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おさんぽ部ダイアリー 浅川円の内緒事  作者: 黒十二色


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第二十六話 クリスマスデート(2)

 かわいい飾りがたくさんついた豪華なクリスマスツリーを見た。


 にぎやかなパレードを見た。


 僕はあまりよく知らなかったけれど、パレードに出て来るキャラクターたちの魅力を、楽しそうに教えてくれた。


 たくさんの思い出の画像が、僕のなかに降り積もっていく。


 でも、一日中、話を続けていたからだろうか。さすがのきらりちゃんも疲れてきたようだ。


 声が枯れてきて、咳が出た。止まらなくなった。


 トイレに行って、戻ってくるまでが長かった。


「楽しかったね」僕が言い、


「最高です」ときらりちゃんが言った。


 僕らは帰ることにして、テーマパークの外に出た。


 晩御飯をどこで食べるか決めていなくて、せっかくだから鶏肉でも食べたいねと言って、ファストフード店に入って、鶏肉が挟んであるハンバーガーを二人で食べた。


 昼間ほどではないけれど、そこでもいろいろな話をした。


「きらりちゃんは、兄弟いる?」


 僕がたずねたら、きらりちゃんの動きが止まった。今日いちばんの間をとった後で、彼女は、やわらかく笑って言うのだ。


「大道先輩は、いるとしたら、どんな子だと思います?」


「たぶん女の子かな。妹とか。きらりちゃんと同じような、元気な子なんじゃないかな。なんとなく」


「そうですね。すごく元気ですよ。あたしより元気かも。木へんに自由の由で、『(さやか)』っていうんです」


「へえ、『(きらり)』に『(さやか)』か。半年以上も一緒に活動していて、初めて聞いたよ。驚いた」


「こんど、会ってみます? あんまり似てないから、見てもおもしろくないかもですけど」


「へえ、きらりちゃんとは違った魅力があるんだろうな。楽しみだな」


 僕らはファストフード店を出た。


 きらりちゃんは、かなり疲れていた。


 できるだけ早く、彼女を家まで送ってやりたかった。


 僕は帰ろうと言った。何度も言った。でも、きらりちゃんは、イルミネーションも見たいと言って譲らなかった。


 彼女なりにコースを考えていたようだが、たぶんそれは、最初から体力的に無理があったと思う。


 僕たちは、何度も休みながら、ゆっくりとイルミネーションのある場所に近づいていった。


 冷たい歩道を歩いて、イルミネーションが見えてきたあたりで、異変が起きた。


 きらりちゃんの反応がどんどん鈍くなり、とうとう倒れそうになって、僕が抱きかかえる姿勢になった。僕は彼女の名前を呼んで、ゆすってみたけど、どうしたのだろう、気を失っているようだった。


 息はしている。眠っているだけかもしれない。


 きらりちゃんが急に倒れる病気だなんて話は聞いたことがなかったし、いつも元気なイメージしかなかったから、こんな風に力が抜けてしまっているのをみて、僕はどうしたらいいか、わからなくなった。


 そんなときだった。しゃがみこむ僕の前に、パーカーのフードをかぶった大男が立ち止まったのは。


 背も高いし横幅も広い。強そうだ。寒い中をパーカーだけで歩けてしまうのは、分厚い筋肉があるからこそだろうか。


 目の前に、大きな足の裏が迫った。


「邪魔だぞこら」


 男は言って、僕を蹴転がした。軽い動きだったけれど、大きな衝撃だった。


 僕はきらりちゃんを守るように、きらりちゃんを抱えたまま距離をとろうとした。


 男は、どういうわけか、僕らに歩み寄って来た。


「何するんだ」


 僕は後ずさりしながら言ったけれど、男は指をゴキゴキ鳴らしながら、距離を詰めて来る。


「がきのくせにイチャコラしやがって、ゆるせねえ。殴らせろ」


 僕らが何をしたというのだろう。こんなの、ただの八つ当たりじゃないか。


 助けを呼ぼうとしたけれど、人通りの少ない道を選んでしまっていた。


 なんとか隙をみつけて逃げようにも、きらりちゃんを置いていくわけにはいかない。


 僕は戦う覚悟を決めた。どうなっても、きらりちゃんを守るんだ。


 そのときだった。ジャケットのフードをかぶった何者かが、全力疾走してきた。そして、男に体当たりした。


 男は吹っ飛びこそしなかったが、バランスを崩してよろめいた。そこで、ジャケットの何者かは、自分の細い脚で男の太い脚を蹴って、花壇に押し倒した。


 倒れる拍子に、暴漢がジャケットを引っ張り、フードがめくれて、黒髪が豊かに広がった。


「あ、浅川? なんでここに?」


「ごめん、尾けてた」



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