表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おさんぽ部ダイアリー 浅川円の内緒事  作者: 黒十二色


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/39

第四話 言わない女

 二人きりで過ごした時間は短かった。


 浅川はずっと黙ったまま携帯を操作していたし、僕は、同好会のデータ整理と管理日記をつけ続けていた。


 浅川はすこし苛立っているようにもみえた。僕にはなぜ浅川とこの部屋で二人きりになっているのか、状況が整理できないでいた。


 僕はずっと緊張していた。


 でも、互いを気にしながら続いた居心地の悪い時間は、すぐに終わった。


 浅川が、「じゃあね大道くん」と言い残して、急に帰ったからだ。


 僕がこの二日で感じる限り、浅川めぐるという人は、他人に説明を求めて来るくせに、自分が全く説明しない系女子のように見えた。


 それでも、単に不器用なだけの優しい女の子だと思うことにした。そうじゃなかったら、裏庭の隅っこで泣いたりするものか。


 結局、僕は浅川の行動の理由を全く理解できないでいた。なぜ泣いたのか。なぜ同好会に顔を出したのか。



 次の日、僕は登校の通学路で、日課の写真撮影のことも忘れて、浅川めぐるのことを考えていた。


 朝のホームルームが終わった後、僕の足はすぐに浅川の席へと向かった。SNSや配信動画の話で盛り上がる男女集団の隙間を抜けて、僕は彼女の前に立った。


 輝く黒髪とその向こうの横顔に向かって、僕は話し掛ける。


「昨日は何で」


 と言いかけたところで、彼女は目を背けたまま、あからさまに拒絶の雰囲気を示したのだが、僕は止まらなかった。止まらなかった理由はわからない。一刻も早く、浅川の気持ちが知りたい。そういうことなんだと思う。僕は続けた。


「何ですぐに帰ったんだ。きらりちゃんが来ると言っていたのに、来なかったし」


 浅川は振り向くことなく、表情も変えずに、なにか言葉を呑み込んだようにみえた。かと思ったら、浅川は立ち上がった。


 背筋をのばした美しい歩き姿をみせて教室を出て行った。廊下に出たとき、ついてこいとばかりに僕を一度見て、裏庭のほうに消えた。


 僕は浅川を追いかけた。しだれ桜の下にいるものだと思った。


 風が緑の枝を揺らしているだけだった。


「逃げられたか……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ