる。

「シルバーサムライ!」

「シルバー……?」

 真里亞が首を傾げる。

「X-MENのシルバーサムライだよ!」

 トムが驚いた顔をする。

「まさか、日本人なのにX-MEN知らないのか?」

「知ってるよ。でもシルバーサムライまで知らない」

「嘘だろ!」

 トムが頭を抱える。

「日本ではマイナーなの?」

「……たぶん」

「そんな……」

 トムは本気でショックを受けている。

「トム、そんなに落ち込まなくても」

「日本文化研究会の会長として、これは由々しき問題だ!」

「そこまで?」

 皆が笑った。

 その時、向こうから二人の青年が歩いてきた。

「真里亞!」

「あ、イーサン」

 イーサンは黒いシャツに簡単なマントを羽織っていた。

 その隣にはアンドリュー。

「Happy Halloween」

「Happy Halloween」

 二人が笑う。

「みんなで仮装してるんだ」

「街中がこんな感じだからね」

 クリスティンが答える。

「大学だけじゃなくて、街全体がハロウィンだもん」

「そうそう」

 アンドリューが頷いた。

「ところで、みんなこの後どうする?」

「まだ決めてないよ」

 真里亞が答えると、少し離れたところから声がした。

「なら、家に来ればいい!」

 振り返ると、ザックが立っていた。

「ザック!」

「みんなで夕食を食べればいい。ハロウィンなんだから、一人で過ごす必要はないだろう?」

「パパ、急だよ」

 イーサンが笑う。

「いいじゃないか。メラニーも喜ぶ」

 ザックは笑って、子供たちを眺めた。

「イーサン、アンドリュー。みんなを家に誘いなさい」

「了解」

「もちろん」

 アンドリューが笑った。

「じゃあ、決まりだね」

 こうして、真里亞たちはスミス家へ向かうことになった。

 街のあちこちでは、まだハロウィンを楽しむ人々の姿があった。

 仮装した子供たち。

 お菓子を配る家。

 音楽を流す店。

 笑い声。

 真里亞は歩きながら、何度も周囲を見渡した。

「本当に、街全体がお祭りですね」

「ハワイではハロウィンもオハナで楽しむからね」

 クリスティンが答える。

「オハナ……」

 真里亞は、その言葉を小さく繰り返した。

 そして皆と一緒に、スミス家へ向かった。

 ハロウィンの夜は、まだ始まったばかりだ


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