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魔法パンク:平穏な学園生活を送りたいだけなのに、なぜか問題児美少女たちとパーティーを組まされました  作者: 音夢スリプ
第一章 虫ケラと一緒に、どうやって冒険者パーティをうまくやれるの?
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番外編② 普通の任務

深夜。

街灯の中の魔法の蝋燭ろうそくが、風の中で明滅していた。男は車で最後の角を曲がり、自分の家の門を目にした。

中の明かりはすでにすっかり消えている。きっと妻と娘は、もうとっくに眠っているのだろう。


男は車をガレージの通路に停め、車の魔力機関を止めて、ドアを開けて外へ出た。

少し離れた路肩に、隣家の前に見慣れない車が停まっていた。それが彼には、どうにも縁起が悪く思えた。

本来なら、彼は家に入る前、玄関先で煙草を一本吸うのが習慣だった。だが、その小さな違和感のせいで、ニコチンを楽しむ気分も失せてしまい、鍵を取り出して家の扉を開けた。


頭では、あの車はただ隣家の知り合いのものかもしれないし、あるいはあの家の娘の恋人かもしれないと分かっていた。

ただ、灯りが暗すぎて車内の様子が見えないことが、長年刑事をやってきた彼の胸に、かすかな引っかかりを残した。


彼は玄関に用意してあった魔法のオイルランプを手に取り、そこへ魔力を注いだ。ランプにはすぐに火が灯り、温かな光を放って、寝室へ向かう道を照らした。


二階は妻と娘の部屋だった。男はただでさえ小さな足音を、さらに意識して抑えた。同時に手で灯りを遮り、光が二人の部屋の扉の隙間から差し込まないようにした。


男は家族を起こしたくなかった。

妻は一晩中家事をしていたし、娘も明日は学校がある。二人には、せめて静かに眠る時間くらい必要だった。


自分はすでに、夫としても父としても負い目がある。男の空っぽな自尊心は、これ以上の負い目を許さなかった。


家族のことを考えると、男の頭の中はすぐに乱れていった。その雑念が魔力にも混じったのか、灯りの下で、男の影が不規則に揺れ始めた。


違う!

炎の揺れは、彼の魔力の影響ではない。風だ! 風が炎を揺らしている!


風は三階にある自分の寝室から入り込み、家の中の空気をかき回していた。男の妻は細やかな人間だ。窓を閉め忘れるような小さな失敗は、絶対にしない。


もし泥棒なら……

どうする?

男は頭の中で考えた。護身用の武器はベッドの脇に置いてある。


車の中にも予備はある。

だが彼は、さっき見た見慣れない車のことを思い出した。長年刑事をしてきた直感が、無意識のうちに二つの出来事を結びつけた。

侵入者は、彼が車から降りる音を聞いたのかもしれない。あるいは、彼の持つランプの光を見たのかもしれない。


もしここで自分が逃げたら、相手が何の備えもない妻と娘へ標的を変えるかもしれない――

男はそれ以上、想像することに耐えられなかった。


ただの思い過ごしであってくれと、男は神に祈った。

もし相手がただの小泥棒なら、金を渡して追い払ってもいい。

だが長年、警察と官界に身を置いてきたせいで、彼には敵も少なくなかった。彼は最悪の事態を想定するしかなかった。


男は体内で魔力を練り上げた。

彼はもう、とっくに殴り合いをする年齢ではない。だが、これは彼の責任だった。


彼の背後には、守るべきすべてがある。退くことはできなかった。


男は一歩一歩、自分の部屋の扉へ向かっていった。

彼は懸命に足音を殺そうとした。だが体は思うように動かず、体重が階段にかかるたび、「ギシッ」と音を立てた。

それなのに、彼の部屋の中は静まり返っていた。まるで、何も存在しないかのように。


一瞬、彼は自分の祈りが届いたのかと思った。


だが、ようやくランプを掲げて部屋の中を照らした時、目の前の人影が彼の期待を完全に打ち砕いた。


「よくもそんな真似ができたな。ここが誰の家か分かっているのか?」

男は無意味な威嚇をした。


自分がすでに目の前まで来ているというのに、相手はなおも悠然と彼に背を向け、彼の本棚の本を眺めていた。

こういう人間は、ただの馬鹿か、そもそも彼を恐れていないかのどちらかだ。ましてや、彼の威嚇など恐れるはずもない。


「チョウギ。チョウ部長で間違いないか?」


「そうだ。分かっているなら、とっとと失せろ!」


男の声には怒りが満ちていた。だが階下の妻と娘を起こすわけにもいかず、大声を出せないせいで、その声はどうしても虚勢めいて聞こえた。


俺は本を置いて振り返り、彼と手元の写真を何度も見比べた。


本人は明らかに写真より老けていて、痩せてもいた。もう少し俺が人の顔を覚えるのが苦手だったら、見分けがつかなかったかもしれない。


このところ、行政部の連中は仕事がどんどん雑になっている。そのくせ、こちらへの要求ばかり高くなっていく。


次にまたこんなことがあったら、標的の首を持っていって、あの机に座っている連中にしっかり思い知らせてやる。


俺は確認するようにうなずき、手帳を取り出した。


「本人ならいい。依頼を受けて、あんたの命を取りに来た。遺言はあるか?」


チョウギは、目の前の人間が平然としている様子を見て、内心少なからず戸惑った。かつて自分が極悪非道の麻薬王を処刑した時でさえ、引き金を引くには少し迷いがあった。

その口ぶりは、まるで他人の命を何とも思っていないかのようだった。


しかし彼はすぐに我に返り、冷笑した。

「俺の命を取るつもりなら、まず俺がそれを許すかどうか聞くべきだろう」


「ああ、そうだった。思い出させてくれて助かった」


彼が言わなければ、危うく忘れるところだった。俺は慌てて懐からアンケート用紙を取り出した。


「つまり拒否するんだな。念のため伝えておくが、執行を拒否した場合、当方は協定一〇三-Bに基づき、あらゆる必要な手段をもって執行を完遂する権利を有する……とか何とか」


「何だ、それは?」


突然の展開に、チョウギの頭には疑問符が浮かんでいた。


「だよな、これ何なんだよ! 任務一つこなすのに、何でこんなに規則が多いんだよ。時間の無駄だろ!」


俺は心の底から彼のツッコミに同意した。行政部のどの馬鹿が考えた「行動規定」なのか知らないが、少なくとも現場組で文句を言っていない奴はいない。


「お前たちはいったい何者だ? なぜ俺を殺す?」

チョウギは、話がまるで噛み合っていないことに気づき、自分が一番知りたいことを問い直した。


「えーっと、どれだっけ」


俺は自分で書いたメモをめくった。


「先に二つ目の質問からいこうか。おじさん、やったこと結構多いな」

「一番大きいのは、異端審判廷いたんしんぱんていと結託したことか。神聖教への秘密改宗、それに古代魔法遺物の横流し」

「いやあ、なかなかだな……」


俺はそう言いながら、書き留めておいた罪状を彼に見せた。


チョウギはすでに最悪の覚悟をしていた。だがその言葉を聞いた瞬間、心は完全に冷えきった。はっきり言われなくても、彼には俺の出自が分かった。


さっきまで集めていた魔力も気力も完全に抜け、全身から力が抜けて床に崩れ落ちそうになった。彼は慌てて扉の枠をつかみ、倒れるのを防いだ。


「俺たちが何者かについては……『国家の意志』とでも呼べばいい」


チョウギはひどく後悔した。

自分はやはり甘かった。子供と妻によりよい暮らしを与えたいとばかり考え、とうに引き返せないと分かっていた道へ踏み込んでしまった。

だが最後には、自分は身を滅ぼし、よき父でいることさえ、もう間に合わなくなっていた。


「この……この罪は全部認める。だから、最後に子供に別れを言わせてくれないか?」


「それは無理だ。規定に反する」

俺は淡々と彼を拒んだ。


「だが!」

チョウギは大声で反論しようとした。だが、家族を起こすほど大きな声を出してはいけないと気づき、声量を落とした。

「だが、この中には俺が本当にやっていないこともある」


「規定に従い、あなたの異議申し立ては上へ報告する。ただし、執行は延期できない」


俺は肩をすくめてみせた。言葉は、チョウギの死期を告げていた。


チョウギは部屋の中へ入り、そのまま扉を閉めた。一つには、物音で妻と娘を起こしたくなかったから。

もう一つには、最後の賭けに出るためだった。


チョウギは唾を飲み込んだ。


「俺の身分は分かっているんだろう」


俺はうなずいた。


「なら、俺が君にいろいろなものを用意できることも分かるはずだ。金か? 君には想像もつかない額を用意できる。分かった、若い君は仕事が忙しくて、恋人もいないだろう。俺が紹介してやろう。どうだ?」


チョウギは、秘密裁判所の執行官を買収できたなどという話を一度も聞いたことがなかった。だが、どうしても試してみたかった。


「興味ない」


俺は首を横に振り、手元の馬鹿げたアンケートを書き始めた。

氏名。

住所。

こういうものは、行政部の馬鹿どもがあらかじめ書いて渡すべきではないのか?


「なら、何が欲しい。何でも言え」


チョウギも、俺の手元の用紙が素早く埋まっていくのを見ていた。その前に、少しでも多くの時間を稼がなければならなかった。


正直なところ、その言葉は俺の興味を引いた。俺は手の中のペンを止め、少し考えるように彼を見た。

チョウギは脈ありと見て、慌てて近づき、さらに条件を積み上げた。


「何でも言ってくれ。方法は俺が考える!」


「何でもいいのか?」


「もちろんだ!」


どれほど頼りない可能性でも、今の彼はそれにすがるしかなかった。

俺は彼と数秒見つめ合った。最後に、やはり彼で運を試してみることにした。


「学校に行きたい」


「は?」

チョウギは数秒反応し、自分が聞き間違えたのだと思った。


「学校に行きたい。ほら、魔法の専門学院みたいなやつ、分かるだろ?」


チョウギに、もちろん俺の補足説明など必要なかった。ただ、自分の耳を信じられなかっただけだ。


「あんたも分かっているだろ。俺はああいう入学試験を受けられない。何か伝手で、そのまま入学できる方法はないか?」


チョウギが反応しないのを見て、俺の言い方も直接的になった。

「あ、ある。あの……」


突然訪れた転機に、彼は言葉もうまく出てこなくなっていた。

チョウギは状況を完全には理解していなかったが、官界で長年渡り歩いてきた条件反射が、この機会を逃させなかった。


「あの星月学の学長、ツキエンを知っているだろう。俺とは長い付き合いだ。君が入学したいなら、あいつの一言で済む」


「マジで!?」


「もちろんだ。俺が君を騙すと思うか?」

チョウギは笑みを貼りつけて言った。


「それで、君のほうは……?」


「大丈夫。今日はあんたに会っていない。あんたは家に帰ってこなかった。そう報告する」

俺はどうでもよさそうに手を振った。


「本当にそれで大丈夫なのか?」

チョウギは半信半疑だった。だがすぐに不適切だと感じたのか、言葉を付け足した。

「君を疑っているわけじゃない。ただ、君に迷惑がかかるのが怖いんだ」


「大丈夫。俺の給料はKPIと大して関係ない」


俺は慌てて彼をなだめた。せっかく転がり込んできた入学のチャンスを逃すわけにはいかない。


「よし、今すぐあいつに伝言を送る!」


チョウギは紙とペンを手に取り、何かを書いた。それからベッド脇にある魔法陣のそばへ歩いていき、何やらいじり始めた。


俺が本当に彼を見逃すかどうかよりも、俺はむしろ、彼が本当にそれを実現できるのかを疑っていた。

そんなことを考えているうちに、ふと思い出した。


「ああ、そうだ。あんたの娘も星月学だったよな」


チョウギはそれを聞くと体を震わせた。そして少しぎこちなくこちらを振り向き、なおも笑って答えた。


「そうだ、そうだ」


その後、また魔法陣のほうへ向き直り、いじり続けた。明らかに、俺と世間話を続ける気はなかった。

俺が暇を持て余し、また座って本でも読もうとした時、彼が俺を呼び止めた。


「坊や、こっちへ来て見てくれ」


俺は素直に彼のほうへ近づいた。

あの魔法陣が何なのか、じっと覗き込んで考えていたその瞬間、チョウギが突然勢いよく振り向いた。

どこから取り出したのか、手には伸縮式の警棒が握られており、それを高く振り上げて俺へ叩き下ろした。


「戦技・砕撃!」


もし自分一人のことだけなら、彼はまだ見苦しくもがくだけだったかもしれない。だがチョウギの家族が関わると、彼はもう理性を保てなかった。


チョウギはもちろん、人を一人殺せば自分の罪が消えるなどと愚かにも考えてはいなかった。

だが彼は、あと一晩だけ時間を稼ぐことができれば、妻と娘を連れて星月国の勢力圏から逃げ出せると考えていた。

そしてこれからは、一心に良い父親となり、二度と彼女たちを危険に巻き込まない。


彼はすべての魔力を手の中の警棒へ注ぎ込んだ。その振り下ろす速度は、かつての彼にも劣らなかった。


刹那せつな、紫の光が一閃した。


チョウギの目には、俺はただその場に立ったまま何もしていないように見えた。

だが、攻撃は当たっていなかった。


目を凝らして見れば、警棒を握っていた右手が、いつの間にか何かによってきれいに切断されていた。それはまだ空中に留まったまま地面へ落ちておらず、腕の断面からは真っ赤な血が噴き出していた。


その光景は、痛みの神経反射とほとんど同時に脳へ届き、彼は危うく悲鳴を上げそうになった。


チョウギは最後の理性で、残った左手を慌てて口の中へ押し込んだ。左手が口腔内の空気を押し潰し、チョウギの苦痛の叫びはくぐもった音に変わった。


彼は誰にも、この「執行」の現場へ踏み込ませるわけにはいかなかった。それが、彼にできる最後の守りだった。


歯が皮膚を突き破り、血が喉へ流れ込んだ。

その飲み込みにくい鉄の味が、チョウギに、自分はすでに負け犬なのだと思い知らせた。


「何やってるんだ。こっちはけっこういい感じに話せていると思ってたのに」

俺は少し呆れながら、倒れたチョウギを見た。


チョウギは左手を口から抜き、できるだけ体をまっすぐに支えた。彼はもう反抗する力を失っていた。男としての意地が、彼に最後の侮辱を吐かせた。


「お前たちみたいな国の犬どもが、普通の人間みたいに学校へ行って、生きられると思うのか? 寝言は寝て言……!」


チョウギは途中で、どうしてもそれ以上言えなくなった。


彼の首には、もう一筋の銀光によって、滑らかな切り口が刻まれていた。血はその裂け目から気管へ流れ込み、チョウギは喉の奥で「ごぼっ」と鳴ったように感じただけで、もう一言もまともな言葉を発せなくなった。ただ血の泡だけが口から流れ出した。


「話す気がないなら、最初から言えばいいだろ。人の時間を無駄にするなよ」

俺は不機嫌に文句を言い、またアンケートを取り上げた。


「あ、遺言忘れてた!」


俺は息も絶え絶えのチョウギを見て頭をかいた。少し考え込んだあと、チョウギの傷口に手を当て、応急的に彼の首を押さえて止血することにした。


「『人道執行に関する条例』に基づき、当方にはあなたの遺言を記録する義務があります。チョウ部長、まだ遺言を残していません。何か言いたいことはありますか?」


「俺……娘……」


チョウギの口の中の泡立つ音は、彼自身の声すらかき消していた。


「娘?」

俺は少し考え、彼の意味を理解した。


「大丈夫だ。規定により、あなたの家族に通知し、参加させ、立ち会わせ、または執行対象とすることはできない。簡単に言えば、あんたの娘は無事だ」


「……」

チョウギはまた何かを言った。

だが俺にはもうまったく聞き取れなかった。ただ、彼の目の光がゆっくり消えていくのだけが見えた。


「あのさ、もう一回だけ起きられないか? 評価欄がまだ埋まってないんだけど」

俺はそう口にした。だが目の前の男は、明らかにすでに息をしていなかった。ただ俺だけが、その場で困ることになった。


しばらく考えた末、俺はまだ温もりの残る彼の手を取った。彼の体にわずかに残っていた魔力を指先へ集め、評価欄の五つ星すべてに、手形を押させた。同時に、その中へ彼の魔力を流し込んだ。


「やっぱりこっちのほうが楽だな。最初からこうすればよかった……」

俺はため息をつき、アンケートをしまった。それから自分の魔力の痕跡を消し、窓から飛び降りて外へ出た。


車のそばへ行くと、本来なら車内で待っているはずのイツミも、この時は外へ出ていた。街灯の光を借りながら、同じアンケートを前にして頭を抱えている。


「何でこんなに時間がかかった?」

イツミは俺の足音を聞くと、こちらを振り向いて尋ねた。


「買収しようとしてきた。条件交渉ってやつだ」

俺たちは車に乗り込んだ。


「何を出してきたんだ?」


「いや、いい感じに話してたら、急に俺に殴りかかってきた。どの一言が気に障ったのか分からない」


俺は少し呆れて文句を言った。

本当なら、もう少し時間を節約して、早く帰って寝られたはずなのに。


「俺に言わせれば、やっぱり俺たちの評判が悪すぎるんだよ。この前、俺も標的と『商談』したけど、相手は死んでも俺を信じなかったしな」

イツミは彼独特のやり方で俺を慰めた。


「やめろ。行政部はまさにその理由で、こういうクソみたいな規定とアンケートを押しつけてきたんだ」

俺は心底嫌そうな顔で、その慰めを全力で拒否した。


「そうだ、あいつの遺言って何だったっけ。今メモしておかないと、あとで忘れそうだ」


「俺、娘」


「俺の娘?」


「それだけ。二言」


「あいつの娘がどうしたんだ?」


「別に。まだ学校に通ってる」


「そっか」

イツミも、遺言がそこまで短かった理由を多少は察したらしい。だがふと思い直したように、車の天井を見上げながら記憶をたどった。


「あいつの娘って、何かけっこういい学校に通ってなかったか?」


「星月学」


「ああ、そうそう」

イツミはうなずいた。

「お前もその学校に行きたがってなかったっけ?」


「……そうだ」

俺は、だいたい彼が何を言いたいのか察した。


イツミはからかうような顔で俺を見た。

「まさか学校で、あいつの娘と妙な因縁ができるんじゃないだろうな」


「誰もが、お前みたいに頭の中を色恋沙汰でいっぱいにしてると思うなよ」

俺は彼に白い目を向けた。


「余計なこと言ってないで、車を出せ」


「冗談が通じないやつだな」

イツミはそうぼやき、暗がりの中で何かを探り始めた。


「何を探してるんだ?」


「お、あった」

イツミはにやりと笑い、丸められた紙を一つ俺に差し出した。


「これは?」

俺は巻物のような封書を受け取った。

一枚の羊皮紙ようひしが丁寧に巻かれており、濃紺のリボンがそれをしっかりと結んでいた。封じ目には、美しい銀色の封蝋ふうろうが押されている。


封蝋に刻まれた印は、白い塔を照らす三つの星だった。


「今年後期の星月学の入学許可書だ」

逸敏は俺の表情を見て、どこかほっとしたような笑みを浮かべた。


「誕生日おめでとう、宇」


「……マジか」


あまりにも大きな驚きに、俺は一瞬言葉を失った。自分でも、自分の誕生日を忘れていたくらいだった。


「この贈り物なら、何とか格好がついてよかった」

イツミはそこで話の向きを変えた。


「ただし、じいさんのほうはお前が自分で説得しろよ」


「イツミ、ありがとう」


イツミは機嫌よく鼻歌を歌いながら車を動かした。アクセルを軽く踏み込むと、黒い車は夜の帳へ溶け込んでいった。


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