第三十九話 その横顔は(終)
ある晴れた日の放課後。僕らは散歩していた。
オブジェを見ながら進むコースは、僕らのまちあるき定番ルートに組み込まれていた。
「めぐる先輩から教えてもらったお店、すごくおいしかったです」
「そうでしょ。あそこのレモンパイ、おいしいのよ」
他愛のない話をしながら、四人で歩いていた。
お菓子の話題から、さやかちゃんが、僕に振ってきた。
「あゆむ先輩は、特に好きなお菓子とかありますか?」
僕は何と答えようかと考えた末に、
「甘いものはそんなに好きじゃないかな」
と答えた。
「嘘つき」と浅川が甘い笑いを抑えながら言った。
僕らのトーテムが見えたとき、僕らは驚いた。けれども平静を装った。
僕らと同じくらいの年頃の、知らない人たちがいた。四人で、トーテムを囲んでいた。
小さなホワイトボードを片手に、あれこれと考え事をしているようだ。
僕らは雑談を中断して、その横を、歩くペースを変えずに通り抜ける。
前にいる二人、きらりちゃんとさやかちゃんは、声を出さずに笑いあっていた。
後ろに僕と浅川が続いた。
僕はリラックスしていたけれど、浅川の横顔には緊張が見られた。
少年少女たちは、「なんだろうなこれ」と言って、頭を悩ませていた。
ちょうど横に差し掛かったあたりで、そのうちの一人が、僕らに声をかけてきた。
「すみません。おれたち、まちのなぞ解き同好会ってのをやってるんですけど、この像について何かご存じですか?」
ご存じもなにも。
だけど、僕はしらばっくれる。
「いやあ、なんなんですかね、これ。僕らもよくここを通るんですけど」
そしてそのまま、四人で通過した。
やがて、その僕らとよく似た集団のうち、一人の男子が、こういった。
「まじ意味わかんねーな。このくそダサい像」
その言葉に、浅川めぐるは勢いよく振り返った。
あまりにも険しい表情だった。今にも飛び出していきそうだ。
「めぐる」
僕は彼女の手を握った。
彼女は前に向き直り、顔を真っ赤にしながら俯いて、
「忘れて」
そうは言うけれど、この時の浅川めぐるの横顔も、僕は一生わすれないだろう。




